第8話 幼馴染

 この世界とは異なる世界。友人のミロが話す事はよくわからないが、何にせよ大人の知らない知識、誰も知らない未来の出来事を彼女は知っていた。そして、ともかく学ぶ事に貪欲だった。算術等のスキルを生まれながらに持っていたかのように知性に溢れ、その身は幼くしして大きな魔力を宿しながらも、その制御の術を彼女は知っていた。そしてそれを実践出来る様に自身を磨いていた。そんな彼女と同じ頃に生まれ比較され、時に共に学んだ自分。


「アンタの事も知ってるの。モブだけどね。でも幼馴染なのは変わらないし悪い様にはしないから安心なさい。私の言う通りにしてればモブでもハッピーな将来が手に入るかもしれないわ。」


 そう僕に話したのは歳が4つを数えた頃だったろう。自信に満ちた彼女はその頃から僕の憧れでもあった。

 

「アンタは過去の回想イベントで仲間になるゲストモブで間違い無いのよね。確か凄い雑なステータスにされてたのよ。私も後のたす動画の解説で知ったけど。」


 彼女の話す言葉はわかるのに時折理解できない単語が混じる。だけどこういう時ほど彼女は物事の本質を捉えた事を言う。イベント内で手に入る装備が限定される為に表面のステータスが他のキャラの物を流用しているとのこと。

 意味はまるで解らないが6歳の時に一緒に水浴びをしていると急に僕のヘソした辺り撫で始め目に見えない何かを取り除いたのが解った。その時から世界の感じ方が変化した。家の手伝いが上手く出来る様になり母に褒められたのが嬉しかった。


 翌年、ミロが草刈り用の長柄の鎌に斧と穂先を付けて手製のハルバードの様な物を作り僕に手渡した。


「アンタの適性は数値ではこれが最適なのよね。数値というか適性がコードになっててバクみたいな現象が起きる筈。」


 渡された手製の武器を握った時に彼女の凄さを再認識した。手に馴染むとかそういう次元では無い。身体の一部というか、欠損していた部位が復元されて本来の最適な動きが出来るような。そんな感覚だ。

 翌日からそれを使って草刈りや枝打ちをすると大人達よりも上手く仕事が出来た。

 翌年には村に現れた猪の魔物の番を一人で討伐してしまった。

 でもミロは更に凄い。その黄緑色の髪とが示す通り魔力を纏い、木の枝一本で僕を圧倒する技量まで持っている。彼女か隠れて魔力の制御や技の鍛錬をしているのは知っている。負けないように僕も鍛えているし十歳を待たず村ではミロ以外に負ける気はしない。でも彼女には決して勝てなかった。


「ねえ、タイク。運命ってあると思う?」

「急にどうしたんだい?ミロはこの先の出来事を知っていてチートで運命を変えて来たんだろ?僕のこのハルバードもろくに手入れもせずに使ってるのに痛むどころか、日に日に鋭く強くなってる気がするし、ミロの言うチートって奴なんだろ?運命はあってもミロからしたら変更可能な物だろ。」

「そうね。そうなのよ。それでね私もこの村で暮らして、皆モブの村だけど、でも一人一人生きてるのは変わらなくて、そんなことは頭ではわかってるし目にしてるし、ううん、違う。私ね、この村のみんなが大好きなの。とっても大切。ここは私の故郷なの守るべき場所。」

「そりゃ俺も同じだよ。ミロはまあ、昔から王立学園で出会う運命の相手に会いに行くとか言ってけど、村の皆の事を考えてるのは知ってるよ。」

「私が王都に行っても、タイクなら生きていれば良い人に会えるよ。何なら私が見つけてあげるよ。」

「そうか、ミロの紹介なら安心だな。ならミロが王都で安心して過ごせる様に俺が村を守っててやるよ。」


 そう言葉をかけるとミロは何処が悲しげに微笑んだ。この悲しげな表情の意味は一年後に僕にもわかるときが来た。

 


 それは突然に始まった。真夜中に太陽が登り村を照らした。そして光を浴びた村人は次々と魔物に姿を変えていく。みたこともない悍ましい姿の魔物。しかし、何故か自分は姿を変えなかった。人でなくなった両親から逃げて家を出ると、同じく飛び出して来たミロとはち合わせる。

 そのまま二人で村の脱出を試みる。村人が変化した魔物は僕の攻撃はおろか、ミロの攻撃でもってしても傷をつけられない。怯ませるのがやっとだ。

 しかし、逃げるならそれて充分だ。無事な人間は自分とミロだけだ。他の人の気配を感じない。

二人で村からでて隣の村へ続く道をかける。しかしその道に柵がはられ、見張るように人影がある。


「なんだアイツら、見た事のない服装だな。」


 全く同じ服装。全身を覆う服で顔も隠れ表情は見えないし、体格も皆一様で区別が付かない。しかし俺達に対して友好的な様子ではない。


「タイク、村の異変はあいつらのせいだよ。」


 ミロは何か知っている様だ。彼女が木剣を構える。俺にも見せたことない気迫。一人での鍛錬でのみみせる本気のミロだ。俺も武器を構える。


「皆を守れなかった私を許してねタイク。」

「よくわからないけど、アイツらを倒せばいいのか。やるだけやってやる。」


 そこからは無我夢中で武器を振るった。不思議な服の奴らはついても切っても傷がつかず手応えはあれど倒せない。それでも度重なる攻撃に一人、また一人と動かなくなっていく。

 ようやく最後の一人をミロが打倒した所で、周囲に影がさす。見上げると何処から現れたのか巨大な宮殿らしき物が空中に浮かんでいた。そこから何か飛来してくる。


「そんな、この時点では未完成の筈なのに。飛行は出来るの?」


 ミロの声に焦りが混じる。飛来してきたのは敵の増援だ。それに気が付いた時には僕は衝撃に吹き飛ばされていた。

 おかしい、この話はチートな友人とワイワイ旅してご都合主義な追放ザマァもやる予定の話だった筈だ。何故こんな重くなりそうな展開になっているのだろう。名ばかりの好待遇な方の話で全然追放ザマァもチート無双も出来なくて溜まった鬱憤を晴らすための小話集のつもりなのに。きっと作者の精神性に問題があるのだ。


 俺は今、何を考えた?わけもわからぬまま気が付けばは空を見上げている。身体がしびれるような、それでいてフワフワした浮遊感もある感覚。耳鳴りが酷く他の音が聞こえない。身体も動かない。いつの間にかミロが僕を見下ろしている。

 そんな悲しい顔を見せないで欲しい。兄妹の様に育ってきた家族と同様な存在なのだ悲しそうにされるとこちらも悲しい。ミロの顔が迫り唇が俺のものに重なる。同時にかろうじて胸元に何か入れられた。


「別れは済ませた。素直に従うのでこれ以上の攻撃は止めてほしい。」


 耳鳴りの治まった耳に入って来たのはそんなミロの声とそれに応じる感情の無い男の声。そして空にあった建造物が何処かへ飛び去りしばらくて、漸く身体が動かせるほどに回復した。

 何が起きたのかまるで理解できない。振り返れば村のあった方角から煙が立ち昇る。村が燃える。前を向き直れば道は続いている。

胸元に覚えの無い感触。懐に不思議な素材のカードが入れられて居た。薄い樹脂の様な物で付けられ曲がったり変形はするが直ぐに元の形に戻り傷付けられない。

 そして、見覚えのある文字が浮かんている。文字は読むと変化し僕に言葉を伝える。


『このカードを渡した相手がタイクなら、それは予定通りに私が運命を変えられなかったという事だろう。タイクというのはこのカードを持っていた魔物の事だ。私の家族の様な存在で大切な人だった。もし彼と運命を変えられたなら、共に村を出れたなら、この先の出会いはかなぐり捨てて、彼と共に生きる人生も良いと思える程には。』


文字の後に地図が表示される。何やら印がついている。


『この場所に古代の遺跡が眠っている。今頃復活に向けて魔力を蓄えている頃だろうが、その魔力を狙われ存在が露見し奴等に心臓部の機能を奪われ、残りの施設は破壊されてしまう。そして奪われた物は悪意をもって使われ大きな災害を呼ぶことになる。その頃には私は記憶を奪われて別人として王都の学園に通う事になるだろう。何も知らない奴等の駒とされるわけだ。記憶を取り戻すのは大分先になるだろう。このカードには封じられる記憶と私の意志が写されている。これが心ある物の手にあることを祈る。タイク、もし君が何かの奇跡でこのカードを読んているなら、人の心を失っていないのならそれだけで充分だ。早ければ5年後には村に戻るだろう。村は恐らく廃墟のままだ。魔物となっても君は君だ。多分私は君を見逃す。止めを刺せない。どんな姿になっても生きてほしい。それが私の出来る精一杯の抵抗だ。』


 ミロの文字が止まる。どうやら僕はここで魔物化し5年後ミロに討たれる運命だったようた。


『私では何しても運命を変えることは出来ない様だ。私自身がこの世界に転生した時点で、私も縛られているのかもしれない。しかし私だから変えられない可能性もある。私が知る限り、この先に起きる私に関わる事柄を述べる。皆、私の知らない所で命を落とす存在だ。どうかこの人達を救う事に挑んで欲しい。身勝手な願いが誰かに届く事を祈る。再びこのカードを私が手にする事があれば、それは私の敗北を意味する。それが物語のハッピーエンドであったとしても。』


 文字はそこから変わらない。

 ミロが何を思い、何を目指したのかはまるでわからない。たが彼女がこの世界に於いて特異な存在だったのは間違い無い。

 英雄譚に出てくる預言者の様な存在が近いだろうか。そして訪れる不幸に抵抗ていたのだ。彼女には目先の不幸の先に幸せな将来が見えて居た。だがそれをかなぐり捨ててでも目先の不幸。僕や村の人達の幸せを選んで居たのだ。その選択は報われる事は無かったが


「それは違うな。」


 言い聞かせる様に呟く。

 まだ彼女の選択の結果は終わっていない。彼女の想定と異なり、奇跡が起きて俺はこのカードを読んでいる。

 ミロが知る未来で失われる命がここに1つ残っている。それは他のこれから失われる命も救える事の証明では無いのか。ミロの知る未来で失われ、そしてミロが救いたいと願う命。それらも今の自分と同様に最悪の未来を回避出来る筈だ。

 俺の決意が決まるのに合わせてカードに記される文字が変化する。救うべき命とそれが失われる状況を示している。

 やるべきことが明確に示される。であれば痛む身体は自然と動き始める。足取りに迷いは無かった。



 カードは新たな文字を記す


『この設定は作者が学生時代に文芸サークルにて設定共有して小説を書くという企画に向けて創作したものです。引用及び元にした作品の制作は完全自由なフリー素材となります。』


 やっぱり意味がわからない。見えている世界が違い過ぎるようだ。


 根本的な話で、作者はラ○ネ&40シリーズを観て育っており、たまたま昨今異世界転生物が流行っているが、その流行りに関係無く現代から異世界に転移して勇者となる様な話が書きたいのである。件のシリーズでは現代でゲームをクリア出来ることが勇者の資質であると同時に転移先のチュートリアルであった。ゲームの様な世界に転移してしまう設定は当然そのままになってしまう。

 はて、誰の言葉を代弁しているのだろう。何か、誰かのパクりだ、模造品だというならあ○ほりさとる先生の真似だと言って欲しい。反論出来無いで完全論破されてしまうので。

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