第17話 生徒会の役割

《異世界島:商業エリア》


「まさか轟が生徒会に入りたいなんて思ってなかったよ。」


「地元の神戸でも、一応似たような事してたんだよ。こんな能力が与えられたなら誰かの助けになる事がしたいって思ってたの。」


「なるほど。」


「それに実は探してる人がいて、、、」


「あ、あの!」


 今4人は異世界島の商業エリアにて、募金活動のボランティアを行っている。ここは有名なアパレルブランドが立ち並ぶ中心街であり、歩いてるのはほとんどが学生である。


「ん、どうした?キャッシュレス式募金箱の使い方わからないか?ここに言われた金額を設定して、、」


「いえ、違います!」


 ヒサシの天然にチヨは首を振りながら否定する。横にいるムネノリは女子高生ばかり目を追って話を聞いていない。


「生徒会って、悪い事をした奴を異能力でババーーンとやっつけるんじゃないんですか?これじゃボランティア部じゃないですか!?」


「まあ、異世界島はアルファ社の最新技術で異能力対策がかなり進んでるからな。ここで事件を起こしても捕まってしまう可能性は高いし、なんなら地方の方が小さい異能力事件は多いかもな。」


「なん、、だと、。」


「ふふふ、チヨちゃんはヒーローみたいに活躍したかったのかな?落ち込まないでね。

 そうだ、ちょっと休憩にして、あそこのジェラート日本初出店みたいだから買ってきてあげようか?」


「ホントに!やったーー♡アタシ、チョコレートがいい。」


「ムネノリくんは?」


「えっ、ぼ、僕はストロベリーが、、」


「はーい。」


「俺が行こうか?轟。」


「いいの、いいの。無理矢理生徒会に口を聞いてくれたんだから、そのお礼だよ。」


 そう言って轟は目の前にあったジェラート店の列に並んだ。


「チヨちゃん、そんな落ち込まないでよ。」


「そうだぞ、チヨちゃんはA組なんだから気にしなくてもドンドン活躍できるって。」


「違うんです!! 生徒会で活躍していっぱい評価を上げないとムネがA組になれないんです!

 そうしなきゃ同じクラスになれないもん、、」


「あっ、そっちね。」


「チヨちゃん、僕はA組にならなくても、、」

「あ!?」


「ごめんなさい。」


 ヒサシはチヨに押されっぱなしのムネを見て、この2人の将来が心配になる。ひまわりは今、注文を終え出来上がりを待っているところだ。


ドカーーーーーーーーーーン!

『緊急警報発令、緊急警報発令。直ちに安全行動をとって下さい。避難所は……』


 大きな爆破音とともに、緊急警報が鳴り響く。通行人達は悲鳴を上げながら避難所へと駆け込んでいく。


 ヒサシ達から視認できる程の距離に爆炎が上がり、中から黒ずくめの4人組が現れる。


「あいつらか、、轟!! 避難誘導を頼む。俺は現場に行く!」


「うん、わかった。」


「2人は轟のサポートだ。生徒会補助員になるんだろ?できるな。」


「うんっ!」「はいっ!」


「ライガ、先回りして足止めだ。フィアは俺と行く。周りを巻き込まないように最速で対処するぞ。」

(OK。)(はっ。)


 ライガは壁を伝い避難する人々を超え、黒ずくめの前に出る。ヒサシは超電磁銃を構えその後を追った。一瞬の判断力と行動にチヨとムネノリはあっけにとられたてしまう。

「すごい、、」


 四人組は置いてある車に乗り込もうと必死に走る。


「クソッ、聞いてねーぞ。どの店舗にもアンチスキルバリアがあるなんてよ!」


「簡単に行けるって聞いたから裏ルートから島に入ったってのに、、」


「ん、な、なんで俺達の車の上に魔物がいるんだ!?」


 4人組が乗り込もうとした車の上にライガが立っている。その後ろからヒサシが追いついてきた。


「お前たち止まれ、生徒会だ!強盗未遂で捕縛させてもらう。」


 ヒサシは端末に貼ってある生徒会バッジを見せつけながら4人に詰め寄る。


「生徒会だと、早過ぎるだろ。クソが!!!」


 1人の男が手で何かを丸める仕草を始める、その周りにいた2人は鉄パイプを持ちヒサシとライガに殴りかかる。


「異能力者か、あっちの方がヤバそうだな。フィア!」

(エアロショット!)


 フィアの風の弾丸が、丸める仕草をしていた手に当たりガチャガチャのカプセルのような物が宙へ舞う。しばらくするとそれは空中で爆発したのであった。


「やっぱり、あいつがボスか。」


 ヒサシは鉄パイプで殴りかかってきた男を超電磁銃で手加減して気絶させ、ライガも放電で軽く気絶させてしまう。


 残った黒ずくめ2人はお互い顔を見合わせて、違う方向へと走り出した。


「ライガ、フィアは爆発能力のある方を追え、もう1人は俺が抑える。」

(OK。)


 ヒサシの方へ迫ってきている男に対して超電磁銃を構えると、相手はニヤッと笑った。


「邪魔するな!」


 そう言うと男は足をバネに変化させヒサシの上を飛び越える。


「なに! こいつ異能力者か、、」


 男がヒサシを飛び越えた先には、避難中の初等部の学生がいた。そのままその子を人質にしようと手を伸ばす。


「やめろーー!!!」


 その時、男に横から飛び込んだ来たのは避難誘導をしていたムネノリだった。男は横からのタックルにバランスを崩し倒れ込む。


「クソガキがふざけんじゃねえぞ!!!」


 男は激怒しムネノリを持ち上げ投げ飛ばす、しかしその先にはクモリが現れ無事であった。


(大丈夫?)

「う、うん、、」


 男は立ち上がると横にはチヨが立っている。


「なんだテメェは? 人質になりに来てくれたのか!? アァ!!」


「アンタ、ムネに何してんのよ!!」


 怒ったチヨの全身から電撃が放出される。男は全身に電撃を浴び煙を上げながら気絶してしまった。


 ひまわりとヒサシも近くに駆けつけており、チヨに何かあった場合もサポートの体制は出来ていたようだ。


 その後ろからライガに咥えられて爆発男が連れられてくる。どうやらこれで一件落着らしい。


 しかし、バネ男と爆発男の胸にはコウモリのペンダントが見えるのをヒサシは確認していた。


「バットマンか、、、」



《地下鉄駅前》


「今日は2人共ご苦労様。事情聴取やら大変だったろうけど、ここで現地解散だ。どうだった1日体験して見て?」


「ヒサシ先輩とてもカッコ良かったです!アタシも絶対生徒会実行部隊に入りたい!」


「ぼ、僕も強くなって、人を助けたいです。」


「それなら、しっかりとこの学園で勉強して一緒に悪い奴を捕まえような。」


「「はい!」」


 チヨとムネノリは手を繋ぎ地下鉄へと進んでいく。それをヒサシとひまわりは見送った。


「私もこのまま帰るけど、ヒサシ君はどうするの?」

 

「俺は生徒会室に直接報告に行って帰るよ。後は任せてくれ。」


「うん、わかった。そういえば異能力者の2人はバットマンだったね。警察の人もバットマンの犯罪が増えてるって言ってた。」


「ああ、もしかしたら生徒会全体で動きをとらなきゃいけないかもな。」


「その時は必ず力になるから声をかけてね。」


「ああ、頼んだぞ轟!」


「うーん。私、轟って名前嫌いなんだよね。だからひまわりって呼んでよ。」


「お、おう。じゃあまた明日な、ひまわり。」


「うん、また明日、ヒサシ君。」


 ひまわりは笑顔でヒサシに手を振る。

 

 その姿を商業施設の屋上から見ている黒い影がある。その背中には大鎌が背負われている。



《生徒会室》


 陽も落ち、暗くなっている学園。明かりがあるのは職員室と研究施設、そしてこの生徒会室のみだ。


コンコン

「どうぞ。」


 ヒサシはノックをして生徒会室に入る。広い部屋の奥には電子パネルで書類に目を通している、和合トモエの姿だけがあった。


「やっと来たか。大変だったみたいだな話を聞かせてくれ。ひーくん。」


 

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