第5話 ニート復職
私は、動き出さなくてはいけないという強い使命感を感じた。
何度も蘇る芦田光の言葉に勇気をもらい、正社員になれるところを探し回った。
それから、程なくして、一本の電話がきた。
「芦田光さん、採用です。」
あまりにも簡単すぎはしないか。
こんな簡単に復職できるものか。
不思議に思ったその気持ちはすぐに消えることとなった。
短い間だったが、お世話になったコンビニを去るのはなんだかさみしかった。
芦田光は悲しそうな顔をした。
「また、飲みに行こうな?」
そう言って別れた。
私が勤めることとなった会社はとても小さい会社だった。以前勤めていた会社とは比べものにもならない。しかし、私はやる気に満ち溢れていた。
「おはよう。早速だが、君、コーヒーを淹れてくれないか?」
「え?あ、はい。」
そのやる気は長く持たなかった。
私の仕事は雑用だった。
あまりにも簡単に採用されるものだから、なんかおかしいと思っていたが。
そして、最悪なことが起きた。
ニートだったということがほぼ全従業員に知れ渡ってしまったのだ。
それからというもの、若い女子社員たちは私の愚痴をひそひそと言うようになった。
怒られる時も「これだから、元ニートは!」と言われるようになった。
1週間が経ち、そんな毎日に疲れを感じた私は、久々に芦田光に電話をした。
「もしもし。どうしたの?」
「あ、忙しいのにごめんね!」
「ううん。忙しいのは優姫のほうだろ?」
「あ、うん。なんか、芦田くんと話したくなって。」
「そっか。俺も優姫と話したかった。」
「嘘だ!」
「ほんとだよ!優姫がいなくなってからすぐに、冴えない若い男がアルバイトに入ってきたんだけどよ、そいつが全然使えねぇんだ。」
「そっか。それは大変ね。わ、私もさ、ニートだったことバレちゃって…結構大変なの。」
「優姫!そんなことで落ち込むな!嫌なことされたら俺に言えよ!」
「うん。ありがとう。」
やっぱり芦田光と話すとスッキリする。
明日も頑張ろう。
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