第113話 一段落
あれからソフィア絡みの人達は同じような手口で弄んで殺し、それ以外の人は普通に瞬殺していた。
その後人の流れが一段落ついたところで、歩みを止める。
「ふふっ、自分の苦痛が無意味だと知った時の顔って良いですよね。あなたもそう思いません?」
そう言いながら、刃でがんじがらめにされている委員長と呼ばれていた少女を見る。目を合わせてみようとするも、虚ろで焦点が合っていない上に何の反応も無い。
「んー、これもここまでかな……」
装備か何かで自動回復し続けていたお陰でかなり長く楽しめたけど、精神の方が保たなかったか。
さて、近くに人は…………居ない。
《次元掌握》でかなり広域の索敵が出来るようになったが、それでも反応はすぐ近くの1つだけだった。
明らかに最初に見た数より殺した数が少ないため、逃げたかログアウトされたらしい。
「これは殺しておくとして……『あなた達はそろそろ出てきたら?』
何も反応しなくなった少女の口の中に刃を伸ばし、中から心臓を刺すことで殺す。
それから地面にある黒い影に向かって声をかけると、闇の小人やらカラスやらクリオネやらが出てくる。出てきて早々深淵生物たちは私の周りを漂いながら騒ぎ始めた。
『たのしかったー』
『ゆえつー』
「オオォァァァー」
愉悦って……まぁ楽しんでたのは事実だけど。
今回ここまで煽りながら殺してたのには、楽しむのとは別にもう1つ理由がある。何故かというと、第2回イベント含め今後のため。現時点でもそれなりにヘイトは集まっているけれど、正直物足りない。だから煽って燃料を投下した、という至極単純な理由だ。
「特にソフィアには早く出てきて欲しいんだよねぇ……」
ゲームの仕様上、連絡も取れない相手と再会するのは至難の業。それならばと、ソフィア絡みの人を重点的に煽って何かしらの動きを誘発させる。これで本人が来てくれるのがベストだけれど、本人の場所が分かる程度のことが起きてくれても良い。
「あとミコもいつ会えるかなぁ……」
最後に会ったのがリアルの高校だから、ゲームの方でも会えないものかな……。
あ、同じ高校なんだから連絡取れないこともないのか。後でコスモス――莉桜に連絡先知らないか聞いてみようか。
それから地上100m程の高さまで飛んだ後、ゆっくりと空中を漂っていた。
……そういえば、この深淵生物たちが着いてくるのに何の疑問も持たなかったから、まだ《鑑定》してなかった。今からでも見ておこうかな。
□□□□□
虚空なる闇 Lv.10
※詳細鑑定不能※
死兆の黒鴉 Lv.24
※詳細鑑定不能※
暗晶の邪精-怜悧 Lv.8
※詳細鑑定不能※
暴食の和金 Lv.22
※詳細鑑定不能※
□□□□□
「あっ、そうだった……!」
Lvが1に戻ったから《鑑定》がLvの高い相手に効かなくなってるんだ……すっかり忘れてた。
つまり今はこのチョーカーがあっても、Lv.16の相手にはステータスを見られるようになる……のはまだいいか。私から見れなくなるのも不便といえば不便だけど、かなり強くなった代償と考えるとデメリットは小さいね。
「ま、いっか」
考え直してみたら思ったより困ることは無さそうだ。今は会話出来るんだし、深淵生物たちに関しては直接聞けばいいか。
『あなた達って何が出来るの?』
『んー、わかんなーい』
『なぞー』
「ピィィ……?」
前言撤回、困った。
『な、なら何のために着いてきてるの?』
『たのしそうだからー』
『ごらくのためー』
「カァアアー」
そうだった、そんなこと言ってた気がする。
うーん……この深淵生物たちはどうしようか。とりあえず、イベントまでまだ数日期間がある訳だから、それまでの間にいい感じの落とし所でも探そうか。
後はLv上げなりしておいて《鑑定》を問題なく使えるのを目指すかな。
「今日はログアウトするかな……」
空中で飛んだ状態で、そのままログアウトすることにした。
「んーっ……! ふぅっ」
意識が現実に戻ってきて、一度身体を伸ばす。
ゲーム内で常に浮いていたのもあり、動かすのがやや重く感じる。
体をほぐした後に顔を洗ってうがいをしたところで、通話が来たことを知らせる音が鳴る。
「誰から……って、莉桜?」
「やっほー月華、今忙しかった? それならかけ直すけど」
「いいえ、丁度暇を持て余していた所です」
「そう? なら良かった」
「それにしても、話すの久しぶりに感じますね」
「確かにそうだねー、ゲーム内だと体感時間が長くなるもんね。はっ!? もしかして私達、ゲームし過ぎ……?」
「ふふっ、楽しいですからそれはしょうがないですね」
「それもそっか! かなり時間使ってるけど、まだ高一の夏休みだし良いよね!」
それから少しの間とりとめのない話をしていた所――
「ところでさ……やっぱりタメ口で話さないの?」
「そうですね……どうにも慣れないといいますか」
「ふーん、ゲームで楽しく殺してる時はタメ口になるのに、今は出来ないんだー。ふーん?」
「うっ」
中々痛いところを突かれた。
といっても、殺して遊んでいる時は往々にして敬語が崩れるのは事実だった。
「殺している間はどうにも何かが外れるというか、壊れている感じでして……。無意識の内に話し方が変わっているんですよね」
「……まぁ、それも月華らしいといえばらしいか」
何かを納得したようで、ふふっと笑う声が聞こえて来たが何故かはよく分からなかった。
「それより、私からも莉桜に聞きたいことがありまして」
「ん、なになに?」
「まず1つ、高校に関しての話です。1年のCクラスにいる、内海琴という人知ってますかね。もし知っていて連絡先も分かるのであれば紹介して欲しいんです」
「内海琴? 知ってるし連絡先も持ってるよ。チャットから送っとこうか」
「本当ですか、ありがとうございます」
「いいよいいよー。私に出来ることなら全然応えるから」
……よし。これは次に会える日が楽しみだ――
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