第30話 第三更生施設の生徒達

《東京都内》


 新人大会を明日に控えて、10人は宿泊施設へと到着していた。大会までの期間、大世門でレイカの指示の元、お互いの連携を深めながらこの日までやってきた。


 引率には小久保先生がついてきており、明日の開会式までは自由時間となる。


「じゃあ、この後は自由時間なんだけど異能力者とわかるように外に出る際は制服を着用して出てくださいね。なるべくトラブルに巻き込まれないように。頼みましたよ。」


「は、はい。」


 宿泊施設のエントランスに集まった面々は、これからどうするかを話し合っていた。


「仙台組の3人はいつの間にかいなくなってるし、みんなでどっか行くか?」


「私は少し用事があるから、、。」


 そう言ってレイカは1人いなくなる。残された6人は話し合い街に出ることに決めた。



《渋谷》


「はあーー、ここが渋谷か初めて来たな。」


 リュウジは田舎者のようにキョロキョロしながら辺りを見回す。彼のリーゼントはここでは完全に浮いてしまっている。


「リーゼントが注目されてるのは確かなんだけど、、そのなんていうか、なかなか異能力者は浮くみたいね、ここは、、、」


 この街には異世界島のような異能力に対する最新技術が完全に配備されておらず、異能力者に対する目線も辛いものがある。


「久しぶりに異能力者がマイノリティだと、感じさせられるな。」


「エンタメとしては好きだけど、巻き込まれたくないって人は多いわよね。」


「あんまり、観光の気分じゃないな。あそこの喫茶店に入ろうぜ。」


 6人は近くにあった喫茶店へと入る。どこにでもあるチェーン店であり、普段は人が多くいそうな店であるが、今は異常に客が少なかった。


ギャーーーワーワーギャーーー

ガハハハハハハハ


「マジで久しぶりに外に出れたから空気がうめぇな。」

「ナンパ組は上手くいってんだろうな?」

「しけた女連れて来たら殺すからな。」

「ていうかJOKER、どこ行ったの?」

「知らね、いつの間にかいなかったぞ。」


 その原因は店の1番奥で騒ぎ立てる集団であることは明白だった。7人の男女が机に足を乗せたり、店内でキャッチボールするなどなんでもありの状態で他の客達を追い返してしまっていたのだ。


「何だ、あいつら?」


「待って、あの制服確か『第三更生施設』の。」


 彼らは囚人服のような制服を着て左の腕章には『三』の文字が印章されている。


「ちっ、俺達と同じ考えだって事か。」


 ダイハチとリュウジがその集団を睨むと、向こうもヒサシ達に気付いたようだ。


「おい、KING! あれ見ろよ。」


「あぁん?」


「おっ、あれは天王山学園様じゃねぇか。」


「何あの髪型、ダサっ。キャハハハハハハ。」


 第三更生施設の男子生徒1人がヒサシ達へ近付いてくる。その男は他の奴らを見ずにテレスに向かって一直線に来て、無理矢理手を引っ張った。


「さすが天王山様、こんなエロい金髪囲ってんのかよ!こっちに来て一緒に遊ぼうぜ。

 この後他の奴らと合流してクラブ行くんだよ、一緒に来るよなぁ。」


「イタッ、やめてくだ、、、」

「ああん!!?」

「おい、こら!」


 テレスを無理矢理引っ張ろうとする手をリュウジが握り引き離す。それに対してあちら側の生徒達も腰を上げ近づいて達がヒサシとダイハチが間に入って睨み合う。


「やめろ、JACK。この服着てる限りコイツらには勝てねぇよ。こっちに戻って来い。」


「チッ。」


 リーダー格のようなKINGと呼ばれていた大柄な男の命令で第三更生施設の生徒達は後ろへ下がっていく。それと入れ替わりにKINGはヒサシ達の前へと出てきた。


「プッ、JACKダサっ笑」

「うるせぇQUEEN!」


「すまねぇな、うちの奴らが。知ってると思うが俺達第三更生施設の学生は元犯罪者。この制服は異能力を抑制するように出来てて、アンタ達には勝ち目がないんだ、どうか許してくれ。」


「じゃあ、もっと大人しくしてたらどうだ。周りがビビらせて、店に迷惑かけて異能力者の評判落としてんじゃねぇぞ。」


「しょうがねぇだろ、九州の田舎から久しぶりに外に出れたんだ。ちょっと、はしゃいじまったんだよ。」


 全く悪びれた様子もなくリュウジと顔を突き合わせるKING。その態度が人を馬鹿にしたようなものだった為リュウジの怒りも収まらない。


「まぁ、いいや。本番は明日だ。精々他の奴らにやられるなよ。俺達がテメェらみてぇなエリートはぶっ殺してやるからな。

 おい!全員出るぞ。」


 KINGの声掛けで全員が店を後にする。その後ろから何か我慢できずにダイハチが声を掛けた。


「おい!! お前らの中に本当に【防人タケシ】がいるのか!!」


 KING達はその名前を出された事で雰囲気が変わり全員が怒りの表情で振り返った。


「俺達は本名隠す為にコードネームで互いを呼んでんだ、気安くその名前を呼ぶんじゃねぇぞ、コラ!」


「アンタなんかに答えてやる義理はないよ。」


 そのまま第三更生施設の生徒達は人混みに去っていく。それを見ていたヒサシ達は、


「なんか観光気分じゃないな、帰るか。」





《東京都内某所》


 レイカは夜景の見える公園で1人佇んでいる。その後ろから第三更生施設の制服を着た男が近づいてきていた。


「レ〜〜イカ。」


 そう言い、男は後ろからレイカの胸を鷲掴みしたのであった。


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