第104話 深い深い闇の海
※『』←この括弧でくくられた台詞は日本語以外の言語で話していることを示しております。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ここは一体どこなんだろうか。
深淵の探索を続けて1時間程が経過した。
最初にいた建物は、六天のいる博物館のすぐ近くにあったはずだった。だが、今いるのは全く見覚えのない山林だ。
「迷った。案の定」
ただでさえ方向音痴の私が上下逆さになった世界に行ったら、場所の把握が出来なくなって迷うに決まってた。しかも、ここマップ機能使えなくなってるし。
「別に目的地がある訳じゃないし、まぁいいか」
というか、地面に近いエリアを中心に探索してるけど特に何も無いんだよね。Lv15~25くらいの黒っぽい魚か鳥が飛んでるくらいで。しかも攻撃して来ないし。
深淵って言うくらいだし、下の空の方が大事だとは思うけど。
それにしても、これからどうしようかな。やっぱり下かな?
今後のことについて考え事をしていると、地面の方の開けた場所に何か動きが見える。
「あれは……」
近くの林の中に姿を隠し、動きがあった場所を観察する。すると、どこかで見た覚えのある黒い小人が現れた。
《鑑定》を使うと、その小人への既視感の正体が明らかになった。
□□□□□
還る処を探す闇 Lv.1
HP:20000/20000 MP:14969/15000
耐性
火:80 水:80 氷:80 雷:80 風:80 地:80 光:0 闇:100 物理:100
□□□□□
「やっぱり……」
ゲーム開始初日に見たあの闇だ。還る処って深淵のことだったのね。
《鑑定》の結果を確認した次の瞬間、全身が真っ黒の闇の小人が目の前に近付いていた。
「xipbsfzpv?」
「え…………あぁ」
認識するのが遅れて内容は聞けなかったが、すぐに返答する。
『聞いてなかったから、もう一度お願い出来る?』
『ん、君だぁれ?』
『私? 私はライブラ』
『どうしてここにいるの?』
どうしてね……。ここに来るのは無意識だったし、そもそも来れたことも偶然だったからね。強いて言うなら……
『私を見てた者の気配を感じて来たけど、当てがなくて彷徨ってたからかな』
『……一緒に来て?』
闇の小人はそう言うと、空の方へとゆっくりと落ち始めた。
「それなら行ってみようか」
丁度いいタイミングだし下の方行ってみようか。もう上の方には用は無さそうだし。
闇の小人を追うようにして、深淵の更に深くへ潜っていくことにした。
しばらく潜り続けていたある時、突然視界が薄暗くなる。上の地面の方を見るも街は見えなくなっていた。どうやら何かしらの境界を過ぎたらしい。
「何これ」
黒い塊……というか、闇? あの闇の小人と同じような感じに見えるけど、何だろうこれ。
一軒家くらいの大きさをした、スライムのような黒い塊がちらほらと漂い始めた。
闇の小人はそれを避けながらどんどん下へと向かっていく。そして、闇のスライムの中の1つの前で止まった。
『じゃあね』
闇の小人はそう言い残すとスライムの中へと入っていった。
「ほんとに何だろうこれ。とりあえず《鑑定》してみようか」
□□□□□
無貌の闇 Lv.??
耐久力:∞/∞
闇に属する全てのものが帰する場所。
□□□□□
何だろう、ここに入った方がいいと私の本能が告げている。六天の時に感じたのはこれだったのかもしれない。
ここまで来たんだから、迷うこともないか。入ろう。
黒い海のような空間を進むこと数分、広い部屋のようなところに出た。
「ここは……」
『ほぉ……、まさか今ここまでやって来るとはな』
声のした方を見ると、緑色の髪をした手足が魚のヒレのようになっている女性がふわふわと浮いていた。近くには外の黒いスライムに似た物が浮いている。
『初めまして、知っているとは思いますが自己紹介を。ライブラと申します』
『なんじゃ、その言い方。妾が何者か気付いとるのか』
『ええ。もう会えるとは思っていませんでしたが、狂気の支配者様?』
そう言うと黒と緑の目を見開いて、怪しげな目を浮かべる。
「全く、そうあっさりとされてはつまらんじゃろう」
「あ、日本語でも良いんですね」
「それじゃ改めて、妾が狂気の支配者じゃ。よく来たの」
やっぱり狂気の支配者で間違いないらしい。
ちょうどいいので色々聞いておこう。
「ところで、幾つか聞きたいことがあるのですが」
「まぁ少しくらいならいいじゃろう。して、聞きたいことはなんじゃ?」
「まず、ここは深淵で間違いありませんよね」
「そうじゃな、正確には『狂気の次元』じゃ。それと、汝が通ってきたのは『闇の海』。深淵中を移動するためのものじゃが、まさかいきなりここに来るとはのぅ」
狂気の次元ってことは、他の状態異常の次元もありそう。あとスライムみたいなあれは移動手段だったのね。
「では、この『禁忌』で始まるスキルと深淵共鳴度の文字化けは何なのでしょうか」
「それはのぅ……。ふむ、気が変わった。汝で遊んで無事に終わったら教えてもいい」
何て迷惑な気の変わり方なんだろう。どうなるかは分からないけど、どうにか頑張って凌ごう。
狂気の支配者はそう話すと、闇のスライムに腕を突っ込んで何かを探すように手を動かす。
「これでいいかの。ほれ、楽しませてくれるな?」
闇から手を引っこ抜くと、自動車からトラックまでくらいの様々なサイズの金魚が現れた。少しの間ふよふよと辺りを漂った後こちらに突っ込んでくる。
「ふむ……」
どう相手するべきかな。支配者が出したものだから、とんでもなく強いのは容易に想像出来る。
双剣を構えながら《鑑定》を使い、狂気の支配者の遊戯の相手を始めた。
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