第15話 あからさまな設定説明回

《天城ヒサシ宅》  ※( )が話している人物。


「さて何から話そうかしら。(レイカ)」


 レイカは教師のように掛けてもいない眼鏡をクイッとする。


「門の出現により魔物や異能力が現れてまだ10年も経っていない現在。医療の発展、テクノロジー革命などプラスの側面もあれば、もちろんマイナスの側面も現れ始めたの。それが【異能力犯罪】(レイカ)」


 テレス達が洗い物を終え、コーヒーを持ってくる。それをブラックのまま一口飲みレイカは話を続ける。


「そもそも異能力とは魔力がないと発現できない特殊能力。現実世界には魔力が存在しない為、大世門や小世門から溢れ出る魔力を元にみんなは異能力を使っている。さらに異能力は私達の一つ上の年代から下の高校生以下の人間にしか使えない。

 ここまでが異能力の基礎知識ね。(レイカ)」


「なんで私達の年代から下しか使えないのかは、まだわかってないんですよね。(テレス)」


「そう、そしてここで大事なのが、異能力を使えるのがまだ精神的に未熟なだけという事よ。

 現在の装備では対抗出来ない程の強力な武器を子供達が持ってしまう事に対して、政府は力の源である門の上に蓋をしたの、それが学園型制御装置『SCHOOL』よ。(レイカ)」


「その装置があるせいで。小世門なんかの魔力量じゃ学園の敷地以外では異能力が使えないんだよな。(ダイハチ)」


「でも、ここにある大世門は魔力量が大きすぎて『SCHOOL』で蓋をしても広い範囲で異能力が使えてしまうから、湖の真ん中に島を作って学園の周りを異能力や魔物の実験施設なんかで固めてるんだよね。(ひまわり)」


「それとバットマンがなんの関係があるんだ?(リュウジ)」


 レイカがやれやれの仕草をしながら質問に答える。


「そうやって制御しようとすると反抗する奴が出るのは当然でしょ。

 始まりはアメリカのとある州。異能力を権力や武力で封じようとした大人達に対して、異能力者の子供達を集めてコウモリのペンダントを目印に結束したのが【バットマン】というギャングだったみたいなの。(レイカ)」


「なるほど、その模倣犯が日本にいるってわけか。(ヒサシ)」


「まぁ、日本にいる奴なんて不良に憧れてるだけの可愛いもんだけどね。

 本当にヤバいのはカルト教団やヤバい実験してる企業よ。大人が子供を使って稼ごうとしている奴らも沢山いるみたいだし。特に教団なんてのは、、、(レイカ)」


「異能力で犯罪を犯すとは更生施設に入学させられると聞いたが(レイド)」


「う、うん。そうね。何か異能力を使って犯罪を犯すと全国にある更生施設型学園に入学させられるの。

 中には異能力を制御する事が出来ずに犯罪を犯してしまった人とか、色々な事情を抱えている人もいるから、、(レイカ)」


「私知ってるよ。異能力犯罪を予防・対応する為に作られたのが【生徒会】なんでしょ。ヒサシも中等部の頃入ってたよね(マオ)」


「まあな、厳密には【生徒会自治組織】だな。自薦・他薦で選ばれた生徒が学園地域の異能力犯罪に対応していく。

 俺がいたのは中等部2年までだけど、バットマンは聞いたことなかったな。(ヒサシ)」


「そして天王山学園はその生徒会組織のトップ。【和合トモエ】生徒会会長は全ての生徒の憧れの的ってわけね。(レイカ)」


「生徒会なあ、入りてー奴は多いみてーだな。俺は嫌だけど。(リュウジ)」


「私もスカウトされた事あるよ。断ったけど、、、(マオ)」


「これから異能力犯罪も複雑化していく可能性がある。才能のある生徒は少しでも抑止力になって欲しいと考えるはずよ。

 私達は高等部入学初日から結果を出した。だからここにいる全員、生徒会にスカウトされる可能性は高いと思うのよね。(レイカ)」


 その後はそれぞれ異能力犯罪に対する意見などを討論していた。高校生といってもそれぞれが地方の異能力者エリートだった存在だ。地元の治安を心配する意識は普通の人よりも高いようだ。

 

ビコーン


 その時ヒサシの端末からメッセージ受信の音が鳴る。その内容を確認してヒサシは苦笑いする。


『明日、大事な話があるので生徒会室に来てください。あなたの大好きな会長様より♡』



ーーーーーーーーーーーーーー

《???》


「ここに書かれてるのは異能力警備が甘い商業施設や監視カメラが少ない地域だ。お前らはそこで好きなように騒ぎを起こせ。手に入れたもんは自由に使っていいぞ。」


ウオーーーー!!


 異世界島埠頭の倉庫の中でガラの悪い男達が集まっている。彼等の胸元にはコウモリのペンダントがかけられていた。

 騒ぎ立てるチンピラ達、その中心にいるのはサングラスをかけ派手なアロハシャツを着た男だ。


「お前ら!今回の狩りにはスペシャルなゲストに来ていただいてる。

 アメリカ本土から本物のバットマン、殺しのエキスパートで付いた異名が"Moon Reaper"、"満月の死神"様よ。」


 ウオーーーーワアーーー!


「お前ら俺達は異能力を持ちながら不良のレッテルを貼られ虐げられてきた。今ここで奴らの鼻をあかして一攫千金といこうぜ!」


シャアーーー、いくぜーーーー!!


 騒ぎ立てるチンピラ達を尻目にサングラスの男は裏へと下がる。そこには幹部らしき連中が迎え入れその後ろに大鎌を持った人影があった。


「ふっ、単純な奴らで助かるぜ。死神さんよ、あんた達の計画はしっかりと手伝わせてもらう。だがこっちの金儲けにも手は貸してもらうぜ。」


「、、、。」


「へっ、愛想がねぇな外人さんはよ。まあいいや、テメェら金儲けだ、気合い入れていくぞ。」


「おう!」


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