第43話 不可侵領域からの成果

「…………ライブラ! ライブラさんってば……!」


「………っ」


「ライブラ、大丈夫!? 意識ある? どこか変な所ない?」


 意識が戻り、目を開くとそこには見覚えのある天井とコスモスの顔があった。


「コスモス? ここは……」


「良かった。ここダンジョンのセーフティエリアだよ」


「そうでしたか、何があったんですか……?」


「二手に分けられたとき、私は地下室の入口の前に戻されてて、一旦セーフティエリアに戻ったの。それですぐチャットを送りながら待ってたんだけど、返事がないし、戻ってもこなくて。少し前に戻ってきたけど、目をすぐ覚まさない上に聞いたことの無い言葉で魘されてたの。だから何があったのが全く分からなくて不安になって…………」


「そうでしたか、すいません。でもあの空間で意識が無くなってから今までの記憶は無いんです」


 気が付いたらセーフティエリアのロビーに戻っていた。秋川さんと……決闘しなかった方の集団の人達もいる。

 呑み込まれた所までの記憶しか残ってないけれど、形容し難い不快感は未だに残っている。何かまだされてるの? ステータスは……


□□□□□

ライブラ Lv.22

HP:605/1210 MP:17/309

耐性

火:0 水:0 氷:0 雷:0 風:0 地:0 光:50 闇:0 物理:0

スキル

《鑑定》《インベントリ》

《狂風》《自由飛翔》《治癒・弱》《静音・強》《首斬り》《閃撃》《見切り》《命刈り》《狂化》《恐怖の瞳》《密殺術》《二刀流》《心の目》

※状態異常:【侵食】

□□□□□


「えっ」


「ライブラ、どうしたの?」


「いえ、Lvがいつの間にか上がってたので……」


「良かったじゃん、でも……何かあった?」


 Lvが上がってスキルが強化されたのはいい。《跳躍・強》が《自由飛翔》になったらしい。

 それは後で見るとして、問題はこの状態異常だ。


「見たことの無い状態異常、【侵食】というものがついてまして」


「【侵食】?どういう効果なの?」


「何だそれ……」


「聞いた事あるか?」


「いいえ、ないですけど」


 どうやらこの場にいる人全員知らないようだ。


「突然すみません、ライブラさん。私、所謂検証班の者で、スクラといいます。コスモスさんから少し話を聞いたのですが、その状態異常のことも加えて詳しくお話を聞かせて頂けないでしょうか?」


 20歳くらいの緑髪ショートヘアの人だ。色が1人だけ蛍光色で派手だから気になってたけど、スクラさんね。


 あれは私ではどうしようもないだろう。それなら話をして色々な人に試してもらう方がよさそうだ。


「はい、構いませんよ」


「ありがとうございます。その情報を掲示板に投稿するのはよろしいでしょうか」


「私と私に関することを秘匿して頂けるのであれば」


「かしこまりました、お約束いたします。そこは話の後に相談しましょう。まず立方体と中心にあったという球体についてお願いします」


 まず私は、見た3種類のもの。球体の、六天-jowjpmbcmf bsfbt wborvjtifs。仮面の、潰爛-dpmmbqtf。異形の、冒涜-nbeoftt。これらの《鑑定》結果、名前、容貌を話していく。

 発音に関しては、アルファベットの文字列の部分は想像だが。


「えっと、名前が長いですね。アルファベットの文字列の部分はスルーして呼びましょう。ところで、Lv、HP、MPの表示が????というのは……そのような現象聞いた事ありませんが」


「そうでしたか。それなら私に《鑑定》してみて頂けますか?」


「よろしいのですか? では失礼……ってえっ!?」


「どうでしょう?」


「は、はい。確かに????ですが、HPの表記が見えるということはLvは……」


「ううん、私よりライブラの方がLv高いけどHPの表記はあったから関係ないよ」


「コスモスさん? そうでしたか。では次に【侵食】についてですが、分かる効果は……」


「何と言えばいいか分からない不快感がありますね……他には何も……」


「そうでしたか。では次は――」


 それからしばらく、このスクラさんに情報を伝えて私達はあれについての考察を続けた。


「――はい、ありがとうございました。これで以上という所でしょうか?」


「そうですね、話せることは話したと思います」


「では、約束通り秘匿される以外の部分のみ掲示板に公開いたします。お礼に関しては……後程としたいのですが。もしよろしければ一度フレンド登録して頂けないでしょうか」


 検証班の人と繋がりを持っておくのは悪くないだろう。是非お願いしよう。


「はい、よろしくお願いします」


――フレンドに『スクラ』を登録しました――


「ライブラさん。改めてこの度は御協力ありがとうございました。頂いた情報を元に検証を進めてまいります。今後ともよろしくお願い致します」


「はい、こちらこそよろしくお願い致します」


 さて、話も終わったし。まず《自由飛翔》の確認を……


□□□□□

《自由飛翔》

MP:5 CT:0秒

効果:飛翔と浮遊をすることが可能になる。飛翔、加速1回毎にMP5、浮遊5秒毎にMP1を消費する。

□□□□□


 マジか、まさか空を飛べるようになるとは。思いがけず目標のうちの1つを達成してしまった。

 重力が定期的に変わってた影響で空中で戦う時間はあったけど、それの影響を受けてたりする?


 というか、使う時は来るかな? 空を飛ぶ方法は未だに聞いた事ないし、私が飛んでたらどう考えても騒ぎになるよね。

 1回試運転もしておきたいんだけど、どこで使うべきか……



「コスモス、ちょっといいですか?」


「ん、なぁにライブラ?」


「申し訳ないのですが、今日はもうログアウトしようかと思いまして」


「そうだよね。色々なことあり過ぎたもん、いいと思うよ」


「はい、今日はありがとうございました」


「うん、またね!」


 因みに【侵食】の不快感がほんの少しずつ流れ込んで来ていて、それを消化し続けるこの感覚が嫌なのもある。


 今日は休んでおこう。続きはまた明日……

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