第11話 アイツへの手がかり

《回想》


「爺ちゃん!爺ちゃん!!」


 小さい頃のヒサシが祖父と過ごした家の前で倒れている。そしてヒサシを庇うように片腕の【天城ゲン】が使い魔と共に立っていた。


「まさか、ハア、、現実世界に出てくることになるとはのぉ。負ける訳にはいかんな、テンカイよ、、」

(ゲン、、お前、、、)


 ゲンの横には滅多に出すことのない彼の最強の相棒、猿の姿をした【天地の精:テンカイ】がいた。


 その目線の先にいるのは宙に浮いた人影と周りにいる大量の一つ目の蜘蛛。


「お前のおかげでやっと自由を得る事ができた。ありがとうな、ヒサシ。」


 そう言った人影の姿は今現在、高校生になった【天城ヒサシ】と瓜二つであった。





《現在・大世門内山頂》


 赤い光線を放ちながら一つ目は空へと逃げていく。フーバの翼で追いかけフィアの風の弾丸と超電磁銃を打つもあまりのスピードで追いつく事ができない。


「また仙台の時みたいに逃す訳にはいかねぇんだよ。【アイツ】への手がかりを!」


 ヒサシは一つ目に無闇に攻撃していた訳ではなかった。牽制して追い込んだ先の森の中にはライガが隠れていたのだ。

 ライガの雷爪をモロに受けた一つ目は、一瞬動きが止まる。


「フィア!!」(うん。"風の牢")


 一つ目の周りに円状の竜巻が囲い込む。一つ目は身動きもとれずにいた。そこにヒサシは近づき止めを刺そうとする。


(!!。ヒサシ、何かくるよ!!)


 森の中から木々を押し倒して迫ってくるものがいる。ヒサシと一つ目の前に現れたのは大蛇であった。

 大蛇はそのままヒサシを丸呑みしようと襲いかかる。フーバは上空へと寸前のところで避けるが、一つ目はそのまま飲み込まれてしまった。


「フーバ、戻れ!奴の中に手がかりが!」

(ヒサシ様、それはできません。今の消耗した状態では、、)


「爺ちゃんの仇の情報が目の前にあるんだぞ!何で俺の言う事を聞かないんだ。」

(落ち着いてよ、ヒサシ!)


 使い魔達と揉めている時、また大蛇がヒサシへと狙いを定める。一瞬反応が遅れたフーバは大蛇の毒牙を避けきれず、羽根で受けてしまった。


(すみません、ヒサシ様、、、)


 そう言って、フーバはヒサシの中へと戻ってしまう。翼を失ったヒサシに対して大蛇は尻尾で彼を地上へと叩き落とす。

 空で身動きが取れず、ヒサシは彼らが入ってきた洞窟の方向へ落下して行くのであった。





「これがクリスタルフラワーね。」

 

 ヒサシが飛び立ってしまった後、回収したクリスタルフラワーを【東堂レイカ】が持ち、7人一緒に洞窟から出てくる。


「なんか、花の蕾みたいな形だねーー。」

「そうね、でも、すごい魔力を感じる。」


 レイカと【轟ひまわり】はクリスタルフラワーを観察しながら、研究室への報告を端末で行おうと試みている。


「天城さん、大丈夫でしょうか、、、」

「無事だといいけど。ヒサシ、どうしたんだろう。」


 【羽賀マオ】と【進藤テレスティーナ】はヒサシの心配をしているようだ。


 【田中リュウジ】と【黒崎レイド】が先頭を歩きながら、【真田ダイハチ】は1番後方にいた。


ドーーーーーーーン!!


 洞窟から出てすぐに、山頂から大きな音が聞こえる。全員が振り返り今出てきた山の山頂に目をやると何かが落ちて来ている。


「なんだ、あれは、、、なっ、ヒサ、、ぐはっ!!」


 空から落ちて来たものがヒサシであると認識し、ダイハチは受け止めようと体を張る。キャッチした勢いそのままに後ろに転がり大木にぶつかってしまった。


「大丈夫!?ダイハチ、、何が落ちてって、ヒサシじゃない!!」


 ダイハチに駆け寄ったマオはダイハチそっちのけでヒサシを抱き抱える。テレスもすぐさま回復魔法をかけている。


「お前ら薄情だな、、」


ヒサシが落ちて来た方向を見る内部生達。


「何かいる、、」


「おいおい、あの花の化け物がラスボスじゃねぇのかよ。」


「今までのヘビの10倍はあるわね、、」


キシャアアアアアアアアアアアア


 山頂から現れた大蛇を目の当たりにして、全員が冷や汗をかいた。ラフレシアとの戦闘で疲弊した状態での連戦、心が折れそうになっている。


「まだだ、、絶対に逃がさねぇぞ。」


 回復したヒサシがマオとテレスの引き留める手を振り切り大蛇の方へと向かう。


「待ちなさい天城君!今アイツは私達の事に気付いていない逃げるなら今しかないのよ!」


「そうだよ、このまま逃げようよ。」


 レイカとひまわりが静止の声をかけるがヒサシは聞く耳を持っていない。


「アイツをアイツを、見つける為に、、フィア!ライガ!クモリ!もう一度行くぞ!!」


ヒサシが構わずに大蛇の元は走っていこうとする。


「おい待てよ、生徒会様よ。これでも喰らいやがれ!」


 その瞬間リュウジはヒサシの顔面に本気の拳をぶつける。ヒサシは地面に伏せ何が起きたかわからない顔でリュウジを見つめる。


「テメェ、いい加減にしろよ。自分は特別で何でも許してもらえるって思ってんじゃねぇか。お前の様子から何かアイツに因縁がある事は理解してやる。だがな、それでダチの事無視していい訳ねぇだろ。お前を受け止めて、傷治して心配してくれた奴らに礼も言わずに進むほど大事な事がある訳ねぇだろうが!!」


 ヒサシはリュウジの後ろの方にいる昔からの仲間達の顔を見る全員が不安そうな顔をしてこちらを見ている。


「そして今度はここにいる全員を危険に晒すような行動をとろうとしてやがる。生徒会様には俺達の命より優先させなきゃならねぇもんがあるってのか!!」


「お、俺は、、」


 リュウジの言葉にヒサシは何も言い返せず呆然としている。


ギャアアアアアアアアアアアアアアア!


 山頂の大蛇が急に叫びをあげる。何か苦しそうな声が森中に響き渡った。そして山の中へと頭を突っ込み消えていく。


「何?今の声?」

「苦しそうな声だった、、」

「山にあった穴の中に行ったのか。」


 全員が不思議に思う中ヒサシの顔がみるみる青ざめていく。

「まさか、、」


「これは?進藤さん!回復方陣を!!」

「えっ、はいっ。」


 何かを感じ取ったレイカがテレスへと指示を出す。すると先程のラフレシアの毒の花粉よりも強力な毒粉が山から噴き出し周りの木々を全て枯れさせてしまう。


「何が起きてんだよ!!」


ドドドドドドドドドドドドドーーーーン!!


 山を砕き現れたのは先程の大蛇ではなかった。体から尾まで大蛇ではあるが頭はなく、頭があった部分はラフレシアの花になっている。


「何だよありゃ。」

「合体してるの、、嘘でしょ。」


 ラフレシアの中央の部分から全身緑色の人の上半身が生えてくる。手や顔、体の形はあるものの凹凸はなく人の形をしているが人ではないとはっきりわかる。

 そしてヒサシの方を見つけるとそのまま近づいてくる。そしてその顔と思われる部分に大きな一つ目が現れるのであった。

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