第3話 なんでも言うことを聞くのはどう?
信一と真帆乃は1on1でゲームで対戦をした。大乱闘、とゲーム名にはついているけど、多人数で戦うと互いの実力がわからない。
ついでに、ステージは終点、アイテム出現もなし……というオンライン対戦でも使われる本格的なルールだった。
中高生時代から、信一と真帆乃はこのルールで対戦をしていた。真帆乃が勝負事にストイックだからだし、信一もゲーム好きなので、そうするのが暗黙の了解だったのだ。
使用するキャラクターの選択画面になる。
信一は二人組の金髪と赤髪の少女のキャラを選ぶ。SF風の露出度が高くて、胸が大きいキャラだ。
真帆乃がからかうような表情で信一を見つめる。
「信一って、やっぱりそういう子が好みなんだ?」
「強いから使っているだけだよ」
「本当に?」
「わかっているくせに。見た目でキャラを選んだりしないよ」
「でも、見た目も好みなんじゃないの?」
「……まあ、好きではあるけどね」
「ふうん。私とは似ていないキャラなのに」
「へ?」
「ふ、深い意味はないから。それに、よく考えたら、私と似ているところも……」
真帆乃はそこまで言って、恥ずかしくなったのか、言葉を切ってしまう。
髪の色は似ていないし、年齢も少女ではないし、真帆乃とこの少女たちが似ているところはあまりない。
ただ、似ているとすれば……。信一はつい真帆乃の胸をちらりと見てしまう。寝間着の上からでも、そのボリュームのある膨らみははっきりとわかった。
高校時代よりもずっと大きくなっている。
信一はちょっと見ただけのつもりだったが、真帆乃は気づいたようだった。慌てて両手で胸を隠す。
「今、私とこの子たちの胸が大きいところは同じ……とか考えていたでしょ?」
「えーと」
「怒らないから、正直に答えて」
「……すみません。考えていました」
「そっか。ふーん」
「本当に怒らないんだ?」
「私も同じことを言おうとしていたもの。それに、昨日も言ったけど、信一になら胸を見られたって……嫌な気持ちはしないから。ね?」
真帆乃がふふっと笑う。そして、胸を隠していた手を恥ずかしそうにしながら離した。
「もっと見てくれてもいいのよ?」
「見たりしないよ……」
「信一は私に……」
真帆乃は最後まで言わず、上目遣いに信一を見た
一体何を真帆乃は聞こうとしたのだろうか。「信一は私に興味があるの?」と、聞こうとしたのかもしれない。
でも、それはパンドラの箱だった。開けてしまえば、ただの再会した幼馴染ではいられなくなる。
信一は真帆乃から目をそらし、言う。
「真帆乃はキャラを何にするの?」
「そうね……」
真帆乃は少し考え、そして、緑色の髪の女神のキャラを選んだ。どことなく、真帆乃に雰囲気が似ているかもしれない。少なくとも信一が選んだキャラより、こっちのほうがよく似ている。
なんでもできる優秀な女神。今も昔も、それが真帆乃だった。
そんな真帆乃はくすりと真帆乃は笑う。
「私がどうしてこのキャラを選んだと思う?」
「強いから、だよね?」
「そう。そのとおり。ね? 賭けをしない?」
「警察官が賭博はまずいんじゃないかな」
「お金を賭けるわけじゃないの。負けたら、相手の命令になんでも従う。どう?」
真帆乃がいたずらっぽく片目をつぶり、そんなとんでもない提案をした。
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