第43話 マキアス、女神と王女たちに襲われる
「うわぁ~、これすごいや!」
僕は特大ベッドの上で思わず驚嘆の声を上げてしまった。
すごく分厚い。でも絶妙にやわらかくてシーツもスベスベする。あとなんかいい匂いがする。
宿泊のため王城の一室を使わせてもらっている。客室でもなく王族使用の部屋らしい。
国王陛下直々に、明日の出発に備えてゆっくり休んでくれとのことだった。
「本当に僕なんかが使っていいのかな? この部屋」
『マキアス様なら当然でしょう! きゃぁ~フワフワ~みてみてマキアスさま~』
実体化したエレニアが、高級ベッドのうえでボンボン跳ねながらはしゃいでいる。
「ところでエレニアは隣の部屋だよね。そろそろ戻った方がいいよ」
『え~、いやです~わたしマキアスさまと寝る~』
そう、この人は当然のように僕の部屋にいるが、実体化している以上、完全に女性だ。というか女神でしょ。
「いやいや、それはだめでしょ。問題ありだから」
『え? 私はなんの問題もないですけど~』
いやいや、大問題ですよ。
ちなみにエレニアは実体化からスキルプレートに戻すこともできることがわかった。もはや完全にスキルプレートの枠を逸脱しているが…。まあ本人も実体化している方が楽しいようなので、基本的には彼女の意思に任せている。
だけど…、一緒に寝るとかはダメでしょ。
「あんまりわがまま言うと、スキルプレートに戻すよ」
『ええ~! プレートプレイですか! いやん、できるかしらわたし! ドキドキ♡』
なんだそのいかがわしいプレイは? 僕を変態にしたいのか? やめてくれ。
と、そんな押し問答をしていると、部屋のドアが勢いよく開いてかわいい叫び声が飛んできた。
「ちょっと! ないやってんのエレニア! あなたの部屋は隣でしょ!」
『あ~あ~、マキアスさまがのんびりしているから、邪魔者が来ちゃったじゃないですか~』
「な、なによ! 変なプレイなんかさせないわよ!」
あ、リーナさんそのくだり聞いてたんですね。そしてそんなプレイはしませんよ。断じて僕は変態じゃないので誤解を生む発言は控えてほしいな。
『ふ~ん、リーナこそそんなうっすい肌着で来ちゃって。何を企んでいるのかしら? この娘』
う、たしかに目の前にいるリーナの服装は相当すごい…。
これ、ナイトドレスとかいうやつなんじゃなかろうか? 胸元があきすぎていて、大きな膨らみがこぼれ落ちそうじゃないですか。いかん、けしからん!
「ま、マキアス…そんなに見つめなくても…」
ああ、いかん。釘付けになっていた。「王族寝間着卑猥ガン見罪」とかになってしまう。
僕はあわてて目をそらす。
目線をそらすと、その先になんかいた。
「ま、マキアス。あ、あたいはどう?」
ふむ、第一王女さまだ。黒いスケスケ布地で、布面積がほとんどない寝間着で僕に問いかけてきた。
「き、キルネシアさま。何しに来たのですか? まずいですよ…」
「だ、だって。マキアス、あたいの部屋に来いっていったのに。一向にこないし…だから来たの…」
来たのじゃない!
いけるわけないですよ。第一王女の部屋は気軽に行く場所じゃないからね。あと、それもう寝間着じゃなくてほぼ下着ですよ。
『あ~もうっ! めんどくさい!』
エレニアがおもむろに立ち上がる。良かった、ようやく自分の部屋に戻ってくれるのか。
んんっ!?
違った…なにやら服を脱ごうとしているような…
「ちょ、エレニア! なにやってんの!?」
『え? 何って、もうらちが明かないので実力行使することにしました』
実力行使? なぜ服を脱ごうとする? 頭大丈夫かこの女神? 意味わからん?
「あ、あたいも脱ぐ!」
いや、脱ぐんじゃない! 第一王女!
「え、そんな、わたし恥ずかしくてそんなことできない…」
リーナがそんなセリフを言いながらも、なんか肩紐に手をかけてモジモジしている。
なにこれ! 僕がアワアワしているうちに、エレニアさんが天使の衣みたいな服を脱いで完全に下着姿になっていた。
そして下着に手がかかり…いかん鼻血でそう!! って違う!
「なにやってんだ! エレニア! プレートに戻れ!」
僕はエレニアをスキルプレートに戻そうとするも、彼女は必死に抵抗する。
こら! 戻りなさい! ぎゅう! むぎゅっ!
彼女の体を押さえつけてなんとか…あれ? なんかみんなの視線が…
『いやん、マキアスさまって積極的~♡』
「いや、これは違うんだ! エレニアをスキルプレートにもどすために…」
「マキアス! あなたの言ってたプレートプレイってこのことだったの!」
え? なに言ってんのリーナ?
「ま、マキアス。あ、あたいもする! そのプレイ!」
するじゃない! もう第一王女は黙ってくれ!
やめてくれ、なんとか逃げ出したいと焦っていると、とんでもない氷のような視線を感じて悪寒が走る。
「あ、ミランさん…」
振り向くと、半開きのドアの隙間からメイドさんが鬼のような形相で睨んでいる。僕を…
冤罪なのに…
メイドさんの登場により、3人のレディは若干のお説教を受けて渋々と自分の部屋に戻っていった。
「た、助かりましたミランさん」
「………」
無言怖い! 僕何もしてないんですよ!
「いえ、姫様のお体を不埒なケダモノからお守りするのは、メイドとして当然の務めですから。わたしの大事な姫様の体…」
なんか色々ひっかかるセリフだが、とにかく窮地を脱したのだ。ミランさんには感謝しよう。
「あと、特級騎士様と言えども、私の大事な大事な大事なリリローナさまに何かあったら、その時はお覚悟を。まあそのようなことはあり得ないとは思いますが」
こわっ! 覚悟って…僕は何もしていないしする気もないですよ。
にしてもまた大事3回言ったな…まあそれだけリーナの事を大事に思っているのだろう。とにかくこの人は怒らせないようにしよう。視線が怖すぎる…。
ようやく1人になれた僕はベッドにダイブして、明日に備える。これでぐっすり寝れるだろう。
「ぐっ…」
全然ダメだった。眠れない…女性特有の香水なのかなんなのか知らんけど、いい匂いがそこら中に充満しているじゃないか! なんか気になって寝れん!
こうして僕は安眠とは程遠い夜を過ごすのであった。
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