第4話 ようこそ国立天王山学園へ

「皆さん、こんにちわーー。今回は国立天王山学園体験バスツアーにご参加いただきありがとうございまーす。」


 明るい挨拶でバスガイドのお姉さんが話しかけるのは20人程の小学校高学年の子供達であった。


「このバスツアーは異能力を持つ子供達が通う国立天王山学園東京本校の魅力を皆さんに知ってもらう為に企画されたバスツアーです。よろしくお願いしますねーー。」


「よろしくおねがいしまーーす!!」


「みんなは異能力って知ってるかな?」

「知ってるー」「私はあるよ」「僕もー」


「ふふふ、異能力は7年前に起きた【JAPANインパクト】をキッカケに子供達に現れた特殊な力の事を呼んでいるのは知ってるよね。」

キャーワーワー


 子供達はバスガイドの説明も聞かず、それぞれの異能力の自慢や見せ合いで盛り上がっている。


 そんな様子をバスの最前列に座る天王山学園の制服を着た2人の男女が笑っていた。


 学生や子供達の様子に少しムッとしながらもバスガイドはそのまま説明を続けていく。


「JAPANインパクトが起こり世界中に異世界に繋がる22の【大世門だいせいもん】と全国各地に【小世門しょうせいもん】が開かれたの。そこから【魔物】と呼ばれる存在が現れ世界を混乱に陥れていたのね。そんな中現れたのが異能力を持った当時8歳前後の子供達だったってわけ。」


「その時大活躍した人がここの生徒会長さんなんだよねぇ!」


「大正解!その子供達の活躍で魔物の脅威は一旦去る事になるんだけど、いつまた次の脅威が襲ってくるかわからないと考えた日本政府は、大世門と小世門の近くに魔物対策エキスパートを育成する学校を建てる事に決めたの。」


 バスがトンネルを抜けるとそこには大きな湖が見える。その中央には島が浮かんでおり周りには無数の長い橋がかかっている。


「そしてあそこに見えるはJAPANインパクトの跡地と大世門を中心に作った人工島。名前は【異世界島】。その中央にある大きな建物が日本の異能力育成機関の最前線【国立天王山学園】になりまーーーーす!!!」


「すげーー!」「デカい海みたい!」

「大きな建物」「この橋なげーーーー」

ワーワーキャーキャーー


 子供達が楽しそうに窓の外を見ているところにバスの無線から緊急入電が入る。


「こちら管理局、第14送迎車に連絡。訓練用魔物:魚人サハギンが2体とビックフィッシュが逃げ出しそちらに向かっていると確認。防御・安全体制に入られたし」

「了解、了解」


その連絡にバスの中に緊張感が走る。


 最前列に座っていた男子学生が女子学生とアイコンタクトをとり運転手に代わり無線をとった。


「こちら学生No.1102。ただいまより停車後、防衛行動に入る。」


「了解、君がいるなら安心だ。いやむしろ君に引き付けられたのかな?」


「先生、それは酷くないですか?」


 無線でのやり取りの後男子学生はそれぞれに支持を送る。


「ガイドさんは子供達の安全確認を、運転手さんはシールドを展開してください。マオはバスの上で見張りをしてくれ。」


それぞれはうなずき指示された行動に入る。


 男子学生はバスの前に立ち、神経を尖らせ魔物の気配を辿っている。


「右に人型と大型、左には人型のみか。これより【天城ヒサシ】防衛行動に入る。」


 その時左の湖から魚人型魔物サハギンが飛び出しヒサシに襲い掛かる。サハギンは手に持った槍で攻撃を加えようとするが、ヒサシは懐から出したナイフで軽くいなす。


 後ろからもう1匹のサハギンが串刺しにしようとしてきている。


「現れよ、風ノ精:フィア。」

(OK。エアロショット!!)


 ヒサシの掛け声と共に現れたフィアが後ろから来ていたサハギンへ風の砲弾を炸裂させる。サハギンは腹に風穴を空け粒子となり消えていった。


 動揺した前方のサハギンに対して、ヒサシはすかさず頭に銃弾を叩き込む。こちらのサハギンも粒子となって消えていった。


(あとはデカいのだけだね)

「ああ、交代だ。現れろ雷ノ精:ライガ。」

(ワオーーーン。)


 フィアと代わり呼ばれたのは雷狼【ライガ】であった。


「ヒサシ!バスの後ろ!!」

「ライガ!!」


 バスの後ろから飛び出してきた巨大魚ビックフィッシュが大口を開けてバスに襲い掛かる。


 ライガは一瞬でその間に入り込み雷を纏った爪で切り裂いた。

(雷爪斬!!)


 真っ二つに切り裂かれたビックフィッシュもまた粒子となり消えていく。


「殲滅完了。お疲れ様ライガ、戻ってくれ。」


ライガはそのままヒサシの手へと消えていく。


 バス内の無線を使いヒサシが報告を終えると、バスの中にいた子供達から感嘆の声が上がる。

「わー、すごーーい」「カッコいい!」

ワーキャーーワーキャーー


ヒサシは照れ臭そうにしながらもその声に応えた。


「へへ、えーと。ようこそ、国立天王山学園へ。」

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