第28話 選考会

《大世門》


「"マッスルチョッッッッップ"!!」

「"マジカルウェーブ"!!」


「おい!グリズリーがいたぞ!狩れ!!」

「新種の魚よ、スキャンして解析してもらって。」


 大世門の中には多くの生徒達が慌しく入り乱れていた。新人大会出場を目指す生徒が4人1組で探索に出ている。


 その姿を監督であるレイカがヒサシ、レイドと一緒にモニター室から観戦していた。


「これでよかったの?黒崎君。」


「ああ。正直な話、俺達と他の奴らは実力が離れ過ぎていると思ってる。どんな競技で競い合うのかわからないが、個人の戦闘力よりも俺達をサポートする力が大事だと考えただけだ。」


「なるほどな。」


「一理あるわね。そうなるとあの2人なんてどうかしら? B組だけど凄くいい動きしてるわ。」


 レイカが指差したモニターには弓使いの女子性徒と大きな鎧を着た男子生徒を中心にグリズリーと相対している場面であった。


 鎧男がグリズリーの注意を引きながら他の生徒がダメージを与え、弓使いが後方から寄ってくる魔物を撃ち落としながら指示を送っていた。


「あれ? あの2人どこかで、、」


「俺の仙台の時のチームメイトだ。」


 ヒサシはレイドといつも一緒にいる2人の事を思い出す。仲が良いなと感じていたが元チームメイトとは知らなかった。


「あら、もしかしてこの選考会を提案したのは、あの2人の為? 案外可愛い所あるのね。」


「好きに言ってろ。」


 ヒサシは違和感を感じた。レイドとあの2人、現在4人1組でチームを組むことが推奨されている中、この組み合わせだとヒーラーがいないと思ったのだ。


「なぁ、あと1人は?」


「死んだよ。お前が生徒会レジェンドと呼ばれるキッカケになった『東北大進撃』でな。」


「!? す、すまん。」


「気にするな。確かに最初の魔力測定で手を抜いた事を知った時、もしかしてあの時も本気を出してなかったんじゃないのかと思ったが、、

 今、こうして接してみてそんな事するような奴じゃないと思ってる。それに結局は弱かった自分が悪かっただけだ。」


 そう言いながらレイドはモニター室をあとにする。残されたヒサシとレイカは顔を見合わせる。


「地雷踏んだかな?」


「そんな事ないと思うわよ。異能力を手に入れて、それぞれみんな良い事や悪い事を経験してきているのよ。それは今まで誰も経験したことの無い事だったりするから人にも言えずに苦しんでる人もいるわ。だから自分で解決するしかないのよ。」


「東堂もあるのか?」


「もちろん、、あなたもでしょ天城君。」


 そう言ってレイカはモニターに目を戻し、メモを取り始める。ヒサシはバツが悪そうにコーヒーを啜った。



ーーーーーーー

《東京某所》


 とある会議室で2人の女子高生が対面に座っている。1人は天王山学園生徒会会長:和合トモエである。


「これで競技は進めていく。そこでだ、会場を君の学園の敷地にある、『あそこ』を借りたいと考えているのだが?」


「ふふ。滅多にない貴方からの頼み。本当は断りたい所ですが、、」


 トモエの対面にいる女子高生が不敵に笑う。手には宝石があしらわれた扇子を持ち、髪型はロールで巻かれたロングヘアー、制服は国内最大のお嬢様学園である『ユーリシアン女学院』のものを着用している。


「この仙道寺ららかの可愛い後輩達が勝ち進む姿を、悔しそうに見つめる貴方が見られるならこの学院の敷地全てを新人大会へお貸ししますわーーー。オーッホッホッホッホ。」


 典型的なお嬢様口調に高笑い、トモエはこのユーリシアン女学院生徒会会長兼理事長の【仙道寺ららか】が非常に苦手であった。


「すまない、ららか君。去年は天王山学園を会場にした事に異議申し立てを行った為、今回は会場をそちらに貸してもらう運びになった。

 私の後輩達の活躍の場をわざわざ貸してくれるなんて、感謝しかないよ。」


 言葉の端々に嫌味を感じるような言い方をされ、ららかは顔をヒクつかせながら、それでも笑顔を保っている。


「いえいえ、天王山学園も貴方が有名なだけのワンマンチームですのに出場出来ないのは大変ですわね。精々決勝に残れるように祈ってますわーー。」


「ハハハハハハ(ひーちゃん、絶対勝ちなさいよ。)」



 

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