第16話 生徒会補助員

《天王山学園中等部》


「早く行かないと遅れちゃうでしょ!」


「ちょっと待ってよ、チヨちゃん。」


 入学式から2日目の放課後、ある会場へ早足で向かう2人の男女の姿がある。背丈は女の子が150㎝程で男の子は少し小さく140㎝程である。女の子の方はかなり焦っているようだ。


「もう、アンタがF組なんかになるからこんな事になってるのよ。ウチのA組はすぐホームルーム終わったのに!」


「僕のせいじゃないし、、、」


「言い訳しない!」


 女の子の方は先を行き、男の子は遅れて走る。すると曲がり角で男の子が人とぶつかってしまった。


ポニョん。

「ぐはっ。」「きゃっ。」


 尻もちをついていた男の子が前を見ると、そこには制服の胸元がはちきれんばかりに張っている、地元では見た事ないくらい綺麗な高等部のお姉さんが立っていた。先程の柔らかい感触はどうやら彼女の胸だったらしい。


「大丈夫?ごめんなさいね。」


 そう言ってお姉さんは手を差し伸べる。それを男の子は恥ずかしいそうに取り立ち上がった。その後お姉さんは男の子のお尻についたホコリをはたいてあげている。


「ふふ、中等部かな?可愛いわね。よしっ、これで大丈夫。あんまり廊下を走ったらダメだぞ♡」


「は、はい。」


 お姉さんはそのまま隣にいた、これまた綺麗なハーフのお姉さんと話しながらその場を去る。その際手を振られたので男の子は放心状態で振り返した。


「レイカさん、先程まで元気なさそうだったのに、どうしたんですか?」


「いやまあ、今からまた研究協力で放課後潰されるから、やる気出なかったけどショタ、、じゃなくて可愛い子から元気もらえたし、頑張ろうねテレス!」


 男の子からは遠くて話し声は聞こえなかったが、入学早々にドキドキする体験をして、この学園に感謝を感じていた。


「ムネ?アンタなにしてんの?」


 そんなドキドキが一瞬で冷めるようなドスの効いた声が後ろから聞こえる。恐る恐る振り返ると鬼の顔をした幼馴染がいた。


「なにデレデレしてんのよ!早く行くわよー!!」


「ごめんなさいチヨちゃーーん。」


 そうして男の子は耳を引っ張られながら目的地へと向かった。



《天王山学園校庭》


「本日はみなさん集まっていただきありがとうございます。私は生徒会補助員長:普通科高等部2年石田といいます、よろしくお願いします。」


 学園の校庭に大勢の学生が立っている。ここは現在、生徒会補助員を希望する生徒を集め説明会を行おうとしているのだ。


「みなさん、生徒会補助員とは学園地域を異能力犯罪から守る為に作られた生徒会を補佐していく役割の事です。

 学園地域で起こった異能力事件の聞き取りや通報、避難誘導など生徒会実行部隊が活動しやすくする為サポートしていくのが仕事となります。」


 この説明会の中には普通科の生徒も混じっている。普通科生徒は実行部隊にはなる事が手がないため希望者は補助員をする事となる。


「異能力事件が複雑化し多発している今、我々のような補助員がサポートする事で、学園地域をより良くできると私は考えます。みなさん共に頑張りましょう。」


 会場から拍手が起こる。その後それぞれ必要事項を書き込む用紙をもらい記入していくようだ。


「ええと【夜峰よるみねチヨ】と。ムネ書けた?」


「ちょっと待って、【山越ムネノリ】。書けたよ。」


 チヨとムネノリは2人で用紙を受け付けへと提出する。そこで記入事項を確認された。


「夜峰さんと山越くんだね。凄い!夜峰さんはA組なんだね。実行部隊に入るのも時間の問題かな?山越くんは、、、F組か、、ま、まあそんな子が補助員になりたいと言ってくれて嬉しいよ。はは。」


 チヨは満面の笑みでいるが、ムネノリは苦笑いでやり過ごす。こういうやり取りは慣れているようだ。


「じゃあ今日は補助員の初めての活動として、今から2人には生徒会実行部隊のパトロールに同行してもらいます。校門で実行部隊の先輩が待っているから、このカードに書かれた番号と同じ番号を探してパトロールに同行して下さい。」


 渡されたカードには『7』の数字が書いてある。2人はそのカードを持って校門へと向かった。


「どんな人かな?もしかして、、生徒会長かも、、キャーーー、どうしよ、ドキドキしちゃう♡」


「僕も綺麗なお姉さんがいいなーー。」


「ナニヨソレ。」

「えっ?」


「アンタはいつも女の人ばっかり見てる!」


「見てないよ、ちょっとだけだよ!」


「ちょっと見てるじゃない!!!」


 2人で言い合いを続けていると、いつの間にか校門へ着いていた。気を取り直してチヨはカードを掲げながら同じ番号の人を探す。


「すみませーーん、『7』番の人いますかー?」


 そう言って周辺を歩いていると後ろから声をかけられた。


「おっ、君達が『7』か。」

(可愛い2人組だーーー。)


 声をかけられ2人は振り返る。そこには高等部の制服を着た男女2人と妖精1匹がいた。


「よろしく俺は【天城ヒサシ】。こっちは【轟ひまわり】でこの使い魔が【フィア】。2人共今日はよろしくな。」

「よろしくねー」(よろしくねー)



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