第18話 スタンピードの終わり

 ボーンドラゴンの傷口から溢れだした光が、その全身へと広がっていく。

 内側から光をともなったひびが、ボーンドラゴンの全身に出来たかと思った瞬間、いっそう激しい光とともにボーンドラゴンの体が爆散する。


「うわっ!」「きゃっ」


 ゴンタとルナの悲鳴。特にゴンタは眩しそうに顔をおおって、ペタンと尻餅をついている。

 そのくるくるっと丸められた尻尾に、私は思わず見とれてしまう。


 しかしすぐに視線を振り切り、ボーンドラゴンへと戻す。飛び散った体の欠片は、そのまま。復活するそぶりもない。

 どうやら、決着はついたようだ。


「ふっ。これが、モフモフを汚したものの末路」

「あ、アルマ殿。いったいあれはなんだったのですか?」

「ボーンドラゴンのキャパ以上の魔力を叩き込んでみた」

「っ! そ、そんな事が可能だなんて……」


 唖然とした様子のゴンタ。

 そこにクローとルナも駆け寄ってくる。


「さすがアルマ殿ですな。お見事でした」「アルマちゃんっ。凄かったよっ」


 私はクローの方に、軽く拳をつきだしてみる。

 最初首を傾げていたクローがおずおずとした様子でポンと拳を合わせてくれる。

 次に、抱きつこうとして思い止まった様子のルナを見る。


 ──どうやら砂ぼこりに汚れているのを気にしているみたい。


 私は今度は自分から一歩ルナに近づくとぎゅっとそのモフモフを抱き締める。


「──アルマちゃんっ。凄かったよ、アルマちゃん」


 ルナもぎゅっと抱き締め返してくる。


 そうして、唐突に始まったスタンピードはとりあえずの終息を迎えた、かに思えたのだった。

 その時は。


 ◆◇


 私とクローは、ゴンタとルナに連れられ、探索者ギルドの建物の前へと来ていた。

 クローの手にはボーンドラゴンから現れた大きな魔石。そして、集められるだけのその骨の欠片を、ゴンタが両手の袋いっぱいに持っていた。


 ゴンタいわく、高く売れるらしい。


 ルナがドアを開け、先頭で建物の中へ。私はそのあとに入ったゴンタに続いて入っていく。

 ゴンタの背中越しに見える建物の中はなかなか立派だった。

 人々が忙しげに走り回っている。


「ゴンタ様、ルナ様! 良かった──」


 ゴンタとルナの姿をみた職員らしき女性が走りよってくる。


 ──あ、ウサギ耳だ。


 何かを言いかけたウサギの亜人の女性がピタリと口をつぐむ。大きくその目が見開かれている。その視線は、私の背後から入ったクローの抱える大きな魔石に釘付けだった。

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