リンドールの親類

「さて、国を捨てるか」



リンドールのガードナー邸にて、ロキは不遜にそう言い放った。


もともとは違う家名であったガードナー領。

前領主が降爵、もとい公爵の地位を息子に譲って辺境伯領へと移った後で、ロキが新たな公爵となった。


かなり駄々をこねて、家名の変更を強引に国に了承させた。




新しい家名にしたのは、気分を一新するためという気まぐれな理由。




そんなガードナー家では現在家族会議中。


公爵のロキと、公爵夫人のアンリエッタ、長男フェンと次男キール、長女のシフが揃っている。


もともと少ない従者がここ最近更に少なくなっていたため、あまり良くない事になっているのだろうとロキの子どもたちは覚悟はしていた。



現在家族以外で屋敷の中にいるのはロキが設計した機械人形のみ。


ロキは莫大な魔力と、手先の器用さを生かし、魔道具師としての才能を開花していた。


作った魔道具を一つ国に献上した為、無茶な要求が通されたのだ。


しかし基本その能力はあくまで自分のために使うため、遊び心に特化した物が多い。




ガラクタが生まれるのもしばしば。



「父上。国を捨てるという言葉の真意を教えて下さい、そのままの言葉通りでよろしいのでしょうか?」

嫡子であるフェンが問う。



「リリュシーヌもミューズもいないこの国には、価値がない。捨てるというか潰すだな」

ロキは前王妃リリュシーヌの弟で、ミューズの叔父にあたる。


ロキはやれやれと言った顔をした。


「領地は?領民は?」

キールは心配になる。


国に背くとしても、今まで世話になった皆をどうするのか心配になった。


「守るさ。リリュシーヌ姉さんが生まれ育った場所だ。残してやらんと可哀想だろ」



ロキはぴらっと書類を見せた。


「家族皆、登城しろと言われたよ。名目はないが、リリュシーヌに連なる者を処分しようと、ついに乗り出したようだ」




「度々王妃から力を貸せって言われていたのを、のらりくらりとかわしていたんだが、そろそろあちらも頂点を取りに本格的に動き出したのであろう。

王妃もいつまでも病で倒れた国王を盾にし、今の地位を維持することは出来ないからな。

一端は退けた王弟殿下達がそろそろ痺れを切らすだろうから。

親父にも登城の手紙が来たそうだ、だからまず俺様たちから排除したいんだろう」




リリュシーヌが亡くなってから、それに連なるロキ達の待遇も変わっていった。



まず、王城にいるミューズに滅多に会えなくなった。


叔父であるロキも、祖父であるシグルドも、彼女と連絡が取れなくなった。


公務でリンドール王城に訪れても会うことが出来ない。


体調を崩しているの一点張り。




ミューズに会えない時が続いた後、国王暗殺という冤罪を被せられ、謀反を起こしたと国外追放の後に殺された、との話が突如知らせられた。


死亡が確認されたと伝わったのは、全てが終わった後。


親類であるロキたちにすら、事後報告だった。


ロキもシグルドも当然烈火の如く怒り、リンドール国に抗議した。


「あの心優しいミューズが、父親である国王に、毒を盛るわけがないのに」




ロキは怒りの笑みを浮かべていた。





反逆を疑われ、あれからずっと領地にて謹慎中である。



屋敷の外には見張りがつき、どこかへ行く際は一緒に来るため、出かける事すらままならない。



シグルドとの連絡も禁じられたが、ロキはとある方法で、頻繁に連絡はとっていた。






「潰すという話ですが、どのような?私達の魔力だけで、何とかなるのでしょうか?」


末子のシフが不安そうに俯く。

キールは安心させるように妹の肩をそっと抱いた。




「シフ安心しろ。俺様の娘だろ」

ロキは自信満々に言った。




ガードナー家の魔力は一般の者より多い。



普段使うことはないが、有事の際には使用出来るようにと、訓練はしていた。



戦に参加したことがあるシグルドから強く言われてた事もあり、この時まで皆真剣に訓練を行なっていた。

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