第20話 いざダンジョン…… ?
公民館に着いたけど、2人はまだ来てなさそうかな。
地図が使えるということもあり、予想より随分早く辿り着くことが出来た。
「どう説明しようか……」
今は片目を手で覆い隠しているけど、戦闘となるとそうもいかないのでちゃんと話さないと。それも隠すよりは認めてもらう方向で。
視界が半分になるのは厳しいものがあるから、どうにか説得したい所だが…………
「あ、ライブラさん!お待たせしました!」
来た。どう切り出そう。
「えっと、目どうしたんすか? 片手で抑えて隠して……それが相談事のことっすか?」
「前は目真っ赤でしたよね? 真ん中が紫…………そんなこと出来るんですね」
「えーっと、少々面倒なことになりまして……一言で言いますと。両目で相手を見ると弱めの恐怖状態にしてしまうと言いますか」
「「え?」」
「えっとそれって、呪いとかを受けたとかではなく……?」
「呪いではなくてスキルによるものなんですよね。それも常時発動型で」
「弱めの恐怖っすよね? 多少ビビるくらいなら大丈夫っすけど。リルは?」
「1度受けてみないと分かりませんが、弱めってことなら。それにライブラさんですし!」
「そうですか……1回試してみますか?」
「そうですね、お願いします」
意を決して目を開いた。
「!? …………ちょっ、これは…………」
「ひぃあああぁぁっっ!!!!」
そしてすぐ閉じた。どうやら駄目だった。リルさんに関しては、どうしよう。へたりこんで涙目だ。
申し訳なくなって、目を閉じた上で謝罪することにした。
「あの、本当にすいません。片目なら何も起きませんし、ダンジョンの場所だけ教えて頂ければ大丈夫ですので……」
「あ、あの私は大丈夫ですから!」
「そうっすか……片目は大丈夫ってことなら、移動中は塞いで、戦闘時にだけ見ないようにするってのは…………」
「いえ、互いに戦闘中不安要素があると支障が出かねませんので。すいません、もう少し効果は弱いものだと思っていたんですが……」
「な、ならダンジョンまでは一緒に行って、そこからは別行動にしましょう!」
「そうですね、それがいいと思います。わざわざ誘って頂いたのに申し訳ありません」
「気にしないで大丈夫っすよ、じゃあ早速行きましょうか?」
「あの……ごめんザラ、ちょっとだけ待って……」
「どうしたリル?」「どうしましたリルさん?」
「さっきビックリして腰抜けちゃいまして……」
「あぁ……分かった」
「あの…………本当すいません」
リルさんが復活するまで待ち、私達はようやく出発することにした。
「それにしても、さっきは本当びっくりしました」
「まさか俺もあそこまでビビるとは思わなかったっすよ。怖い物に耐性あるはずなんすけどね」
私は2人の案内でダンジョンに向かいながら雑談をしていた。因みに今はリルさんにスカーフを借りて左目に巻いている。
「私は恐怖を受けないというか受けられないんですが、この恐怖ってどんな感じなんでしょうか?」
「えっと……いつでも命を刈り取られ得る状況にいるような、死の恐怖って感じっすね」
「そんな感じですね。抗おうとしても抗えない感覚で、見られてる間体の震えが止まりませんでした……」
そこまでかぁ……弱でこれなら、中と強を人間に向けたらどうなってしまうんだろう。
それにしても何でここまで、ゾンビはここまでじゃ…………あ。
考えれば当たり前だった。ゾンビは死んでる上思考能力も乏しそうな魔物だった。恐怖という感覚に非常に鈍感なのも当然だ。
「それに別の意味でもびっくりしました。まさかライブラさんみたいな人に、ここまで怖がるなんて思わなかったですよ」
「そうっすよ。年上の綺麗な人だなぁ、って印象を完全に上書きされてあそこまで恐怖一色になるとは思わなかったっす」
「え?」
「えっと……ライブラさん、どうしました? 私何か変なこと言いました? それともザラが……」
「何か気を悪くしてたらすいません、でもどこか悪かったっすかね……?」
「えーっと年上って言うのは……お2人は同い年ですよね」
「はい」「そうっすね」
「お2人の年齢と、私が何歳に見えるか教えて頂けませんか?」
「えっと、私達は17ですけど」
「18とかだと思ってたんすけど違いました?」
「私もそれくらいだと……」
マジか……どうりで2人共ずっと敬語で話してた訳か。年下相手にも、初対面なら敬語で話すタイプかもしれないけど。
「私15歳ですよ?」
「嘘おぉぉぉ!?」「えぇっ、マジっすか?!」
そこまで驚くか。それとザラ、あなたに関してはさっき両目で見たときより驚いてない?
「マジっすか、いやマジか。雰囲気とか振舞いで完全に年上だと……」
「綺麗で落ち着いた感じの大人びた印象だったので……本当に15には……」
「そういうことなので、タメ口で話して下さって大丈夫ですよ」
ザラに関しては元から敬語危なかったし、普通にしてもらった方が私としても気が楽なんだけど……
「そう……っすか? それなら俺は話しやすいけど」
「私無理です……ライブラさんにタメ口は違和感が…………」
「さんも付けないで構わないですよ?」
「それも無理ですよ……ライブラさんはライブラさんと呼ばせて下さい。何ならライブラさんも私達にタメ口で話して下さい」
「いえ、年上の方にそんなことは……」
「うぅ、それを言われたらこれ以上言えないですよ……」
「えっと、もう着くぞ?」
「そうですね、それじゃあここで別れましょう」
「ありがとうございます。お2人も頑張って下さい」
「はい! ライブラさんも頑張って下さい! あと、いつかタメ口で話して下さいね!」
心の中ではあーだこーだ言ってるけど、実際にタメ口で話すのは苦手だから、正直このタイミングで別れられて助かった。
これは大学、だよね? ダンジョンっていうのは、この門からってことかな。どうしよう、ある程度話は聞いてたけど分からない。2人はもう奥に行っちゃったし、別れる前に聞くべきだったかな…………。
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