第8話 興味の源
次の日、高校の教室で午後の授業が始まるのを待って席に座っていた。すると、突然莉桜に話しかけられ、空いていた前の席の椅子を回して座る。
「月華さん月華さん! FIW始めた? どう?」
「秋川さん。昨日はキャラクターを作って半日程やってみましたが、中々楽しかったですよ」
「ほんと?! 私から勧めたのに、つまらなかったなんて言われちゃったらどうしようかと思ったよ。でも楽しかったなら良かった! ところでそこでは何してたの?」
どうしよう、流石にいきなり人を殺してまわってたとは言えないし……
「辺りを歩いて回ったり、魔物を倒したりしてみましたよ」
「え、すごい! 月華さんゲーム上手だったんだ。私は中々スキル当てられなくて大変で……」
もしかしてスキルを使って攻撃したと思われてる? でも武術諸々の経験は高校入って以来、誰かに話したこともないしね。
「そうでした、秋川さん」
「ん? なぁに月華さん?」
「スタート地点を47都道府県から選べたと思うんですが、どこから始めました?」
「あ! それ私も聞こうと思ってて。私は家の近くにならないかなぁ、って思って京都府にしたんだ。結局全然知らない所だったんだけど」
「そうでしたか……秋川さんがどこにするか考えて東京都にしたんですが、違ったみたいですね」
「そっかぁ……じゃあゲーム内で会えるのはまだ先かぁ。じゃあこうしようか、次会う時に勝負しよう!」
「勝負ですか?」
「うん! まだ会えるまで時間かかるでしょ? だから次会う時にどっちが強くなってるか勝負! どう?」
「勿論ですよ。その勝負受けて立ちましょう」
「うん、約束ね!」
そう返事をすると、莉桜は嬉しそうに微笑む。
「ふふっ、嬉しい」
「どうしました?」
「やっぱりFIWを勧めて良かったなって思ってね。だって月華さん楽しそうだったもん」
「そう、ですか?」
「うん! 月華さんって高校入学した時から静かだったでしょ? 最初は控えめな人なのかなって思ったんだけどね、よく見てるとなんだか何にも興味が薄くて退屈してるように見えてね」
隠そうとしてる訳では無かったけど、退屈だと思ってたことは気付かれてたのね。
「ずっと月華さんのこと気にしてたんだよ。それにね、スタート地点選ぶ時に私のこと気にしてたって言ったでしょ? だから私の月華さんへの関心が返ってくれたみたいで嬉しかったんだ」
「そうだったんですか、ずっと気にしてたというのは……」
「あ、変な意味じゃないからね! 友達としてね!」
莉桜がそう言ったところで授業が始まる予鈴のチャイムが鳴り、ガタンと音を立てて立ち上がった。
「もう授業始まっちゃうしまた後でね!」
「そうですね、また後で」
今日も帰ってきて早速FIWの世界にログインする。
ログインして初期拠点に出た私は、外に出る前に運営からのお知らせとメールの類を確認したが……
「何も無い」
昨日のあの闇に関してイベントか不具合かの情報があるかと思ったが予想に反して全く情報が無かった。
その上、今日の放課後に莉桜にもそれとなく聞いてみたが、特に何も知らないようだった。
「あれが正規の魔物だって言うの……?」
毎晩あれが出てくるのだとしたらクソゲー待ったナシなのだけど、流石にそんなことは無いでしょう。
だとすると出る理由があるのだろうけど、1人で考えても分かる訳もなく……
「考えてもしょうがないし外行こうかな」
そうして私は昨日に引き続き、あの闇に出会うことも無く、魔物狩りとPKを丸一日楽しんだ。
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