第22話 轟イバラ
《天王山学園》
高等部屋上に現れた、ひまわりに【イバラ】と呼ばれた女は余裕の笑みを浮かべながら立っている。胸にはコウモリのペンダントをつけているが、クレアや他の奴等の物とは違う金色に輝いていた。
「なんなんだあの女、、バットマンの幹部しか付けられねぇペンダントを、、どうして?」
サングラス男もイバラの登場に驚き言葉を失っている。それを見てヒサシは違和感を覚えた。
「(コイツらは、ひまわりの姉の存在を知らなかった?どういう事だ?)」
ひまわりは背中に魔法の羽根を出して、校舎の屋上へと飛び上がる。そこでイバラと一対一の格好になった。
「何をしに来たの姉さん。」
「貴方に姉さんと呼ばれる事より不快な事はないわ。私はバットマンの幹部として下の者の働きぶりを見に来たのよ。」
「姉さんが欲しいのは死にかけた人が蘇った力の源。クリスタルフラワーとその研究成果でしょ。」
「、、、。」
ひまわりの言葉にイバラの顔は歪む。険悪な雰囲気が漂い、この2人の間に何か大きな溝がある事を感じさせる。
「初めは本当にアルファ社の妨害が目的だったんでしょうけど、姉さんの元に見過ごせない情報が入った。クリスタルフラワーの力でヒサシ君が瀕死の状態から蘇った事。それで姉さんは途中から目標をこの研究棟に変えたの。バットマン本部は姉さんが目標を変えた事を知らないんでしょ。だから援軍も来ない。
でもね姉さん、あの力を使ってもケンちゃんは生き返らない、、」
「お前があの人の名前を口にするな!!!!」
ケンという名前にイバラは過剰な反応を見せる。今までの余裕のある素振りからは考えられない激昂を見せ周囲の人間も飲み込まれる。
その横でサングラス男が仲間の1人に顎で研究棟を指す。すると2人が走り出し仲間の異能力で壁をすり抜け研究棟に入って行った。
「しまった!!」
全員が突然の出来事に慌て研究棟へ行こうとするもヒサシが制止する。
「研究棟は管理IDを持ってる俺しか入ら事ができない!俺が入ってくるから皆はここを頼む。」
「わかった、任せろ。」
ヒサシは男達がすり抜けた壁の別方向に走り、入り口から中へ入っていく。その様子を見ていたイバラが不敵な笑みを浮かべながら告げる。
「まぁ意外と使えるのね。可愛い捨て駒の為に少し時間稼ぎをさせてもらいましょう。"死ノ
《研究棟内》
「くそっ、何だここは!!」
サングラス男とすり抜け男は混乱していた。中に入った途端周りの非常扉が全て閉まり進めるのは一本道のみ。異能力を阻害するバリアも張られておりすり抜けもできない。
中の情報は事前に手に入っておらず、中に入り手分けして探すつもりだった為、今何処に向かっているかわからないまま彼らは走っていた。
そんな様子を監視カメラで覗いている少女がいる。白衣の下には天王山学園中等部の制服が見え、楽しそうに電子パネルを操作している。
「ヒサシせんぱ〜い、大丈夫って言ってたのに入ってきてるじゃないですかー。しょうがないなぁ、もう、可愛いんだから♡」
サングラス男達は走り続けていると目の前に違和感を感じる。誰かいる気がするのだ。よく見ると目元までの大きな魔女の帽子を被った少女がいる。
「何だテメェは! まぁちょうどいい、クリスタルフラワーがどこか教えろ、コラァ!!」
サングラス男の合図ですり抜け男がナイフで襲いかかる。すると彼女を中心に3人の足元に魔法陣が現れた。
「な、何だこれは。」
「あの人が呼んでる。」
その瞬間転移魔法が発動し3人は別の場所へ飛ばされた。
《第三実験施設》
そこは真っ白で何もないホールのような場所。周りの壁にはアンチバリアが張られている。そこにはサングラス男とすり抜け男、そして帽子を被った少女しかいない。
「どうなってんだよ、さっきから。」
「なんかやべーっすよ、ボス。」
2人が混乱していると目の前の扉が開く。そこからヒサシが現れ帽子の少女の頭を撫でた。
「ありがと、【小高】。よしよししてやろう。」
「やめて、帽子が崩れる。」
そう言って帽子の少女はまた転移魔法で消えてしまった。ヒサシの登場にサングラス男の怒りは頂点に達する。
「テメェの仕業か、天城ヒサシ!!!」
「おっ、俺の事を知ってんのか照れるな。」
「ふざけやがって、まぁいいテメェとは決着つけてやりてぇと思ってたんだよ。」
「ん、会ったことあったか?」
「見せてやるよ。現れろ"ベヒーモス"!!」
サングラス男から現れたのは、2本の巨大なツノと全身を硬い筋肉で覆われた四足歩行の凶獣。手懐けるのは困難と言われているはずの使い魔を出した事にヒサシは驚いた。
「さあ、始めようぜ。どっちが最強の使役士か決める戦いをな。」
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