第48話 第1回公式イベント-2

 どれどれ、残り4729人で残り時間が5時間58分……1分で既に4人減ってるけど一体何してるのあなた達。鬼の開始地点のマークは消えて無くなってる、どう動くのかな。

 一度は鬼の動きを見ておきたいけど、安全第一でビルの上来ちゃったし。近く通って来た時にでも覗き見るしかないか……



 周りから気付かれないように屈んで周囲を見下ろす。が、人の姿は見えない。



 やっぱり序盤は皆動かないよね……


 私も屋上の外側から離れて、本来この屋上に出るためであろう扉に寄りかかる。


 ここまでの10分で人数は50人近く減っている。このペースで行けば第1R終了時におよそマイナス1800人。でも人が減る程見つかりにくくなるから、確実にそれよりは減る。

 恐らく特殊イベントがその内あるだろうね。ありそうなのは、鬼が増えるとかエリアが狭まるとか、そんな所かな?





「やべっ! 逃げろ!」


「うわ、ちょっ……」


「ん?」


 どうやら鬼が現れたらしい。後のために確認しておこう。見られないように……《密殺術》


「はぁちょっ、一発で死!?」


「刀なのに遠距離攻撃飛ばしてくんじゃねぇよ!」


「待っ、逃げらんないんだけど……」


 ……中々の阿鼻叫喚っぷりだ。


 気付かれないうちに戻り、鬼に関しての考察をする。

 確かあれは断魂の鎧武者。移動速度は軽く走るくらいだった。恐らく黒い刃を飛ばして当たった人が即死してるのが《斬魄刀》で、プレイヤーの足元から鎧武者に影が伸びているのが《影踏》って感じかな。



「行ったかな……?」


 静かになったので、鬼はこの辺りからいなくなったらしい。逃げ切ったか全滅したかは知らないけど。


 早い内から片方を確認出来たのは運がよかった。さて、もう暫くここで引きこもらせてもらおう。






 ――――暇だ。


 一度鬼が来た時以降、1時間半程何も起きていない。戦況は残り4306人で残り時間が4時間17分。少しずつ減っているけど、目立った変化は特に無い。


 御影の鎧武者の方も確認出来ればいいんだけど……


「あれ、こんなとこに人がいるとは」


「ん?」


 随分小柄な忍者の格好をしている人が屋上に跳んできた。顔は隠してるけど、声的に男の人かな?


「あなたはどうしてここに?」


「ビルの屋上にいたら鬼の姿が見えたので逃げてきました」


「そうですか? 屋上なら安全では?」


「御影のは高い所まで跳んだり、建物と建物を飛び移ってでも追いかけるんです。断魂は会えてないので、そっちは一体何をしてくるか……」


 じゃあここも安全じゃないのね。

 それに、互いに片方しか見れてないのなら丁度いい。


「私断魂の方だけ戦う所を確認してるんです。もし良ければ鬼についての情報交換を致しませんか?」


「そうですか、助かります! では僕から話しましょう。さっきのに加えてですね、非常に速かったり姿が消えたり――」






「――と、私の分かる断魂の鎧武者についてはこんな所ですね」


 私達は鬼について情報を伝えあった。


「なるほど、助かりました」


「いいえ、こちらこそ助かりましたよ。ありがとうございます。ところで、あなた随分変わった格好ですよね、 忍者みたいですが」


「忍者みたいというか、忍者です。変わった格好というならあなたも変わってるでしょう、黒統一の中二病コスチュームですか?」


「中二病ではないんですけどね」


「説得力無いですよ。あ、僕なんですけど忍者同好会というグループの一員でして、忍者らしい格好、戦い方などを模索してるんですよ。もし他の人と会うことがあればよろしくお願いします」


「へぇ、大きい所なんですか?」


「いえ、100人も居ないんです……でもトップは強くてですね! Lvもうすぐ30になるとかならないとか」


「どっちなんですか……」


 でも30か、それならかなり強いんだろう。1回会ってみたいかも。


「それじゃ、僕はそろそろ失礼しますね。あなたも動いた方がいいかもしれませんよ」


「そうですね、ありがとうございます」


 確かにもう2時間経過するところだ。そろそろ何か起きる頃合いかもしれない。



――特殊イベントが発生しました。残り時間4時間から2時間まで、5分毎に5分前にいた地点から100m以上移動しなかった場合、10分間全ての鬼に自身の位置が通達されます。通達は残り時間4時間から開始されます――


 なるほど、引きこもらないで動きなさいということね。今残り時間は……4時間6分。1分後にいた場所から、その5分後には100m以上離れる必要がある、と。


 それじゃあ、周りに鬼はいなさそうだし降りようか。


「それっ」


 周囲を確認した後、柵を乗り越えて下に飛び降りた。《自由飛翔》で着地前に浮遊して減速したのでダメージはない。


 うん、上手くいったね。それじゃあ、移動しようか。

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