第11話 夢駆け作者、目撃する
やってしまった。
翌日のことである。お昼ご飯を買いに行くぐらいなら地下から出ていいだろうと思ったのだ。どうせ思い通りになるような夢の中だしなんとかなると。
しかしながら、夢も現実もそんなふうにうまくはいかないらしい。コンビニの帰り道、人通りがない通りに差し掛かった時だ。たまたま少女が車に乗せられて連れて行かれようとしているのを目撃してしまった。あー、起こったよ事件、と頭の片隅にいるケイマに伝える。こう、なんとか作者と主人公ならば以心伝心できないだろうか。そしてどうにかしてほしい。
車の扉を開けている人物の性別はわからない。某国民的アニメの主役である大泥棒の相棒がかぶっているような帽子を被ってスーツをきている。一緒にいるのは黒いコートを着た青年に見えるだ。こちらに気づいた青年はどう見ても昨日会った中村くんです。ありがとうございます。彼がいるのであれば、もう一人は帽子の影で顔が見えないが大体は察しがつく。女の子なのか男の子なのかわからないあの生徒だろう。逃げるが勝ち、と立ち去りたいが多分背中を向けた瞬間撃たれると思われる。私は黙って彼を見つめる。向こうも何も言わない。しばらくの沈黙、それを耐えかねて私はヘラリと笑った。
「三人でドライブにでも行くの?」
うーん、拭いきれないこの死亡フラグ。眉間にシワを寄せて彼は口を開く。
「……そう見えるのか?」
「えっ、それ聞いちゃう? いや、免許とかどうなってんのかなとか、女の子意識失っちゃってるよね、とかは確かに思うけどさ、せっかく色々濁したのに……でも、少年。そんなことして君が望むものは手に入るのかい?」
「なんだと?」
「君がそれをすることによって、色々壊れてしまう気がするんだけどさ、それで君はいいの?」
そう言ってただ真っ直ぐに彼を見る。何か感情を閉じ込めるように彼は一度ぎゅっと目を瞑る。帽子を被った人物が彼を見つめた。
「始末しますか」
おっと、一発目の発言から不穏。目を開いた彼は帽子を被った人物をみた。
「……やれ」
わお。素早く構えられた銃に私は死ぬな、と思う。引き金が引かれる、と思った瞬間、私の視界がぐるりと回った。というよりは誰かに体当たりされて体当たりした相手ごと路地に転がり込んだ。小さな音がして壁に穴が空くのがみえる。
「コワッ……ありがとう、ケイマ。助かったよ」
「だから出歩くなって言ったのに」
「いや、お昼ご飯買いに……」
車が急発進する音がする。そのまま路地から出た車は猛スピードで角を曲がると大通りに向かって走り出した。その際に恐らくケイマと中村くんの視線があったのだろう。そして、きっと後部座席にいる女の子も見つけている。
「
ケイマはそう小さくぼやいてその車を見送った。
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