第9話 才能
明日から夏休み、つまり今日が今学期最後の日である。そういう訳で、成績通知表が配布された。各々一喜一憂しているようだが、かくいう私は……
オール4。最高では無いけれどそれなりに高い部類に入る。
中学生の頃からそうだったのだけど、正直授業の内容に興味は湧かない。だけど私は物覚えがかなり良い方らしく、授業を聞いて1度本を見返せばそこそこの成績は取れている。5に関しては興味が無いので狙うつもりも無いけれど。
「はあぁぁぁ…………」
成績返却後の空き時間、前の席に座っている秋川さんが物凄い溜息をついている。そこまで成績が悪かったのか、あるいは別の理由があったのか、気になって聞いてみる。
「秋川さん、そんな溜息ついてどうしたんです?」
「月華さん…………成績がね、今までとまっったく変わらないの……」
「変わらないって中学生の頃からですか? この高校入れる程度なら悪くないと思いますが」
「高い低いが問題じゃないの。実はね、ズラーーっとオール3のままなの。数学以外」
「数学以外。ですか」
確か数学のテストは毎回満点だったと話していた気がする。でもそれで何か……?
「数字に関することなら大得意なのに、それ以外は全然なの」
「数字……ですか? 数学ではなく?」
「うん、数字関係は凄い得意なんだよ! 自慢出来るくらい! 何も使わずに20分くらいなら誤差1秒以内で計れるし、身長も1cmもずれずに当てられるよ。月華さんは161cmだよね?」
当たってる。もし本当だとしたら物凄い才能じゃないのかな。彼女の性格的に適当に言ってたり嘘だったりではないんだろうし。
「1つのことが秀でているというのも、素晴らしい個性だと思いますし。気にしないでいいんですよ」
「ありがとう月華さん……。そういう月華さんはどうだったの? って凄い、オール4! 月華さんって多才だねぇ……」
中学生の頃はオール4に対して「器用貧乏」と言われたことがあるのだけど。まぁ物は言いようというやつだね。うん。
「そうだ、FIWの方では何するの? 会えるのも暫く後になるけど」
「強くなるということとやりたいことをする感じでしょうか。まだ何が出来るか、分かってないことも多いので」
「出来ることって言ったら色々あるよ。材料を手に入れたら、ゲーム内通貨で道具を手に入れて加工して物を作ったり。他にもお金を貯めて家を買うなんてこともできるし、リアル×ファンタジーって銘打ってるだけに、ダンジョンもあるみたいだし」
「ダンジョンですか……それって洞窟みたいな所に魔物がいるような?」
「魔物がいる所なんだけど、場所は色んな所に出来るんだって。工場とか雑居ビルとか。日本に洞窟なんてそんなあちこち出来るものじゃないからね」
それは何と言うか……不思議な感じだ。でも面白そうだし、一度行ってみてもいいかもしれない。
「面白そうですね、探してみてもいいかもしれません」
「おぉ……結構血気盛んだね。とにかく、本当に何でも出来るから好きなことするといいと思うよ! あ、それと夏休み中に何かあったらチャットか電話してね!」
「そうですね、色々ありがとうございます」
部活には入ってないし、時間は有り余ってるから、夏休みの間はFIWに入り浸ってしまってもいいかもしれない。
それに、やりたいことが幾つも増えたし、この先が楽しみだ……
さて、今日もログインっと。って……
「外だ」
昨日は外でログアウトしたということをすっかり忘れてた。昨日色々狩ってからステータス見てなかったし確認しておこうかな。
□□□□□
ライブラ Lv.9
HP:1080/1080 MP:250/250
耐性
火:0 水:0 氷:0 雷:0 風:0 地:0 光:0 闇:0 物理:0
スキル
《鑑定》《インベントリ》《チュートリアル》
《追風・中》《跳躍・中》《治癒・弱》《静音・弱》《隠密》《首斬り》《暗殺・中》《閃撃》
□□□□□
えーっと、増えたのが《閃撃》で効果を《鑑定》っと。
□□□□□
《閃撃》
MP:10 CT:10秒
効果:5秒間対象の攻撃速度増加(中)。
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言ってることすごいシンプルだけどかなり良さそうなスキルだね。この双剣中々いい重さで素早く振りやすいし、今の戦い方にも丁度いいし。
HPは…………中々伸びてないというか、伸びる値はLv1につき10で固定なのかもしれない。MPはバラバラだし、それぞれ何か理由があるんだろうね。
今までの戦い方を振り返ると、大抵一気に攻めて一瞬でケリをつけている。そこから見るに、戦い方にスキルは寄っていってる感じなのかな? 人それぞれかなり個性が出てきそうね。
とりあえずステータスも確認したし、今日も辺りを散策しつつ狩る相手でも探そうかな。
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