第34話 アウトレットモール 2

 アウトレットモール内にあるフードコートみたいなところで3人でランチした。

「なんか、こうゆう感じ 大学生の時以来かも」

センパイが俺らの顔を見て、ちょっと首をかしげた。

かわいい!!超かわいい!!

そんなこと思ってしまう俺は、なんの反省もしてないのか?って、不謹慎かもしれないけど。

だってセンパイのかわいさは、そんな落ち込んだ気持ちを、いとも簡単に凌駕してしまう。

こんな風に対面で、この距離感で食事をするなんて、夢のようだ。


「こうゆう感じって、どうゆう感じですか?」

石焼ビビンバをかき混ぜながら、湊がセンパイに聞いた。

「大学の時にね、わたし、テニスサークルに入ってたの。恭ちゃんはそれには入らなかったから、サークルの人たちとわいわいとランチしたりね。男の子も大勢いたの。楽しかったなぁって」

にこっと笑った。

「それはオッケーだったんですか?若保先輩的に?」

と、俺は聞いてみた。

若保先輩の名前を出すのはどうかな?


「あ~~。飲み会はNGだったけど、意外と自由だったよ。逆にわたしが恭ちゃんを追いかけまわしてたって感じ」


ふ~~…………そっか…………



 ランチの後も、また別行動で、センパイは買い物をした。


俺も、湊とメンズの服屋を見て回って、真島が着てそうなシャツとパンツを買ってみた。

真島のより、たぶん全然安物だけど……


「湊は、なんか買わねーの?」

「俺、マジでここへ来るつもりで 家出てねーから、財布の中身も見てなかったけど、5000円しかなかったわ~。まぁ、メシ代だけでもあって良かったって感じ」

「そっか。でも、俺金いっぱい持ってきたから、おごるよ!」

「あははっ!かんかん、先輩の買い物も全部払うつもりだった、とか?」

えっ?

「図星って顔!!あはははは~!かんかんは、わかりやすいなぁ!」



買い物するの久しぶりだから、いっぱい買っちゃったって、センパイはショップの袋を両手に持って戻ってきた。


結局、俺はセンパイに、なんにもおごることも出来なかった。

そもそも、センパイと一緒に行動してないから、どんな洋服を買ったのかもわかんないし。

昼飯は、フードコートでそれぞれ払ったし。

高速代はETCだったし。

ガソリンスタンドでガソリン入れたけど、ピッてカード払いみたいなのでセンパイが払っちゃったし。

俺が払います!!なんて、言えるタイミングがまったくなかった。


俺は、頼れる男でもなく、サラッとおごれるような男でもなく、行きも帰りも運転するわけでもなく、センパイを楽しませることも、何ひとつできなかった……


俺は、センパイと一緒にランチできただけで、夢のように嬉しかったけど、センパイにとっては、

“”ただ後輩と買い物に行った“” 

ってだけの、何年後かには忘れてしまうような、思い出にもならない出来事だろうな。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る