第20話 バットマンの目的

《1-A教室》


「ひまわり遅いわね。」


 朝の教室、レイカは生徒会として朝活動の為、いつも早く登校しているはずのひまわりがいない事に疑問を抱いている。


「昨日どこか元気が無さそうでしたものね。」


 テレスも心配そうにしていた。すると教室の入口がざわつき始める。何事かと目をやると、


「みんな、、おはよ、、、。」


「!? あ、あんた!!どうしたの、それ!」


 教室に入って来たのは頭と腕に包帯を巻き、足には切り傷を多く作っているひまわりであった。


「おい、テレス回復だ!」


「はい!」


 テレスがひまわりの傷を回復させていく。その周りには人だかりができてしまった。


「どうしたんだ?轟。」


「いやぁ〜、実は昨日、、」

ダダダダダダダダダダダダダダダダッ


「ごめんなさーーーい!今から呼ばれた人は至急生徒会室に来て下さい!」


 ホームルームが始まる前に【秋川ココア】が全速力で現れる。そして持っているメモを見ながら、


「えっと、天城君、真田君、田中君、羽賀さん、轟さん、東堂さんです。先生の許可は取っていますのでお願いしまーーす。」


 要件だけ伝えてココアは走り去っていく。名前を挙げられたひまわり以外の5人は不思議そうにしながら顔を見合わせる。


「ひまわりさん、傷の方はもう大丈夫なはずです。」


「ありがとう、テレスちゃん。ごめん、みんなこの傷の事は後で話すから。」


 申し訳なさそうな顔をしているひまわりを見て周りは笑顔で答える。ヒサシはひまわりに対して言う


「なんか困った事があったら必ず言えよ。とりあえず今は生徒会室に行こう。大丈夫か?」


「、、うん。」



《生徒会室》


「皆様、わざわざ来ていただきありがとうございます。」


 そう言って出迎えてくれたのは副会長であるマナカだった。


「会長は夕方まで広報活動ですので不在です。差し当たって私が用件を伝えさせていただきます。残念でしたね天城さん。」


 マナカはヒサシに微笑む。ヒサシは苦笑いで返すしかなかった。


「まあ、冗談はさておき、本題に入ります。我々は近日中にバットマンが大規模な動きを見せるという情報を手に入れました。」


「なに!?」


「狙いはアルファ社の本社ビルにある最新兵器の情報。どうやらバットマンのスポンサーはアメリカの異能力技術企業デトロイト社だそうです。」


「なるほど、ライバル会社の機密情報を得るために日本のチンピラを使ってたわけね。小物で意識を散らせながら、本命をフルファ社の本社に送り込む作戦かしら。」


 レイカの分析に対してマナカは頷く。しかし今までの一貫性のない行動にダイハチは疑問を呈した。


「それなら何で全員でいきなり攻めて来なかったんだ?ちょい出ししたせいで、警戒されちまってんじゃんか。」


「どうやらあの方達は捨て駒で街のセキュリティや監視カメラの場所を特定する為に使われたみたいです。」


「けっ、イケすかねぇやり方しやがるな。」


「という事は私達は、そのアルファ社防衛の為に集められたということですか?」


 マオは手を上げマナカに質問をした。その質問に対してマナカは申し訳なさそうな顔で答える。


「はい、そうです。実は来月の新人大会の為に実行委員を各地に派遣しておりまして、現在生徒会メンバーだけでは人手が足りていない状況なのです。」


「それも相手の作戦の内かも。」


「その為、今回は戦闘実績が充分にある皆様に手を貸していただきたいと声を掛けさせてもらいました。」


 マナカの言葉に5人はヒサシにアイコンタクトをとった。ヒサシは代表としてその言葉に答える。


「もちろん、協力させて下さい副会長。俺達はいつも生徒会にお世話になっていますから。しかしこの事、【あいつ】は知ってるんですか?」


「それは、、」

「あの!!」


 ヒサシとマナカの会話に今まで沈黙していたひまわりが大きな声を出して間に入る。ひまわりは神妙な面持ちで口を開いた。


「この異世界島のどこかで『死んだ人を蘇らせる』研究をしている施設はありますか?」


「えっ?」


 その場にいた全員が驚愕する。それは人が触れてはならない禁忌。異能力を使った死者を蘇らせる研究は世界協定で禁止されている。


「急に何言い出すかと思ったら、それがバットマンと関係あるのか?

 大体人を蘇らせる研究って流石にそれはないだろ。そんな事したら世界中から袋叩きだ。まぁ急に死んだ人間を生き返らせらような異能力に目覚めちまったらしたら、わからねぇがな、、あっ。」


 ダイハチは自分の発言の後、リュウジの方を見た。大世門内でクリスタルフラワーが彼の覚醒を促し、死にかけのヒサシを全快させたあの出来事を思い出したのだ。


「自分でもわからねぇが、あの時の力があれば死者を蘇らせる事が出来たかも知れねぇ。ただあの時のコイツは息がある状態だった。」


 リュウジは自分が覚醒した時の感覚を思い出し拳を握りしめる。


「実は私の姉はバットマンの幹部なの。昨日私を襲ったのは多分アメリカから来た本当のバットマン。私は姉を見つけ出す為に生徒会に入ったの。

 あの人は人を蘇らせる力を探している。もしこの事件に関係しているとしたら本当の狙いは。」


「クリスタルフラワー本体もしくは実験データか、、」


「レイカ、クリスタルフラワーは確か、、」


「ええ、私達も実験協力の為に何度も訪れたわ。クリスタルフラワーはこの天王山学園の研究棟にある。」







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