追いかけたりそうでなかったり

 それから、穏が夜に外に出ると、時々、嵐に会う。

「こんばんは」

「うん」

 今日もまた、挨拶をかわしてから、一緒に走っていい? と許可をとってから、隣に並ぼうとする。ダイエットという名目ではあったが、もっと本質的にともに走ってみたいという衝動が心の底から湧きあがっていた。

 嵐の走りは頻繁に速度が変わり、ある時は圧倒的に引き離されるし、そうかと思えば唐突に、のろのろ歩きになったりもした。

 そういう練習法なのかと尋ねると、嵐は、

「気分だよ」

 の一言で押し通した。実際、これまでの挙動からみてもそうなのだろうな納得できた。こと、勝手についてきている身の穏としては、競争意識の欠片もない嵐の態度は張りあいがないことこのうえなかったが、それでも一緒に走りたいと思った。感情の源泉がどこにあるのか、穏自身もよくつかめていない。

 すぐ後ろについた際、街灯に照らされ仄見えた稚気溢れた嵐の顔。いいなぁ。わけもわからずそう思いながら、息を切らし夜を駆ける。

 

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ラニングフリー ムラサキハルカ @harukamurasaki

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