第39話 マキアス、女騎士に襲われる
エセシオン王国、王都セイナスの王城。僕らはその正門から堂々と馬車ごと入城した。この王国の中心であり最も重要な城。リーナに同行していなければ、追放された僕がおいそれと入れる場所じゃない。
『まあ、さすが王城ね。豪華だわ~リーナのお部屋はどこかしら』
エレニアが城内を見回しながら、リーナとおしゃべりを楽しんでいる。エレニアの正体は女神さまだったのだが、僕らは今まで通りに彼女と接している。本人の希望もあり、僕らも今更感もあったのでそうなった。女神という正体を前面的にバラすわけにもいかないので、表向きは僕の従者(メイド)という設定になっている。
そうこうするうちに僕らの乗っている馬車は城内の広場に止まった。あとは徒歩で移動するのだろう。
馬車の前には騎士たちが膝まづいている。よくみると先ほどの騎士たちでない。女性騎士たちだ。みんな左肩に赤い紋様をつけておりカッコいい。リーナの専属護衛騎士なのかな?
「マキアス、着いたばかりで悪いけどすぐにお父様に会いに行くわ」
リーナは馬車を降りると、その綺麗な瞳をまっすぐ僕に向けてきた。
「そうだね、陛下には道中での出来事をしっかり伝えないとね」
リーナもこくりと頷き、僕らは宮殿へむかって歩き始めた。
しかし、国王陛下にお会いするのは久しぶりだなぁ、やばいちょっと緊張してきた。
『ふふ、おっぱい王女の父親ですね。どんな人なのかしら』
エレニアさん、声が大きい。今はメイドの設定ですよ。この女神さまはすぐに設定忘れちゃうのかなぁ。
困ったメイドを注意していると、なんか声がこちらに近づいてくる。
いや声というか奇声?
「うらぁああああああああ!!!!!」
城の奥から凄まじい砂煙を上げて突撃してくる人がいる。なんか嫌な予感がするぞ、これ。
「き―――さま!!! あたいのリリローナに何してくれてんだ!!!」
変な人きた――――――!!
奇声を上げて弾丸のように突撃してきた女性騎士はいきなり大剣を振り下ろしてきた。僕はとっさに抜刀して剣で受ける。
「っ! 重い!!」
何とか大剣の軌道をそらしたが、そのまま強烈な斬撃が豪華な馬車を真っ二つにしてしまった。
「ちょ、ちょっと待って! 僕は怪しいものじゃ…」
「だまれ!!! あたいのリリローナに使用済パンツとかばい~んとかやったんだろう!! ぜったい許さね~~!!」
ひぃいいいいい、やっぱり罪の呼び出しなんだ!! 王様からの呼び出しなんて変だと思ったよ!!
「ち、違うんです。ばい~んは故意じゃないんです。不可抗力というか、リーナが飛びついてきちゃったというか…」
――――――ブチブチブチ
あれこの音どっかで聞いたことあるような…
「てめぇ!!!!! ほんとうにばい~んやりやがったんだなぁあああああ!!!!!」
女騎士は大剣を空にかかげて叫び声をあげる。
「スキル発動! 【アイスクイーン】!! 絶対零度!!」
女騎士と僕の周りに凄まじい勢いで凍てつくような氷の空間が広がっていく。
「ち、違っ! 寒っ!!」
ダメだ、まったく話を聞いてくれない、この人! このままだと本当に氷漬けになてしまうので、僕は【火力創成】を発動して自分の周りの氷を溶かしていく。
「へぇ、さすがあたいのリリローナに手を出しただけのことはあるじゃん。絶対零度の氷結を溶かしたやつははじめてだよ!!」
たしかにこの人のスキル強力だぞ。城内だから加減しているようだけど、溶かしても溶かしてもすぐに氷結しはじめる。
ただし本人がまったくクールじゃない!
ずっと血管ブチブチしてるし。
「その力で、リリローナに無理やりばい~んさせたんだな!!!」
「だ、だから違うって…」
「問答無用!! ぶっ殺す!!!」
女騎士の大剣に絶対零度の冷気が凝縮されていく。これはマジでやばい!!
「―――奥義!! アイスクラッシャー!!」
「まずい! 【火力創成】最大出力!! 火炎一刀速断―!!!」
僕は、絶対零度の斬撃に最大火力の斬撃を思い切りぶつけた。
凄まじい轟音とともに、女性騎士の後ろの城壁が吹っ飛んでいた。彼女はボロボロになった大剣を構えたままその場で立ち尽くしている。
しまった~やりすぎちゃったのか!! まずいぞ! ばい~ん容疑に加えて、王城器物破損罪も追加されてしまう!!
女騎士がうつろな瞳をして僕にゆっくりと近づいてくる。
氷が蒸発して溶けたので、女性騎士の衣服がべちょべちょになっている。もうそれは色々と透けているので目のやり場に困る。
「あ、あたいより強い男…強い男、男、おとこ!」
ひぃい、なんかブツブツ言いだした…頭の打ちどころでも悪かったんだろうか。これはまずい、一生ものの傷を負わせてしまったかも。しかも「衣服ハレンチべっちょりスケスケ罪」に問われる可能性もある。
「マキアス!!!」
「ひゃい!」
「こっち、みろ!」
だからスケスケで見れないんだって!
「あ、あとで…あたいの部屋にこ…こ…こい」
「へ? えと?」
「逃げたら殺す! じゃあな!」
彼女はそれだけ言うと風のように去っていった。いや、意味わからん。やはり頭に深い傷を負わせてしまったんじゃないのか。
『何だったんですか? あの女?』
「もう、お姉さまったら、マキアス大丈夫?」
「『お姉さま!?』」
思わずエレニアと同時に驚愕の声が出た。
僕はビクビクを必死に抑えつつリーナに確認する。
「え? どうしたのマキアス? お姉さまよ。キルネシア・ロイ・エセシオン、第一王女だけど」
―――――――――はい、終わった。
短い人生だった。ばい~ん罪と王城器物破損罪に第一王女衣服ハレンチべっちょりスケスケ罪か…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます