第29話 戦う準備
《研究棟開発室》
「新人大会の選考会はうまくいったんですか?ヒサシせんぱ〜い。」
【針間矢アルファ】が超電磁銃の調整をしながらヒサシに話しかける。ここはアルファの開発室であり、新人大会に向けてヒサシの武器調整を行なっていた。
「まぁ、良さそうなのを東堂がしっかり見繕ってるみたいだぞ。俺達はまだ、どんな奴が選ばれるのかわかってないがな。」
ヒサシは開発室の隅の方にある失敗作を勝手に扱っている。何に使うかもわからないようなハイセンスなものばかりだ。
「あんまり、扱わないでくださいよー。
よしっ、できた!。これで魔力伝達構造もアップロードされて威力も上がっているはずです。さらに悩みの近接戦闘用に単分子カッターも準備してますよー♡」
「すまんな、アルファ。使い魔頼りじゃなくて、俺自身の戦闘力が上がらなきゃ、この先戦っていけないからな。」
「いえいえ、私に出来る事があったら何でも言ってください。先輩の為なら一肌でも二肌でも脱ぎますよ。なんなら今この場で、あんなことやこんなことを、、、きゃっ♡」
「はいはい、どうもどうも。」
白衣を脱ぎ、シャツのボタンを取る仕草をするアルファの頭をヒサシは軽くチャップした。アルファも舌を出して反省した素振りだけ見せる。
ヒサシは武器を受け取り周りを見渡すと、ある機械が目についた。
「なぁ、あんなのあったか?」
「ああ、あれは今研究している魔物をコントロールする為のドローンです。」
「えっ? そんな事できるのか?」
「理論上はまぁ。国からの指示で誰でも先輩みたいな使役士になれるようにと思って作ってます。まずは敵意の薄い魔物を中心に実験中ですけど、なかなか上手くいかないですね。」
「そんな事してどうするんだ、、」
「私達は戦う力がありますけど、世界の大人は異能力に恐怖心を持っているものです。未知の力をなんとか管理したいというのが本音でしょうね。」
「そういうもんか、、まぁ、あんまり頑張りすぎるなよ、アルファ。今日はありがとな。」
「はい、またいつでも来て下さいね。」
ヒサシは開発室から出て行く。アルファはそれを手を振りながら見送り、ヒサシがいなくなると表情が暗くなり、ある場所へと歩き出した。
「先輩、、、私の事嫌いになるかな?」
アルファが開発室の隠し扉へと向かう。そこは開発途中の機械が数多く並ぶ場所のようだ。その1番奥には、あの一つ目蜘蛛らしき機械の実験が進められているように見える。
《視聴覚室》
「初めまして、1-B所属の【不森エル】。弓術士よ。【クリスタルエイト】の足手まといにならないように、やらせてもらうわ。」
「ども、同じく1-Bの【重田ジュウゴ】重装士です。僕とエルさんはレイド君と仙台の頃からのチームメイトで連携なら任せてください。クリスタルエイトに負けないように頑張りますから。」
「ちょっと待て、クリスタルエイトって何だ?」
ここは高等部の視聴覚室。レイカが新人大会に出場するメンバーを集めて顔合わせを行っている。そこで聞き慣れない単語が連続で出てきた為、ダイハチは思わず自己紹介を止めてしまった。
「クリスタルエイトは貴方達の総称よ。クリスタルフラワーの功績やバットマン事件解決と、この世代のトッププレイヤー8人を世間はそう呼んでるわ。」
「マジかよ、、なんか生徒会レジェンドみたいでカッケーな、ヒサシ!!」
ダイハチは大喜びしているがヒサシは苦笑いしかできない。特に仙台組の前では。
「はいはい、そんな事話す為に読んだわけじゃないわよ。とりあえずこの8人と監督、サポートの私達含めて10人で新人大会は出場するわ。
今からやる事は、もう他の地区の予選会は終わってて、映像をひまわりが生徒会室から取りに行ってくれてるの。それをみんなで見ましょう。」
「しかし、俺達は入学からめちゃくちゃ強くなってるし、まぁ負ける気は正直しねぇよな。」
リュウジは自信満々に言う。それに対してエルが冷静に答える。
「自惚れない事ね。確かに貴方達は物凄く強いけど、強い人が全員天王山学園に来ている訳では無いわ。特にユーリシアン女学院の【仙道寺りりり】はあの仙道寺ららかの妹。ハンパなく強いって噂よ。」
「へっ、忠告どうも。」
エルとリュウジは一触即発の空気になる。ジュウキとテレスが止めようとするも2人はバチバチに睨み合う。
「たっだいまーーーー!」
そこに明るく【轟ひまわり】が入ってきた。全員が良かったと、胸を撫で下ろす。
「じゃあ、映像を見ましょう。各代表決定戦の決勝戦が編集されてと聞いてるわ。」
『映像流し中』
「東京代表は圧倒的にユーリシアンか。」
「北海道代表は氷雪系が多いわね。」
「四国のあいつ、中等部時代有名だったよな。」
「東海代表はチームワークが桁違いだ。」
それぞれ動画を見て感想を述べる。一筋縄ではいかなそうな面々に、さっきまでのお気楽なムードは無くなっていた。
「東北代表は仙台星欧学園か。」
「レイド、ここって、、」
「ああ。」
仙台星欧学園を見た時に仙台組の顔付きが変わる。どうやら訳ありのようだ。しかし重い雰囲気を感じて誰も話しかけず映像は進んでいく。
「最後は九州代表か。」
次に九州代表の映像が流れる。そこに映った内容は衝撃的なものであった。
「こんなのアリかよ!」
「一応あの施設もルール上は学園扱いよ。」
「そんな事言ったって、なんで第三更生施設が九州代表なんだよ。あそこは犯罪者達が行く所だろうが!!どういう事だよ、東堂!」
リュウジの叫びが視聴覚室に響く。全員がレイカに説明を求めるかのように視線を送るが、レイカは目を見開き驚いて、映像に釘付けになっている。
その映像の中には囚人服の様な服を着た生徒達の中心に、一際大きな拘束具を付けられた長身の男が立っている。
「
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