二 はじまりの日(7)
幸間は〈三色旗〉のチーズケーキと温くなった珈琲を飲み干すと、晴彦の呼んだ辻馬車が到着するなり、早々にお暇してしまった。患者が待っているから、と微笑んで、最後に令人に
鏡一郎は令人の顔を無遠慮に
「ふうん。君、自分の
「え……」
「僕は君を気に入った。生い立ちから何まで……
令人は何も答えなかった。鏡一郎はやはり嬉しそうに微笑み、天板に手をつき、身を乗り出した。今度は高久の守りがない為に鏡一郎の手はやすやすと令人の
「触れられると思ったかい? 僕は未成年の男女には手を出さないと決めているからね。でも、触れたいくらい美しい魂だ。顔だけではない。心までもが美しいなんて、最高だ。兄の為に命を
令人の目が戸惑いに揺れ動く。
「僕は小説家だからね。人の心の
鏡一郎は手を引っ込めて座り直した。
「……だが、それでも
何も言えずに哀しそうな表情をする令人を前に鏡一郎は優しい笑みを向けた。
「これは、本当の事情を知らない、君を心配する大人の言葉として心に
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