第21話 殲滅の序章

 あ、病院型のダンジョンにあった宝玉。ということはここからダンジョンで間違いないのね。登録して……これは構内の地図? 『ご自由にお取りください』ってあるし1つ貰おう。

 行くべきはやっぱりボスの所なんだけど…………どこ? 大学なだけあって建物が多い。



「やっぱ広い所かな……」


「どうしたんだ、こんな入口で地図ばっかり眺めて。何か狙いでもあるのか?」


 20代前半くらいの男の人だ。胸と肘と膝に金属製の防具を付けてる。そういうのはまだ広がってないらしいし、それなりに上位の人なのかな?


「どちらさまでしょうか?」


「あーすまん、これだと完全に怪しい奴だな。俺はこのダンジョンをよく使うんだ。大抵は中に入ってから地図を見るのが多いんだが、入る前に見てたからな。だとすると何か狙ってる場所か相手がいるんじゃないかって判断だ。それならアドバイス出来るかもしれんと思ったが、どうだ?」


「そうですね、大体あってます。それでしたら、Lv上げに向いた場所と、広い場所がどこにあるか教えて頂けませんか?」


「広い場所……ってボスか、大丈夫か? 見たところ初期装備のままだし、1人だろ?」


「ある程度は戦えますよ、ここのボスってLv幾つなんでしょうか?」


「ボスは3ヶ所いるんだが、低くて20、高くて30だな」


「そうですか。Lv25なら余裕を持って倒せましたので、それなら大丈夫そうです。場所はどこなんでしょう」


「は……? マジか、良かったらでいいんだが何属性の魔法使ってるか教えてくれないか? 勿論答えなくてもいいんだが」


「手札は晒さない方がいいですが…………まぁいいです。魔法は使ってないです、双剣のみでやってきました。寧ろ魔法のスキルロール目当てです」


「…………すまん、理解が追い付かん。とりあえず戦えるのは分かった。じゃあ話そう」


「はい、お願いします」


「まずレベル上げだが、物理ってことなら……種類の多い第三棟、数の多い屋外運動場のどっちかだな。ボス場所は、大講堂、運動用ホール、第一棟屋上の3つだ。まず1体目の情報は……」


「あ、詳細は大丈夫です。初見で戦ってみたいので」

「そ、そうか。他には何かあるか?」


「いえ、十分です。ありがとうございました」


「なら良いが……ところで1つ良いか? その左目に巻いてるスカーフは何だ? 怪我でもしたのか?」


 あ、しまった。リルさんに返すの忘れてた。でも今あって助かってるし、とりあえず後でチャットしとこう。


「これは詳しくは話せませんが……今は巻いてると都合が良いんですよね」


「そうか、長々と引き止めてすまなかったな。それじゃあ俺も行くから、気を付けて」


「はい」


 リルさんにチャット送ったら、種類の第三棟から行くかな。




 ――着いた。危なかった。


 道中にはたまに魔物と遭遇して、何度か戦闘になった。外にいるのは既に倒したことのある弱い魔物しか居なかったし、危なげなく終わった。


 寧ろ危なかったのは辿り着けるかに関してだった。第三棟へ向かっていたと思ったら、出入口から見て反対側にある第五棟と第六棟の近くまでいたのだから。



 うん、どう考えても私のせいだ。私の方向音痴を遺憾無く発揮していたらしい。これもダンジョン敷地内では現在地のマークを出入口から動かさないミニマップ機能が悪い。

 それと、道案内をしてくれない《チュートリアル》も……


――《チュートリアル》機能に元々搭載されていないため、《チュートリアル》及びミニマップに過失は無いと判断されます――


 そうですかー、じゃあどの機能が悪いって言うのさぁ……


――《チュートリアル》ライブラの頭、もしくは性格が悪いと判断されます――


 ちょっと!? 誰の頭が悪いって? そもそも何でそんな口悪くなった訳?


――《チュートリアル》これまでの行動、言動、性格の合算の結果、この程度で問題無いと判断されます――


 そうか私のせいだったのか。というか《チュートリアル》さん、自意識が漏れ出てる気がするけど。スルーでいい?


 うん、スルーしよう、でとっととLv20にして居なくなってもらおう。というか出入口前で何やってたんだ私は。



 ここからが本番だろうし、このスカーフは外して、《恐怖の瞳》は解放しよう。よし、行こうか。



 廊下を歩いていたら、何かをひきずるような音が聞こえて来た。


 初戦は蛇ね。1mくらいで、全体が白くて目が赤い。なんか……カラーリングが私に似てる。《鑑定》。


□□□□□

慶兆の八咫蛇 Lv.16

HP:800/800 MP:8800/8800

耐性

火:50 水:50 氷:50 雷:50 風:0 地:0 光:50 闇:-20 物理:0

□□□□□


 すっごい魔法型。殺ろう、せいっ!


 短剣を投げて仕留めようとしたところ、すんでのところで避けられた。


 こっち見つめて……何? スピード勝負でもするつもり?


「キュイィィィ……」


 へぇぇ……そう。別に意思疎通なんて出来てないけどとりあえずこいつは殺そう。決めた。《追風・強》《閃撃》!


「死ねっ!!!」


「キュイィィ!」


 ちっ…………避けられた。ってどこ行くの!


 廊下の奥の方に逃げていったので追いかけることにしたのだが……


「サァァァァ…………」


 何、ゴキブリ?


「邪魔。死ね」……《命刈り》


――凶兆の蜚蠊を倒しました――

――255ネイを獲得しました――


 ゴキブリなんかに構う暇はない。蛇は……そっちね。《追風・強》。


「キュイイィィィ!」


 全く、逃げ足だけは一流だよ。あっそうだ、もしかして……《隠密》



「キュィィ…………キュイ?」


 なるほどね、こいつの動き方からして、私の動きを見てから動きを決めてる節があった。だから、姿を隠してみたら……予想通り、戸惑ってる。


 一瞬でも止まったのが間違いだったね。


「……死ね」


 左の短剣で頭を、右の短剣で胴体を床に叩き付けるように突き刺す。


「キュッ……!」


 よし。スッキリした。


――慶兆の八咫蛇を倒しました――

――908ネイを獲得しました――


 って、もう次が来たのね。次はカタツムリ? まあ何かはどうでもいいか。


「さぁ、全員殺してやりましょうか」

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