第52話 それぞれの告白

 「昔ね、高校の頃。恭ちゃん、神田くんにだけ厳しかったでしょ。ごめんね~」

センパイは、まゆ毛を八の字にして、申し訳無さそうに言った。

確かに俺、めちゃめちゃ怒られてた記憶だけど、

俺だけ?だったの?


「あいつ、菜月のこと好きだって顔に書いてあるって、気に入らない!とか言ってさ、公私混同しちゃってて、部長なのにさ」


「えっ?」

そんな感じ?


「菜月に告白する覚悟も、俺に立ち向かう勇気もないくせに、ただただ好きです!みたいな顔して見てるとこがイラつくって。

だけど、もしも、もしもだけど、神田が告白してきたら、真剣に考えてやれよ。

でも、たぶん俺 全力で叩き潰しちゃうけどね。

って、恭ちゃん言ってたんだ」


「あっ、さっき “”神田 やっとかよ“” って、若保先輩言ってたな。そうゆう意味?」

と、ひらりんが言った。


「あと、 “”だってよ!“” って、瀬原田先輩にニコッとして帰ってったな」

と、真島が言った。


「うん。そう。

恭ちゃん、真剣に考えてやれって、そう言いたかったんだと思う」


えっえっえっ?真剣に考えてやれ?なにを?


「神田くん、みんなの前だけど、もう1回ちゃんと言ってもらっていい?」

と、センパイは俺の方を向き、正座した。


はい??

もう1回ちゃんと、とは?

さっき、言ったことさえ、ちゃんと覚えてないのに。

俺もセンパイの対面に、しっかりと正座した。


なんで俺、今、みんなの前で告白する流れなのか、ちょっとよくわかんないけど、こんなお膳立てしてもらって、逃げてる場合じゃねーよな!!

深呼吸した。


「瀬原田センパイ、俺は、こんな情けない男ですが、センパイのことは高校の頃からずっとずっと大好きでした。いや、大好きです!

俺と、結婚を前提につきあってください!!

お願いします!!」


俺がそう言うと、センパイは、パァーっと明るい表情をした。

センパイの周りに、ふわっと花が開いたようだった。


センパイは、うしろを振り向き、湊の顔を見た。

「みなくん!言っちゃっていい?」


「ってゆうか、先輩!ちょいちょい出る、その “”みなくん“” 呼びは、何なんすか?」

と、ひらりんが聞いた。

 

あぁ、あははっ!と、センパイと湊が同時に笑った。


「俺ね、瀬原田さんとつきあってんの」

と、湊は言った。

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