第47話 墓参り

 秋祭り当日

真島が、帰ってきた。


「別にみんな墓参りまで付き合ってくんなくてもいいんだけど……な……

いや……じゃなくて、ありがとう」

真島が静かに言った。

「なになに?真島!しおらしいじゃん!キュンときたわ!!あははっ!!」

と、ひらりんが笑った。

「キモっ!!」

真島は、首のうしろをかきながら、テレたように下を向いた。

「ちゃちゃっと墓参りして、早く祭りに行こうぜ!!現地でブッチと先輩と合流だから」


相変わらず、真島はお父さんとはうまくいってないみたいで、こっちに帰って来ても実家に帰らず、日帰りか、ホテルに泊まるか、義徳んちに泊まるかだ。

去年、お兄さんが結婚したと聞いた。


家族ってなんだろうな。

うちも、中学生の時に両親が離婚して、父親は家を出て行った。

俺は母親と、そのままマンションに暮らしていた。

母親は今もそのマンションに1人で暮らしている。

あとで聞いた話によれば、父親は長い間 浮気をしていて、離婚後その不倫相手と再婚したそうだ。

俺には兄弟もいないから、母親だけが家族だ。

愛し合って結婚して、子どもをつくったのに、なんで不倫とかするんだ?

全然わかんねー……

他に好きな人ができたら、もう母さんのことはどうでもよくなってしまったのか。

1人息子の俺のことも、どうでもよくなってしまったのか……

今は、きっと再婚相手との間に何人か子どもが生まれているのかもしれないな。

父親にとっては、その家庭が、本当の家族なんだろう。

こんな、母子家庭の俺は、普通に結婚して、普通の家庭をつくることができるんだろうか……

自信ない……

俺が独りよがりでセンパイのことが好きなだけで、センパイを幸せにすることなんてできるんだろうか……

そんなことを考えると、やっぱり俺にはセンパイに告白する資格さえないんじゃないかと思ってしまう。


 真島のお母さんのお墓がある霊園を5人で歩いた。

「かんかん、母さん死んだ次の年さ、オレ

もうこっちには帰らないって思ってたんだ。

そしたらさ、かんかん電話かけてきて、絶対帰ってきて!!って。

お父さんには会わなくてもいいけど、お墓参りには行こう!一緒に行こう!

俺は、真島に会いたいし、真島のお母さんも真島の顔を見たいはずだから!!絶対帰ってきて!!って、メチャクチャ意味不明なこと言ってさ~。あははっ!それがすげー必死なの!!

それ、マジで、嬉しかった」

と、真島は笑った。

「かんかんて、そうゆうとこあるよな!すげー強引にもってくとこ!良い意味でな!」

と、ひらりんも笑った。


俺、そんな感じで言ったんだっけ?

あの時は、なんだか、もう真島と一生会えなくなるような気がして、なんかすごく怖かったのを覚えている。


お墓は、きれいに手入れされていて、花もいけられていた。

真島のお父さんか、お兄さんがもうすでに来たのだろう。

それには触れず、真島は手に持った木桶の中の水をひしゃくで取って、お墓にそっとかけた。


俺たちは、みんなで手を合わせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る