第39話 超大型モンスター
——ここは二重カルデラの頂上、青ヶ島。あれから何日が経ったのだろうか。
『ゴライアス』
『Lv.72』
デコボコな坂道では、薄い黒色の煙がぷしゅーと放出され続けている。濃淡の黒に染まった草本も、一面に広がっている。
『
紫色に光った技名表示と敵の
「死ねよ……死ねよっ……死ねよっ!!」
はらし難い
そうでもしないと平静を保っていられなかった、すぐにでも頭がおかしくなってしまいそうだった。
最近は、ずっとこうしてワープゲートを転々としながら超大型モンスターのスポットを荒らし回っている。
〈ステータス〉
〈スキル〉
スラッシュ/スライス/グリンドバイス/スピニングレイド/ネオサイクロン/リバースインパクト/リバースリフレイン/アクスブレイク/ブレイクスルー/スライドウィープ/ウェーブムービング /シェープソルブ/ランディングピアス/クローズクロス/ラッシュブロー/ソニックブレイブ/リボルブショット/ブレイクエントロピー/殺戮の宴/?????
「流通屋、次の目標はどこだ……?」
ボロボロの
「どうも、毎度ありです〜! お困りとあらば
「……いいから、早く」
誰とも関わらないと言った矢先。こうして流通屋とは顔を合わせてしまっているわけだがこいつは例外、別枠だ。
流通屋が”超大型モンスター”の出現場所とワープゲートの所在地の情報を提供する代わりに、俺がドロップアイテムを流通屋に
俺は強いモンスターを狩って経験値を再能率で入手することにしか興味がなくて、流通屋はレアドロップアイテムにしか目がない。
つまり
「私たちって、実はじつは意外と最高のコンビじゃないですかねえ〜?」
「……そうかよ、勝手に言ってろ」
こうやって、互いに利用しながら俺は常に一人で戦っている。たとえ流通屋だとしても、巻き込むわけにはいかないだろ。
バレたら駄目だ。この本性は人に知られたらいけない、絶対に隠し通さないと。
——巻き込むわけにはいかないんだ。
関係ない人に俺の災難を押し付けるわけにはいかない、だから俺は心を鬼にする。
「……じゃあ次行こうぜ、本日三匹目だ」
「了解、いつでも準備OKですよ〜!!」
首に巻いた青色のマフラーをぎゅっと握りしめて歩く。帰りのワープゲート地点を目指して逆風の中、坂道を下った。
——ワープゲート。
もうこの感覚にも慣れた。レギオンの
『
『Lv.76』
ここは新潟の
だがここは並行世界だ。水面は灰色で鈍く、映し出されるのは闇夜の青空。
「経験値、経験値さえあればいい。俺は誰よりも強くならなくちゃいけないんだ……」
俺の目に映っているのは、その敵が本当に強敵であるかどうかだけ。
見るものをゾッとさせるギョロッとした百々目鬼の目は、一つ一つが違う動きで違う方向をキョロキョロと見渡し続けている。
「気持ち悪っ……」
まあ、吐き気が出るほど気持ち悪いのは俺も大して変わらないけど。
連続斬突撃の『ブレイクエントロピー』は、百々目鬼の眼をぶちぶちと潰していく。
頭上には大技の紫色文字表記『ブラッドアイ』が、鬼の眼光は赤黒く光った。
「その技を使われたら身体能力が激増してしまいます、発動される前にさっさと倒しちゃいましょう……!!」
上の方から聞こえる声。流通屋は離れた場所からアシストや援助をするので、不思議とピンチになることが
(……ったく、頼んでもないのに。)
鬼はぐるぐると紅色の腕を振り回しては、四方に血液を飛ばして攻撃する。
「その目は、お飾りかよ……?」
もう一度、双剣の持ち手を丁度いいフォームに調整してぎちっと握り締める。
こいつは鬼だけど、人間であれば腹に値する部位に『リボルブショット』は
「……どうやら、腹が弱点って訳でもなさそうだな」
鬼は汚らしい
「そりゃそうか、化け物はそんなもんじゃ死なないよな……」
また一つ一つと棚田の段差を降りて、走って飛んで、追撃を狙った疾走。
『レッドアイズスモッグ』の大技、赤紫色の煙はあらゆる目から超広範囲に放出される。俺は棚田の狭い足場をみしっと踏み締め、ひょいっと飛び上がった。
狙うは一番大きい額の目ん玉。双剣を降りかざす瞬間、鬼は手を前に出してまた血煙を放出する予備動作を見せた。
「——もう遅い」
【 ウェーブムービング 】
「ひゅ〜、相変わらず
流通屋はいつもひっ付いてくる、どれだけ引っ
そうしていつもの交換、今の俺はさながらボスドロップの受け渡し業者。ところが自分の
「……うん、まあいいんだけど。モンスターさえ殺れるのなら」
「……え、なんか言いましたか?」
流通屋よ、なぜお前はいつもそんな気分ルンルンで居られるんだ。
「——いや、何でもねえよ」
見上げる空はいつも真っ黒で、何も先が見えないというのに。
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