第6話 ニートのトラウマ

今日は私の歓迎会。


断れるはずなくて、渋々来てみたが、誰も私を歓迎するつもりはなかった。




みんな酔っ払い出したころだった。




「花宮優姫!お前は名前だけは華やかだよな。お前、男と付き合ったことあんのか?」


「先輩やめてあげてくださいよ。先輩酔いすぎです。」




…時が止まった。


聞き覚えのあるセリフ。


鼓動が早くなった。


なんか言い返さなきゃ。なんか言わなきゃ。


そう思うと汗がじっとり出てきた。








前に勤めていた会社での飲み会でのことだった。


私の直属の部下の仕事の成功を祝う飲み会だったので、参加した。


そこで起きたことと全く同じだった。


私の一つ上の上司である柴田尚が酔っ払ってそんなことを言った。そして、焦った私の直属の部下はフォローしようとした。


私はいつもなら、軽く言い返せたかもしれないのに、そこでは何も言い返せなかった。




だって、柴田尚が好きだったから。




そのことは何度も夢に見るようになってしまった。私にとってトラウマなのだ。






柴田尚のことは忘れなければならない。


私は変わったんだ!


もう前の私とは違う!


言い返せばいい!軽く受け流すように。




「部長ったら、よくお分かりで!私の母ったら、つける名前を間違えたんです!そのせいで28年間彼氏なしです!笑っちゃいますね!」




思ったより大きな声が出た。


周りは静まり返った。


スベった。やばい。


と、思った瞬間、大笑いが起きた。


「なんだよ。本当に彼氏なしか。」


「期待通りの結果だな。」




良かった。これでいい。これで。




「なら、僕が彼氏になります。じゃあ、僕、花宮さんお持ち帰りするんで!」




は???




何が起きたんだ?

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