思わぬ再会から
第10話 初恋の弾丸
俺は再び通学路を歩き始めた。出会いはまたすぐそこに。
いきなりだった。曲がり角を曲がるとその先には、どこか見覚えのある女の子の姿。
「そこ、動かないで……!!」
女の子の叫び声。十メートルほど先、俺の顔面には、ライフルの銃口が向けられている。静けさ、これは極度の緊張状態。
「待て待て待て、俺は敵じゃないぞ、多分……!」
両手を上げて敵意がないことを示そうとするが、その右手には剣が握られていた。
「動かないでって言ったでしょ!!」
ライフルからは『ミドルバレット』が放たれる。その灰色の弾丸は、しっかりとこの腹を
危険を察知したこの体は、腕の筋肉へと電気信号を走らせた。おんぼろな剣は水色に光る。『スライス』で弾丸は上から真っ二つ。
「うそっ、斬られた……!?」
女の子はあわあわと慌て出しはしたが、すぐに息を整えて、また銃口をこちらに向けて狙いを定めた。
「だから、俺に敵意はないって……!!」
左手を横に何度も振るが、やはり一向に聞く耳を持ってはくれない様子。
今度の銃撃は乱弾だ。青色に光った弾丸は『ミストバレット』、数十に分裂した後に勢いを増し、雨のように降り注ぐ。
おんぼろな剣をコーティングしたのは鋼のオーラ、『アイアンウォール』を頭上に横向きで
「あなた、何者……!?」
やはり、この世界での痛みは並大抵のものではない。技は現実離れしているのに、痛覚はそのままとか、ほんと意地悪すぎだよ。
「怪しい人は、誰一人として通さない。それがウチのルール!!」
警戒心が解かれるわけもなく、ライフルは次の光を溜め込み始める。
(はあ、仕方ない……!)
到着点はライフル、ズレは許されない。一目散に突き出した剣の突きは『レイピア』、尖った剣先は、集約した一撃を描き出す。
「あな、たは……?」
ライフルはポトリと落ち、パタパタと地面で数回小さく跳ねて止まった。俺は女の子が倒れないようにひょいっと片手で
ライトブラウンの髪、声は透き通っていた。肌の血色も良く、その時の俺には目の前の
「本当に、敵じゃないの……?」
「ああ、さっきからそう言ってるだろ」
「えっと、私たちって初対面だよね……?」
俺は鋭い推察にぎくりとするが、それを顔には現さなかった。
「ごめん、変なこと聞いちゃって。なんか会ったことがあるように感じたんだ、デジャブって奴だね!」
「そ、そうだな……!」
俺は一つ嘘をついている、俺はこの女の子を知っている。それも記憶の中にくっきりと鮮明に覚えているんだ。
その太陽を照らすかのような明るい表情、いつも元気いっぱいで、マイペースな女の子だった。でも今の夏は、少し元気が無い。
名前は
うかうかしているうちに、この子には彼氏が出来てしまった。そうなってしまったら俺にはもう、どうする事もできなかった。
略奪愛なんてことは、したくなかった。だって、夏の幸せを第一に願ったら———
いや、これは俺がいつまで経っても本当の気持ちを言い出せなかったことの言い訳に過ぎないのかもしれないが。
「よろしく、夏さん———」
だから、これは恋人との再会なんかじゃない、”新たな出会い”だ。
「うん、よろしくね。
夏は小さな笑顔を見せた。手を引き合う、出会いの握手だ。
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