第6話 内部生VS外部生
《エレベーター前》
「はい、ここが地下にある
俺達がオリエンテーションを切り上げて連れて来られたのは、この学園の中でも関係者の鍵がないと入れない特別なエレベーターの前だ。
「このエレベーターはただ地下に降りるのではなく地下に行って少し横移動をしてまた地下へ行きます。理由は簡単、場所が秘密になっているからですね。」
「先生。大世門の上にこの異世界島が出来てたのは知ってたんですけど、小世門もあるんですか?」
「厳密には機密事項なんですけど、最寄りの小世門に行きますと答えておきますね。じゃあみなさん乗ってください。」
「はあ、、」
エレベーターに乗りながらクラスの心は何故ここに連れて来られたのか、という思いにまとまっていた。
「この大世門は中等部、高等部の選ばれた人にしか入る事を許されていません。このクラスでは天城君と羽賀さんと進藤さんしか入った事ないと思いますよ。」
「なんだ、お前やっぱり雑魚だったのか。」
「なんだと!」
田中リュウジが真田ダイハチに絡むが、南先生に制される。
「内部生と外部生なんて本当は気にして欲しくないのですが、魔物との戦いや研究成果など、どうしても優劣は出てしまい異能力の数値化もされてきています。魔物達との戦いは命懸け、毎年何百人とも言われる死傷者が出ているのが現実です。最前線で戦うあなた達のチームワークやリスペクトのない状態だと本当に死人が出ますよ。」
生徒達は黙る。何故ならこの戦いに身を置いている中で死が隣り合わせである事は充分理解できているからである。
「その為にも貴方達には大世門で探索演習にあたってもらいます。ルールは簡単、外部生と内部生で4人1組を自由に組んでもらい何か成果を上げてきて下さい。もちろん参加は自由です。オリエンテーションなので行かない事が減点になるなどはありませんよ。あっ、着きましたね続きは作戦ルームでしましょう。」
《大世門前複合施設》
エレベーターが到着したのは地下にある大世門前に造られた複合施設である。ここには研究設備の他、作戦ルームやレストルームなど生徒達が研究や演習に入り易いように作られている。
「やあ、1-Aの諸君、よろしく頼むよ。」
そう言って彼らを待っていたかのように、白衣を着てヒゲをたくわえたダンディなおじさんが話しかけてきた。
「こちらが南副施設長、ここの研究室の責任者をやっている私の旦那さんですよ。」
「はっは、それでは作戦ルームに案内しよう。」
そう言って南副施設長に案内され作戦ルームに着く。そこには通信設備から巨大モニター、3D卓上マップやドローンなど充実した設備が整えられている。
「すげーな」「なんだこれ」「地方とは全然違う」
生徒達から感嘆の声が上がる中、南先生は本題を切り出す。
「使い方はおいおいしますけど、先ずはチーム分けですね。少しは考えたかな?と言っても内部生は4人だから、、」
「俺と天城、羽賀、進藤の4人だ。いいよな3人共!」
【真田ダイハチ】はすかさず答える。
「もちろん、あんな言われ方して黙ってられないよ。」
「あんまり競争とかは苦手ですけど、みなさんに怪我はして欲しくないので、、」
【羽賀マオ】と【進藤テレスティーナ】も参戦を決めるが【天城ヒサシ】は、
「俺はあんまり気にしてないけど、、」
「先生、みんな行くそうです!!」「おい。」
「わかったわ、じゃあ外部生はどうする?」
外部生達は一瞬沈黙し、
「俺は行かせてもらうぜ、あんな奴らに負けてたまるか。」
最初に声を上げたのは、この喧嘩をふっかけた張本人である【田中リュウジ】である。
「おい、黒崎、お前も来いよ。あいつに因縁あるんだろ。」
その言葉に【黒崎レイド】はヒサシを一瞥して答える。
「わかった、行こう。」
リュウジはレイドの返答にニヤリとし
「あとは、、」
「ここは私とひまわりに行かせてちょうだい。」
最後の2枠に参加希望をしたのは2人の女子生徒だった。1人は制服がはちきれんばかりの爆乳を持った【東堂レイカ】。もう1人はいつも笑顔で笑っている【轟ひまわり】である。
「これで8人が揃ったわね。じゃあそれぞれ更衣室でバトルスーツに着替えて大世門前に集合。他のみんなは研究施設にある指示室で見学をします。それじゃあ女子は私、男子は副施設長に着いてきて。他のみんなは職員のお姉さんに案内してもらって下さい。」
《男子更衣室》
4人が黙々と着替えている中、リュウジが沈黙を破る。
「おい、雑魚。テメェも実は生徒会様のペットなんじゃねぇのか、通りで獣クセェと思ったぜ。ハハハハハハ。」
「テメェ、調子に乗んなよコラァ!!」
「安い挑発に乗るなよ。」
ダイハチの首根っこを掴みながらヒサシは頭を抱える。レイドにまたチラ見されるが話しかけられず先に行ってしまう。
「やれやれだな。」
《女子更衣室》
「うわーーー、エッロいなこのスーツ。」
体のラインがくっきり出るバトルスーツを持ってひまわりは大騒ぎしている。
「羽賀さんも進藤さんもスタイルいいからエロエロやん。絶対開発した人に変態がいるよ。それに、、」
隣でレイカは胸のファスナーが上がらず悪戦苦闘している。
「東堂さん、最初は余裕があるサイズを着て手首から空気を抜くようにした方が着やすいですよ。」
「あ、ありがとう。でもこれで、、、入った!」
「もう凶器やん、レイカちゃんのそれ、」
マオは少し笑いながらそのやりとりを見て2人に質問を投げかける。
「2人共この演習になんで参加したの?やっぱり内部生が嫌い?」
東堂は厳しい表情でマオとテレスを見る。
「私とひまわりは内部生とか外部生とかこれっぽっちも気にしてないわ。でも羽賀さんは大世門に何度も入ってるんでしょ。私はここに来る前に絶対活躍するって約束したから、少しでもあなた達との差を埋める為には出来ることはなんでもするわ。」
《大世門》
「これが大世門、、」「大きい。」
8人の前に巨大な閉じた門が存在している。それぞれバトルスーツの上からフード付きマントを羽織り通信用のヘッドセットとタブレット端末を装着している。
『みなさん聞こえますか?なるべく口出しはしませんが、危険信号や帰還などは対応します。こちらはドローンや目線カメラなどでモニタリングもしています。』
ヘッドセットから南先生の声が聞こえる。事前に待たされた物には食料なども入っている。
『みさなん、目的はあくまで探索です。新しい鉱石や新マップ、新種の魔物など何でもいいのでお互いの実力を認めさせる事ができるような何かを見つけて来て下さい。それでは大世門から先は命懸けである事を忘れずに、行ってらっしゃい!!』
「「「はい!!」」」
8人は扉をすり抜けて中へ入っていく。
彼らを見送った後、南先生の元へ南副施設長が歩み寄ってくる。
「先生なのにえらく彼らを煽ってるな。心配じゃないのか?」
「あなただってわかってるでしょ、こんなペースでチマチマ進んで行ったって手遅れになる。私は教師の前に研究者よ、道徳を教えるのは学園教師の仕事。私の仕事は彼らを導いて異能力研究を前に進める事なのよ。」
彼女の目は教師として生徒を見る目ではなく、研究者としてモルモットを見るような冷たい目であった。
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