第51話 ひざ枕

 髪の毛をなでられたような気がした。

ウゥ……

なんか、適度に柔らかい枕。

左側に寝返りをうった。

ん?

なんか、顔にあたる感触が ぷにぷにして気持ちいい。

なんのニオイだろう。

いいニオイ。


「かんかん 目~覚めた?」

ん?湊の声?


パチっ

目が覚めた。

見上げると、瀬原田センパイの顔


「わっ!!!!」


びっくりして起き上がろうとして、センパイを押し倒した。

俺は、ひらりんに頭をボコっと一発殴られ、起こされた。


「かんかん、どさくさ紛れに先輩 押し倒してんなよ~!!」

真島が笑って言った。

「おまえ!何気に今 瀬原田ちゃんの胸もんだだろ!!コノヤロー!!」

と、ブッチさんが立ち上がった。

「えっ!えっ!揉んでない!揉んでないです!

この状況がわからなかっただけ~!!」


「とりあえず、これ飲めよ。」

はい、と義徳がグラスを差し出した。

真っ赤な液体

トマトジュース?

「貧血っぽかったからな。とりあえず血を補給しろよ」

血……?

言われるがままに、トマトジュースを飲み干した。

「救急車案件かと思ったけど、体育の先生いわく軽い貧血かなって。大丈夫そうって言うから、担いで居酒屋に連れて来たよ」

と、義徳が言った。

あ、ほんとだ。

周りを見たら見覚えのある いつもの居酒屋の小上がりか。

で、オレ、瀬原田センパイのひざ枕で寝てたの?

いや、意識なかったとはいえ、ひざ枕って!!


「どっか痛いとこある?」

と、ひらりんに聞かれたから、

「殴られた頭が痛いくらいかな」

「バ~カ!痛いほど強く殴ってねーわ!」

と笑った。


「神田くん ありがとう」

センパイが俺を見て言った。

「えっ?」

「恭ちゃんに、言い返してくれて……うれしかった」

うれしかった?

「いやいやいやいや!すみません!なんか、キレちゃって!興奮して怒鳴ったけど、何を言ったか、なんかあんまり覚えてないんですけど」

「覚えてないんかい!!」

真島と義徳が声を合わせた。

「俺がセンパイを守るから!!って言っただろ?そう言った途端にぶっ倒れてちゃ世話ないけどな」

あははっと、ひらりんが笑った。


言った……言ったな……確かに……

マジで恥ずかしいんだけど……


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る