第2話 クラス分け試験

《大訓練場》


「今日こそ勝たせてもらうぜマオ!」

「ダイハチ、アンタがアタシに勝てるワケないでしょ!!」


 ダイハチが持つ十文字槍とマオの蹴りが交差し激しい戦いが繰り広げられている。


 入学式から1日経ち、天王山学園大訓練場ではクラス分け試験が実施されている。クラス分け試験では主に異能力の使い方を試験され、その結果によりクラス分けが決まる事になっている。


 先日の魔力測定では使える魔力の最大値を測るものであったが、それが実力の全てではない。自分の持っている魔力量を上手く異能力に繋げられるかがクラス分け試験の課題となる。


 例えば魔力量5000の者でも異能力では2500程度しか活かす事ができていない者もいれば、魔力量3000で異能力3000としっかり活かしている者もいる。そういった生徒の現在を見極めるのがクラス分け試験の主な目的である。


 そして現在この大訓練場では異能力が戦闘特化されている者達の試験が同時に行われている。対戦カードは魔力量が近く、中等部時代の実績・評価で振り分けられており一対一での戦闘力が評価対象となる。


「ダイハチ、そんな攻撃じゃアタシに傷一つ付けられないよ。」

「クソっ!バケモンが!!」


 2人の戦いは徒手空拳のマオが優勢であり、ダイハチによる槍の連撃を軽くいなしながら長い手足で致命的な一撃を喰らわせていく。


「まあ、少しは強くなったんじゃないの?」

「俺だって春休み中に地元で御先祖様の理解深めて修行してきたんだ、ここで終わらねぇぞ!」


”朱槍十文字斬り”!!

”真空烈風脚”!!


 2人の大技がぶつかり合い今日1番の衝撃があたりに響き渡る。砂煙が舞いそこに立っていたのはマオであった。


「試験終了。羽賀マオと真田ダイハチは怪我の確認と総評をもらい見学室へ移動するように。」


 試験官の教師が指示を行い2人は礼をしようと体勢を整える。しかしマオは何かに気付いたかのように慌てた姿を見せ、見学室にいるヒサシをチラ見した後、更衣室の方へ走っていった。


「どうしたんだ、マオのやつ?」


しばらくするとダイハチが見学室へ戻ってくる。


「なんとか、一矢報いたかな」


 疲れた表情を見せるもダイハチの顔は達成感に満たされていた。


「そうか?結構ボコボコに見えたけどな。」


 その後マオも見学室に戻ってくる。試験の際には着ていなかったジャージを羽織り、怒りの形相でコチラへと歩いてくる。


「ダイハチィ、アンタァねぇ、、、」


「お前何したんだ?」


「絶対勝てないと思ったから、マオのブラ紐切ってやった。俺は今日死ぬだろうけど悔いはないぜ」


「月まで飛んで弾け飛べ!!!!」

「げぼぇへぁはあっ!」


 親指を立てたダイハチの顔がマオの蹴りで変形するのがスローモーションで見えた。それがこの男との最後のやりとりであった。


「全くあの馬鹿猿が!」


 隣に座ったマオは蹴りを入れて少し落ち着いてはいるが、まだ怒りで呼吸が荒い。深い呼吸をするたびに揺れる胸が一度意識すると気になってしまうのは健全な男子高校生の証拠であると自分に言い訳する。


「ちょっとあんまり、ジロジロ見ないでよ!」


「いやっ、それは、、すまん」


 マオが顔を真っ赤にして胸を辺りを隠す。こんなに恥ずかしそうにする彼女は滅多に見られない為、ヒサシも恥ずかしくなりラブコメの雰囲気に包まれる。


『第一訓練場最終組、天城ヒサシ、黒崎レイドの両名は速やかに試験場へ集合しなさい。』


見学室へアナウンスが流れる。


「やっと出番か。」


「頑張ってね!ヒサシ。」


 マオに見送られながら下の階へ降りてゆく。指定された訓練場に着き手続きを終えると、正面には昨日の銀髪イケメンが待ち構えていた。


「お待たせしましたかな?」


「………。」


「無視はきついな。」


『ただいまより、天城ヒサシと黒崎レイドの試験を実施する。注意事項は事前に配布された資料の通り、戦闘終了のタイミングは試験管の指示を厳守するように。』


 試験管の開始の合図を待つように、【黒崎レイド】は背負う剣に手をかける。ヒサシもそれに対して懐にある武器に手をかけ戦闘準備にはいった。


 上階にある見学室では試験を終えた生徒達が今日最大の注目カードを見ようと大勢集まっている。


「どっちが勝つかなレイカちゃん?」


「【生徒会レジェンドの一角】対【外部生No.1】。生徒会クラスのエリートと私達外部生がどのくらい差があるのか確認するいい機会だわ。あと喋りながら私の胸を揉もうとするのはやめなさいね、ひまわり。」


『それでは、試験開始!!』


"付与魔法エンチャント"


 魔力を帯びた剣を抜きレイドは俺に目掛けて最大パワーで剣を振るう。なんとか避けたヒサシのいた場所は大きく地面が割れている。当たっていたらひとたまりもなかっただろう。


「やるじゃん、こっちも反撃させてもらうぜ。」


彼らの戦いの幕が開ける。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る