第三王子と従者

「僕はリンドールで色々調べ物をしていたのですが、ちょっと必要な情報があって、カミュに代わりにリンドール城内の調査ををしてもらっていたのです」


リオンは各国を外遊していると言っていたが、リンドールにも来ていたとは。


「リンドールにもいらっしゃってたのですね…今までどのような国を回ったのですか?」


ミューズは興味津々だ。


「そうですね…周辺国はもちろん、海の向こうにも行きました。色々とありますが、面白かったのは妖精がいる国ですね。様々な魔法を見せてもらいました」

ニコニコとリオンは答える。



「リオンは勉学にも、魔法にも優れている。俺はそちらはからっきしだから、リオンの方が兄上の補佐になるよう言われてるんだ」


ティタンも会話に加わった。


今日に限らず、ミューズのもとを訪れて、話をしに来てくれているのだ。


彼も暇などはないはずなのに。


ミューズに寄り添おうとずっと努力を続けてくれていた。




「ティタン兄様には、僕と違っていい面がいっぱいあります。優しいし男らしくて、頼りになります。エリック兄様からも一目置かれていますし、僕より余程信頼されていますよ」


リオンは笑みを絶やさず話している。

ティタンと話す時は特に楽しそうだ。


リオンがティタンを尊敬しているということは、目に見えてわかる。


「ミューズ様の話も、ティタン兄様やマオから聞きました、とても優しく美しい方だと。お話以上に心も仕草もお綺麗で、僕もドキドキしてしまいますね」


「そんな事…」


自分より美しい男性にそう言われると恥ずかしくなる。

思わず頬が赤くなる。


「ミューズは、リオンの方が好みなのだろうか?」

ミューズの様子を見たティタンが少し拗ねたようにそう言った。

「そういうわけではありませんが…」


弟にまで嫉妬してしまう子どもっぽいティタンの様子に、ミューズは苦笑してしまう。


良く言えば素直なのだが、悪く言えば幼い

過ごす時間が増えれば、色んな面がお互い見えてきていた。


ティタンは王族らしからぬ事ばかりをするが、とても人間味のあふれる男性だ。

裏表が少ない。




リオンは兄の、少し意外な姿を見て、絶やさぬ笑みの裏側で思考を巡らせていた。




ミューズはティタンを利用するような女性ではない。

寧ろ利用したくないから、受け入れないのか。


(仲睦まじくてお似合いなのだけどなぁ)


外から見たリオンの単純な感想だった。




「ティタン兄様。ミューズ様は兄様を好いております、僕は二人を応援していますよ」


「そうか?」

ティタンは照れながらも嬉しそうだ。

ミューズも何と言っていいのか、顔を赤くし、俯いてしまう。



「ねぇマオ。君もやきもきしてるのだろ?二人の関係に」

「大いにしているのです。早く収まってほしいのですが」

リオンに小声で話掛けられ、マオはため息をつく。


その話しぶりにリオンは困ったように話す。


「ティタン兄様が婚姻しなきゃ、僕も結婚出来ないしなぁ」


兄より先に婚姻するのは出来ない、という思いもある。




「リオンもそういう相手がいるのか?」


ティタンは驚いている。


「僕ももう少しで成人だからね。色々考えてるよ。父と兄からは了解を得たから時期を見てアタックするつもりだよ」


リオンは目を伏せる。

「実るかはわからないけどね」


ミューズはリオンのその寂しげな様子に、応援したくなってしまう。



自分のことは棚にあげて。


「ぜひその方と結ばれるよう、お祈り申し上げますわ。出来ることがあれば、ぜひお力添えいたしますので」

「ありがとうございます、ミューズ様」




(まずはあなたが義姉上となってくれれば、話は早いのですけどね)


心の中でこそりと呟いた。


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