第14話 お風呂!?
「信一が想像しているようなこと、かな」
とっさの切り返しとしては、なかなか上手いなと思う。忘れつつあったけど、真帆乃は才色兼備の大人の女性だ。反応が可愛くてすぐうろたえるけれど……。
「俺? 俺は何も想像していないよ」
「嘘つき。まあ、いいわ。水着で一緒にお風呂に入ってくれたら許してあげる。それより、どう? 似合ってる?」
水着姿の真帆乃がふふっと笑い、くるりと回る。
白いフリルがふわりと揺れた。
信一は頬が熱くなるのを感じた。
「とても似合ってるよ。その……真帆乃の清楚な雰囲気にぴったりだと思う」
「良かった。じゃあ、これにしちゃおうっと」
「そんな簡単に決めていいの?」
「信一が選んでくれたんだもの。私はこれがいいの」
真帆乃が嬉しそうな表情で言う。
そう言ってもらえるのは、信一にとっても嬉しいことだった。
「信一も水着が必要よね?」
「いや、プールには行かないし……」
「でも、私と一緒のお風呂に水着で入るでしょう? それとも信一だけ裸で入るつもり?」
信一がうっかり、風呂場なら水着が使えると言ったせいで、そんな話の流れになってしまった。
プールに行けなかったせいか、真帆乃はすごく乗り気のようだし、信一も勢いに押し切られて拒むことができなかった。
そして、真帆乃の言うとおり、真帆乃だけ水着で信一は裸……というわけにはいかない。
真帆乃も信一も困ってしまう。
「それとも、私に鍛えた肉体を見せつけたい……みたいな?」
「そんなこと思ってないよ!」
「でも鍛えているのは、事実なんじゃない?」
「まあ一応、警察官だし」
「ふうん」
真帆乃がじろじろと信一の身体を見つめる。少し恥ずかしいな、と信一は思う。
「今、見なくても、あとで風呂場でじっくりと見られるよ」
「へ!? し、信一の身体をみ、見てなんかいないもの!」
「さっきの真帆乃のセリフを真似したんだけどな」
信一が冗談めかして言うと、真帆乃はむうっと頬を膨らませた。
(この可愛い反応をする存在と水着姿で二人きり……)
家の風呂場なら、もちろん何の邪魔も入らない。でも、それは信一と真帆乃を止める存在は何もないということでもある。
本当に大丈夫なのか、心配になってきた。
でも、真帆乃はまったく不安に思っていないらしい。
「さあ、私たちの家に帰りましょうか!
真帆乃はそう言って、幸せそうに笑った。
☆
結局、二人は秋葉原にある真帆乃の家に戻ってきてしまった。
ちゃんとしたデートらしいことも、ほとんどできなかった。でも、それでも真帆乃はそれなりに満足だったらしい。
「信一とお出かけできたものね」
なんて、真帆乃は靴を脱ぎながら言う。
靴を脱ぐ際に真帆乃が片足を上げて、スカートから白い太ももがちらりと見える。
信一はドキッとして、目をそらす。幸い、真帆乃は気づいていなかったらしい。
でも、この程度でどきりとしていては先が思いやられる。
なんといっても、一緒にお風呂に入るのだから。
「じゃあ、私はお風呂にお湯を張ってくるから」
「あ、いや、俺がやろうか?」
「信一はまだお客さんだもの。今はまだ、ね?」
真帆乃はくすりと笑うと、いそいそと風呂場へと消えていった。
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