第40話 マキアス、王の前で罪を清算する?

 僕は謁見の間にて、国王陛下の前にひざまずいている。

 ひざまずいた先の玉座に座っているのはこの国の国王陛下、クライツ・ロイ・エセシオン。そうこのエセシオン王国のトップである。隣の席にはリーナも座っている。あとまわりには騎士や文官やら偉そうな人たちもいっぱいいた。


「マキアス・ルイガイアおもてをあげよ」


「はっ!」


 白いひげをたくわえた初老の男性が柔和な顔をしつつ鋭い眼光を僕に放っていた。


 めっちゃ睨まれてる! 笑っているようで笑ってない!! 

 やはり罪を問われるのだろうか…心なしか鼻もひくひくしてるし。


「ふ~む、そこまでいい匂いはせんがな~」


「へ?」


「いや、なにリリローナめがマキアスはいい匂いがして落ち着くと言っておったからな」


「ちょ! お父様! 何言って…」


 いや本当に何言ってるのリーナ! それじゃ僕が「王女強制体臭におわせ罪」に問われるじゃないか! というか風呂とか入る間もなく国王陛下に会っているんだ。だぶん臭いだろう!


 早くも不穏な空気になり始める謁見の間に、国王陛下の声が響いた。


「まあ、よい。 マキアス! お主に言い渡すことがある! 心して聞くがよい!」


「はっ!」


 ああ~やはり罪か…罪なんだな。追放だ…国外追放か…


「ひとつ! 我が娘リリローナを襲い掛かるジャイアントロックより救った!」


 ああ、宿屋で顔面鼻血まみれをリーナに見せつけた罪か…


「ひとつ! コルナ村にて害虫を討伐し見事村人とルイガイア騎士たちを救った!」


 ああ、リーナを抱き上げたあげく鼻血を出した罪か…


「ひとつ! 沿岸村落をおそった魔物およびアイランドタートルの討伐により、各地の領民と国の物流を救った!」


 ああ、リーナがばい~んて抱き着いてきたやつだ、ばい~ん罪はさんざんやらかしている余罪まみれだ…


「ひとつ! 我が娘リリローナを不届き者たちから守り通した!」


 ああ、リーナの使用済みパンツ放出事件か…ばい~ん罪も絡んでくるやつだ…


 国王陛下が凄まじい形相で、僕の前に進んできた。高価そうな鞘におさめられた剣を持っている。

 なるほど、追放どころではないな。この場で打ち首ということか…思い返せば王族への罪が多すぎる…

 直前に第一王女を水浸しのスケスケにしてしまったってるし。


 僕は跪いたまま微動だにしなかった。最後ぐらいは騎士らしく散るぞ。



「―――マキアスよ! 以上の多大なる功績を持って、お主に特級騎士の称号を授ける!!」



「へ? トッキュウキシ?」


 何言ってるの? 特級騎士て国に数人しかいない超すごい称号なんですけど。


「そ、そうか散る前に、せめてもの花向けに特別な称号を与えてくれたんだ」


 騎士が戦死すると階級が飛び級するっていうあれだ。


 僕は覚悟を決めて、上着を脱ぎ始めた。首筋をしっかり出すために。


「ん? お主なに脱いどるんじゃ?」


「もうおわかりでしょう!」


「え?なにがじゃ?(まさかワシの男の子大好き趣味に感づきおった?)」


「陛下のお心のままに!!」


「心のままじゃと?(え~、あんなことやこんなこと!?)」


「お好きになさってください!」


「ふぃぇ~好きにしていい!?(今、今なの!?)」


 なぜか陛下も脱ぎ始めた。


「ちょっと、マキアス! お父様! 何やっているの! 服着なさい!!」


 リーナが慌てて、僕のところに来て服を着せてくれた。


「えと? 陛下自ら私の首をはねるのでは?」


「はあ? どうやったらそうなるんじゃ?」


 ん? ん? なんだ? どういうことだ?


「罪ジャナイ?」


「違うわよ」


「ツイホウサレナイ?」


「されるわけないでしょ」


 なんだ、処刑でもない追放でもない? じゃあなに?


「私を助けてくれたマキアスが罪に問われるわけないでしょ」


 その時、国王陛下の大声が謁見の間に響きわたった。


「マキアス! 何をぼさっとしておる! こっちへきて騎士の剣を受け取らんか!」


「ひゃい!」


 僕は速攻で国王陛下の元に駆けつけて、騎士の剣を受け取った。


「ははは、随分とたくましい男に成長したのうマキアス、見違えたわい。我が娘が無事に戻ってくれたのもお主の働きがあってこそであろう、あらためて礼を言うぞ」


 国王陛下のお言葉と共に、どこにいたのかラッパのファンファーレが鳴り、周りにいた騎士や文官たちの拍手が鳴り響いた。


「ぼ、ぼくが特級騎士…」


「ははは~さてと、お主も長旅で疲れたろう、褒美については後日話をするとして今日はここまでとしよう。マキアスよ! その称号に見劣りせぬ働きを期待しておるぞ!」


「は、はい!!」


 無我夢中でリーナと王都まで旅して来たけど、まさかこんなことになるとは思いもしなかった。だけど、国王陛下に認めてもらえたのだからこれ以上の褒美はないだろう。僕の剣が誰かの役に立っていた思うと、照れる気持ちと誇らしい気持ちが同時に沸き起こって、とてもいい気分になった。


「しかし早くも娘に服を着させるとはな。これはしっかりと責任を取らんと本当に首をはねるからのう。なあマキアス」


 やばい、王族強制衣服着脱プレイ罪になるところだった…王様の前で服を脱ぐのはやめよう(当たりまえです)。

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