第50話 最悪の再会

 「菜月?」


声の主は、すぐに わかった。

最悪の再会。


若保先輩


「菜月、元気そうだな」

相変わらず、低くてシブい声。


「うん」


「瀬原田ちゃ~ん!ダレ~?」

うしろから、ブッチさんが聞いた。

センパイは、振り向かず 前を向いたまま

「元……カレ……」

と、言った。

「えーーーーっ!!こいつが 噂の元カレかよ!!」

と、ブッチさんがデカい声をあげた。


「菜月、どうしてるかな?って思ってたけど、

こんな男子6人に囲まれて、ほろ酔いとは、

フッ、お姫様気分だな~」

7年ぶりに会ったけど、クールな顔してイヤミを言うところが、変わりないな。


「恭ちゃん!わたしね、今までモテたこととか

1度もなかったけど、はじめて 今がモテ期なの。

みんな、わたしのこと好きだって!

恭ちゃんがいなくても全然 へーきだから!!」


言ってる内容とは裏腹に、センパイの声は、

震えてるように聞こえた。


「そっか、それは良かったな~。

で? 誰が1番上手いんだ? 菜月を気持ちよく

イカせてくれんのは?」


カチンときた!!

いや、ブチッと何かが切れた。


俺は、瀬原田センパイの前へ飛び出して、つんのめって若保先輩の前で転んだ。


「神田、相変わらずだな」

はっ、と笑った。


「センパイを侮辱すんなよ!!

瀬原田センパイは、そんな軽い女じゃねーよ!!

ってか、10年も付き合ってたのに、そんな言い方かよ!!

瀬原田センパイは、もうアンタの所有物でもなんでもねーんだよ!!

俺が!センパイを守るから、アンタはもう近づくなよ!!」

すっげーデカい声で俺は言った。


「あははははっ!!神田!!やっとかよ。

それにしても、せめて立ち上がってから言えよ。土下座してるみたいで、カッコ悪りーぞ!」

あははははっと、また笑った。


「菜月、だってよ!」

「……うん……」

「じゃぁな」

そう言って歩いて行った。


「じゃーな、じゃねーぞ!!カッコつけんじゃねー!!逃げんのか~!!」

歩いて行く若保先輩の背中に向かって叫んだ。


「かんかん!さ!立てよ!」

そう言って、湊が手を伸ばした。


う、う、うぉ~~~~!!

ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……

叫んだだけだけど、超 息が上がってる。

血圧上がって、下がって

心拍数上がって、下がって

涙と鼻水がドバーー!!っと出てきた。


義徳が俺の前に立ちひざで座り、上着のポケットからハンドタオルを出して、俺の涙や鼻水を拭いてくれた。

「かんかん、かっこよかったよ」

小さくそう言って、微笑んだ。


カッコいい わけない……

むしろ、むしろ、超カッコ悪い……

いまだに こうして、手もヒザも地面につけて、へばりついてるんだから……


急に、クラクラして、目の前が真っ暗になった。


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