第156話 ロボチューブ生配信です! その八
(雅なBGM)
「はい、あ、はい、始まりました。『ご主人様チャンネル』の放送がね、始まりましたよ。みなさん、明けましておめでとうございます、あ」
画面に
『始まったwww』
『紋付袴www』
『お正月っぽい』
『メル蔵の着物可愛いw』
「ご主人様! 名乗ってください!」
「あ、みなさん明けましておめでとうございます。
「助手の
「あ、新年早々たくさんのコメントが届いていますね。えー、ギックリゴシゴシさん、飛んで平八郎さん、あの、今年もよろしくね、おねがいします。あ、馬鳥のドミナントさん、人として生きてください」
「あ、じゃあね、今日もね、あの」
「近所に住んでる
「助手のアンキモですわー!」
「あ、勝手に出てきた」
画面に金髪縦ロールに紫の着物を着たお嬢様が現れた。それぞれグラサンと紙袋を装着している。
『マリ助きたー!』
『めちゃかわwww』
『アンキモー!』
『お嬢様に着物www』
『この公園どこwww』
「あ、新年一発目の放送ですけど、すごいたくさんの人が見にきてくれていますね」
「ご主人様! 新年最初の企画にいきましょう! デュルルルルルルル、デン!」
「去年を振り返ってみた〜」
「パフパフパフ!」
「あ、このコーナーではね、焚き火を囲みながらね、あの去年の出来事を振り返ってみたいと思いますよ。あ、ここは川沿いの公園ですね。メル蔵!」
「はい!」
「焚き火セットよろしく!」
「どうぞ!」
メル蔵は焚き火台と薪、きりもみ式火起こしセットを設置した。
『公園で火起こしwww』
『あかんやろ』
『キャンプ場じゃないんだから』
「皆さん、火起こしはしたことありますか? 火起こしは人類最初の科学と言われる重要な技術です。太古では火を起こせない人間は生きる力が無いとみなされてしまったのです」
「ご主人様! セット完了しました! 火を起こしてください!」
「任せろ!」
黒男は地面に座ると足で板を固定した。板に棒を立て両手で挟み込んだ。その棒を手のひらで擦り合わせるようにして回転をさせた。
(火起こしはロボマッポ監修の元、安全に配慮して行っています)
『テロップw』
『あーあー、紋付袴が汚れちゃうよ』
『なんでよりによってきりもみ式なのwww』
「うおおおおおお! これで火を起こしましてね、あの、メル蔵が作ってきたお雑煮をみんなでね、たべ、食べたいと思いますよ。ハァハァ。あ、お餅もね、ありますから。焼いて、ハァハァ、焼いて! 食べます!」
『がんばれw』
『お雑煮いいね』
『はよしろ』
「黒男さんまだですの?」
「お腹がすきましたわ」
「今やってるでしょ!!!」
しかしいくら棒を回しても一向に火が付く気配がない。
「ハァハァ、おかしいな、この前は簡単にできたんだけどな」
「いえ! 前回は瀕死状態になってようやく火が付きました!」
「そうだっけ? すぐ付いた気がするんだけど」
「キャンプの火起こしが過酷すぎたせいか、記憶が改竄されています!」
『黒男、しっかりしろwww』
『これ無理っぽいな』
『¥3000。がんばれがんばれ』
「ハァハァ、もう少しで火が起きる気がする。あ、ニコラ・テス乱太郎さん、ロボチャットありがとうございます。絶対にね、あの、火を起こしますから、見ててください」
『あれ?』
『あ……』
『泣いてるwww』
『泣いたwww』
「ううう……火が起きない。どうして……ううう。ぐすん」
「ご主人様! がんばってください!」
「火なんてこうやって起こせばいいんじゃありませんの?」
アンキモが右手の中指と親指で指パッチンをすると放電が発生し、積まれた薪に火が付いた。
『アンキモすげえ』
『さすがメイドロボ』
『黒男www』
「どうして勝手に火を付けちゃうの!!??」
「どうしてって簡単に火を起こせた方がいいですわよ」
「苦労するから楽しいんでしょうが!!!」
「早くお雑煮を食べられた方が楽しいですわ」
『確かにw』
『www』
『アンキモ容赦ないwww』
「うわわああああ、うおうお! うわあああああ!」
「うるさいですわね」
「早くお雑煮を食べさせて欲しいですわー!」
メル蔵は焚き火台の上に網をセットすると、お雑煮がたっぷりと入った鍋を乗せた。さらにロボ切り餅を鍋の横に置いた。
「ハァハァ、ぐすん。じゃあお雑煮が温まるまでね、あ、みんなにお話を聞いていきたいと思います。メル蔵!」
「はい!」
「去年一番印象に残った事は何!?」
「北海道旅行です! 初めて遠くへ旅行に行ったのでワクワクしました!」
「わたくし達も行きましたのよー!」
「楽しかったですわー!」
「うんうん、あれは楽しかったね」
『北海道羨ましい』
『カニ食いまくってたなwww』
『スキーしてえ』
『なんか茂みの中に幼女と黒いメイドロボが立ってない?』
「ご主人様もね、北海道は初めてだったから思い出に残ったね。凄く綺麗だった。じゃあ次、マリ助!」
「なんですの?」
「去年印象に残った出来事は!?」
「
『ROBOSUKEきたー!』
『テレビで見たw』
『ROBOSUKE面白かったわ』
「ああ、あれね。みんなで力を合わせて戦ったもんね」
「力を合わせたというか、黒男さんに裏切られましたわ」
「裏切り者ですわ」
『酷い裏切りだったwww』
『マジでクズwww』
『最高にゲス』
「戦いなんだからしょうがないでしょ!!!」
「ご主人様、何事にも限度がありますよ」
「でもちゃんと最後はみんなで戦ったでしょ!!!」
『戦ったけど負けたじゃねーかw』
『かっこいい展開からの一瞬で敗北www』
「お姉様がいなかったら人類滅びていましたわ」
「救世主ですわ」
そうこうしているうちにお雑煮の鍋が沸騰してきた。ロボ切り餅も丸々と膨れ上がり綺麗な焼き目がついている。メル蔵はお椀にお雑煮をよそい、餅を投入した。
『やべえクソうまそうw』
『お雑煮食いてえ!』
『¥6000。これで食わせてくれー』
「お雑煮食べるの初めてですわー!」
「お餅も初めてですわー!」
「たんとお召し上がりください!」
「うひょー! いただきます! んん! んまい! 濃口醤油がピリっと効いた鶏のお出汁がじんわり体に染み込んでいく〜。あ、水曜日のトゥルントゥルンさん、ロボチャットありがとうございます」
「青菜のシャキシャキ感がたまりませんわー!」
「これは東京のお雑煮ですのねー!」
「はい! ご主人様の地元は白味噌のお雑煮ですので、あえて東京風にしてみました。本場の関西風お雑煮は本場で食べたいですので」
四人はズズズとお雑煮を啜った。もちもちの餅をこれでもかと伸ばしては千切る。餅に絡みついたお出汁が滲み出て口の中で洪水を起こした。
「じゃあ、アンキモ!」
「はいですの」
「去年の思い出の出来事は!?」
「わたくしとメル蔵さんのご主人様設定が入れ替わった事件ですの」
「ああ、ゴキブリロボの件ね」
『なにそれ怖い』
『うちにもゴキブリロボ出たことあるわ』
「あったね〜。アンキモがうちに泊まりに来たんだよね」
「黒男さんがわたくしのストッキングを頭に被って遊んでいましたわ」
「どうしてバレてるの!?」
「バレバレですわ」
『変態www』
『マジで逮捕しろよw』
『あの時はめちゃワロタァwww』
「皆さん! 追加のお餅が焼けました!」
「お、いいね。
「わかりました!」
メル蔵は焼けた餅にたっぷりと醤油をかけ、海苔を巻いた。それを黒男に手渡した。
「あちち、あちぃ。はむ。うっま〜。なんで餅ってこんなに美味いんだろ。餅と醤油の相性抜群だな。それにピリリと辛い……これは七味をまぶしてあるのか!」
「はい、ご主人様のは大人バージョンです。マリ助ちゃんのはお子様向けで砂糖醤油にしてあります」
「わたくしもう中学生ですのでお子様じゃありませんのよー!」
「もうそろそろおっぱい吸いながら寝るのは卒業できそうですのよー!」
「吸っていませんわー!」
『おこちゃまwww』
『可愛いwww』
『マリ助最高!』
「じゃあ次のコーナー行こうか……ん?」
その時、遠くからロボマッポ達が走ってくるのが見えた。
「ピピピー! こらこらこらー! 公園内での焚き火は禁止だー! ピピピー!」
「やべえロボマッポだ! 逃げろ!」
「ピピピー! 逃げるなー! 捕まえろー!」
「なんで!? ロボマッポに許可貰ってたんじゃないの!?」
「日頃の行いが悪いからです!」
『ガチでロボマッポ来た!』
『誰だよ通報したのwww』
『逃げるなwww』
「うわああああ! 離せ! いやだー! 新年早々捕まりたくない! 誰か、誰か助けてー! メル蔵ー! マリ助ー! アンキモー!」
『みんなもういないwww』
『置き去りwww』
『速攻逃げたwww』
『¥9000。保釈金どぞー』
「はい、皆さんお疲れ様でした。今年もこんな感じで元気よくお送りしたいと思います。ぜひご主人様チャンネルをよろしくお願いします。あ、ドクター電子レンジさん、また来てください。あ、パプアニューカレドニアさん、保釈金ありがとうございます。それでは皆さんご機嫌よう」
(雅なBGM)
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