話し合いの場

通された会議室。


ミューズは緊張で、鼓動が早くなるのを感じている。



話し合いの為にアドガルムの重臣が勢揃いしている。


他国の者はミューズだけだ。


その中でも最もこの国で力を持つ御方…国王アルフレッドが真っ直ぐにミューズを見ている。




こんなにもお世話になっていたのに、ずっと謁見が叶わなかったのだ。


ミューズはこの時、ようやく会うことが出来た事への安堵と、このような場で会うことになってしまった事に怯えていた。


挨拶もせず城に居座っていた事、勝手にティタンとの婚約を結んでしまった事。


報告は全てティタンがしてくれていたが、この時までずっと会えなかったのは、ミューズを認めていないからではないかと考えていた。




「ミューズと申します。この度は命を助けてもらい…「そのような挨拶はいらん」


話を遮られ、はっきりと拒否された。

ミューズはやはりお怒りなのだと後悔と反省で、身を固くする。




「それよりもずっと会いたいと思っていた」


アルフレッドから言われたのは、ミューズにとって意外な言葉。


「大事な息子の妻になる、大事な女性だ。本当は私もすぐに会いに行きたかったのに、次から次へとエリックが仕事を寄越すから、王妃ともども会いに行くことが叶わず…もっとお茶したりとか、一緒にご飯食べたりとかしたかったのに」


国王アルフレッドが怒っている。

息子に対して。


「あの…?」


困惑した。

一国の主のこんな姿を見て、戸惑ってしてしまう。


「そうですよ。わたくしだって会いたかったわ」

「王妃様?」

国王の隣の王妃もぷんぷんと怒っている。


「ティタンにも再三お願いしたのに、全然連れてこないんですもの。せっかく可愛らしいドレスや宝石を見立てようと思ったのに」


王妃アナスタシアはそう言い、息子を睨む。


「病み上がりのミューズに、そんな長くなる事をさせては疲れてしまう、と忠言したのです。ただでさえ母上の買い物は長い」

ティタンはきっぱりと言い切った。


「実際に国を動かすのは父上の仕事だから、仕方ありますまい。それとももう俺に譲って頂けますか?」

エリックは口の端を上げ、笑っている。




「ミューズはわたくしの娘になるのですから、良いものを与えたいじゃない。女性の用事が長いのは仕方ないのよ」


「まだまだエリックには譲らん。孫が生まれたら隠居して、楽しく過ごすんだ。今のうちに働いて私財を貯めておくんだから」


何だか変な親子喧嘩が始まってしまった。




「あれはいつもの事です。時間の無駄ですし、出来ることだけこちらで始めてしまいましょう」

国王達から少し離れた席にリオンが座った。


リオンに倣い重臣達も座る。

慣れてるようで、特に戸惑いもなさそうだ。


ミューズは末席にてマオの隣に腰掛けて様子を見ようと思った。




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