第12話 VS一つ目大蛇のミルフィーユ ラフレシアを添えて

《大世門内》


「さっきの大きな花と合体したの、、」

「花粉の毒素が強くなってる、周りの木も枯れてるし、進藤さんがいなかったら即死だったかも。」


 一つ目大蛇は動き出し、攻撃を仕掛けてくる。8人がいる場所へ巨大な尻尾を叩きつけるように繰り出して来た。


 全員が逃げていく中、ヒサシは呆然とし動けていない。


「ヒサシ!」


 マオがヒサシを掴み、転がりながらなんとか攻撃を避ける事ができた。


「ヒサシ、しっかりして。勝つ為に指示をちょうだい。ねぇヒサシ。」


「俺は、爺ちゃんの仇を、、みんなを危険に、?」


 マオがヒサシの肩を揺さぶるも混乱しているようだ。ヒサシの集中力が切れている為使い魔も召喚できず、姿が保てない為消えている。


「俺が行く。」


 レイドがスケボーに乗り、一つ目大蛇の人型の部分に近づこうとするもラフレシアの蔓が守るように邪魔をしてくる。


「さっきのように傷をつけてひまわりの最大火力を叩き込みましょう。」


 レイカの指示に全員で応えようとする。レイドとマオの道を作るべくダイハチが先頭へ出る。


「くらえ!"朱槍十文字斬り"」


 炎纏った槍の攻撃を一つ目大蛇は蔓で受けるのではなく大蛇の体で受け止めた。


「なに!」

「炎に弱いのをわかって学習してる、、」


 ダイハチの攻撃は虚しくも受け止められ尻尾に跳ね除けられてしまう。しかしその尻尾を踏み台としてリュウジが花の上の人型に迫るも蔓が現れ、また防がれる。


「"大戦斧"!、なっ、また、、」


 リュウジの攻撃は蔓に防がれ大きなダメージを与えられない。その横からレイドとマオも飛びかかり蔓は破るものの、本体には届かず、3人まとめて尻尾で叩きつけられてしまった。


「どうする、私じゃまともに戦えないし、ひまわりは最後の一撃の為動けない。このままじゃ進藤さんを狙われたら全滅する。優先順位を考えたら、その時は私の身を、、、」


 レイカは思案する。彼女は手が足りない事を感じている。そしてその目線の先にはヒサシの姿があった。




「(なんだ、これは。みんながあの一つ目に飛びかかっては弾かれている。そんなバラバラに戦っても勝てない。8人が全員仕事をしても勝てるかどうか、、)」


「(この事態を招いたのは、俺だ。クリスタルフラワーをとってそのまま戻っていれば、こんな事には。俺の復讐なんて、みんなには関係ない。あんな奴、無理矢理追わずにいれば、、)」


「(一緒だ。仙台の時と。また冷静さを無くしてみんなに迷惑を、、助けられる命を。)」


 ヒサシの頭の中には中等部時代に生徒会メンバーと訪れた仙台での戦いの記憶が呼び覚まされる。


 【和合トモエ】会長と共に戦った一つ目の海獣。その影響で失ってしまった多くの命。


 何も成長できていない自分に悔しくなってくる。


「(天城ヒサシ!!)」


 記憶の中で両手で頬を潰されながらトモエ会長に言われた言葉を思い出す。


「(あなたの本当の力は戦う力ではなく、何かを守る力よ。周りを導いて使い魔を使って人を助ける事ができる力。

 だからそんな恐い顔しないで、、普段通り少しお節介で誰でも助けてしまう、そんな優しいあなたが私は好きよ。)」


「会長、、、」


 呆けている自分の目の前に最悪な状況が訪れる。戦闘員全員が地に伏せた時、一つ目大蛇は尻尾をドリルのように巻きテレスを串刺しにしようとしている。


 そしてそれを察したレイカがクリスタルフラワーを投げ捨てテレスの前に入った。


 このままでは確実どちらかが死ぬ。そう考えた時ヒサシの体は自然と動き出していた。


「東堂さん、危ない!!」

「進藤さん、私に何かあっても陣を解いたらダメよ!全滅してしまうから!」

「レイカちゃーーん!」「テレス!!」

 

 その時、2人を目掛けて迫るドリルとの間にヒサシが割り込んだ。ヒサシは持っているナイフでドリルをずらすも腹の半分は抉られ、地面に転がっていく。


「キャーーーーーーーー、天城さーーーん。」

「進藤さん、だめ!!」

「何してんのよ、クソヘビがああああああ!!」


 ヒサシに駆け寄ろうとするテレスをレイカが制する。マオは一つ目大蛇の脇を怒りの形相で蹴り上げ山へと叩きつけた。


 急いでレイカとダイハチが駆け寄るもヒサシは虫の息であった。


「すまん、、ハア、、みんな、」


「しゃべるなヒサシ!テレス助けてくれ!」

「だから、進藤さんが動いたら全滅だって言ってるでしょ!!」

「じゃあ、どうすればいいんだよ!」



「どけ、雑魚。」


 ダイハチを押しのけてリュウジがヒサシの元へと歩み寄る。


「男だったぜ、生徒会様よ。"治癒功・再生"」


 リュウジは手の平を抉られた腹の部分に当て再生を試みる。少しずつではあるが組織が再生して来ているのがわかる。


「あなた、やっぱりヒーラーだったのね。」


「へっ、この見た目で可笑しいだろうがよ。なるべく晒したくはなかったが、コイツに男を見たからな。」


「田中、、、」


 しかし、魔力を消耗している状態の回復では再生が追いついていかない。リュウジも汗を流しながら回復させているがヒサシの呼吸は弱くなるばかりだ。


 全員が焦ってきている中、突然何かが光り輝く。


 それは先程まで蕾であったクリスタルフラワーの花が輝きながら咲いていく姿であった。

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