第22話 寄ってたかってヤリまくる

 カウンターで4人で並んでラーメンを食べた。

なんとなく誰も何も喋らずに、ただラーメンをすすった。

今、8時過ぎ。

今ごろ瀬原田センパイは、酔いつぶれて寝てしまってるんじゃないだろうか。

さすがに、酩酊状態のセンパイのパンツを脱がして、寄ってたかってヤリまくる、なんてことにはなってないと思うけど……

さすがにな……

さすがに、 な……

はぁ……

朝陽建設、そこまで野蛮な会社じゃないよな。

大手だし。

そんなことを考えながら食べたラーメンは、ただ食べたと言うだけで、味もよくわからなかった。


順番待ちしている客がいたから、食べ終わった

ひらりんと義徳が先に店を出た。

3分遅れくらいで、俺と湊も店を出た。


「やっぱ、ここのラーメンが1番旨いな~!」

そう言いながら、湊が空を見上げた。

ボン!ボン!と大きく響かせて、高く高く上がった大輪の花火が空を紅く染めていた。

湊、ラーメンを味わえたんだ。

余裕だな。

ってか、俺がヘタレなだけか……


義徳がコインパーキングから車を出してきてくれた。

「とりあえず、乗れや」

“”桜花堂“” と デカめの文字で横っぱらに書かれている大きなワゴン車。

これで大量の注文品を配達したりもするそうだ。


「さ~てと!!腹もふくれたところで、作戦会議!」

ハンドルを握りながら義徳が、俺たちにそう言った。

「今、まだ8時半だけど、もう金満楼に向かって、店の前に横づけして待とうと思うけど、いいか?」


「ってか、そうしてくれって頼もうと思ってたよ」

と、湊が言った。


「飲み会9時までって言ってたけど、解散になる前に、早めに連れ出されるってことも、なきにしもあらずだからな!」

と、ひらりんが真顔で言った。


ちょっとちょっとちょっとちょっと!!

怖いこと言わないでくれよ!!

ってか、みんな冷静。

俺だけか?こんなオロオロしてんのは。


金満楼の前に8時40分に着いた。

だいたい、会社の飲み会なんて言ったら、9時にお開きになったとしても、なんかダラダラとしていて、じゃ!二次会行くぞ~!なんて席を立つのが9時20分くらいだったりする。

そんな普通の流れでセンパイが店から出てくるのであれば、俺たちはここから30分以上待たされることになる。

でも、それでいいと思っていた。

センパイが、初めて参加する会社の飲み会を楽しんで、そして家まで無事に送り届けることができるならそれでいい。

1時間だって待てるさ。


って、そんなことを考えながら、店の入口を見ていると、ガタイのいいデカい男にお姫様抱っこされて瀬原田センパイが出てきた。 


マジか!!!!

俺はスライドドアを開けて、転げ落ちる勢いで車から降りて、その男の前でつまづいて転んだ。

「おいっ!!!!」

俺は自分でも、びっくりするくらいの大声を張り上げていた。

これ、完全にケンカ売ってるヤツみたいじゃん!!

いや、ビビんな!俺!!


「は??」

その大きな男は、足もとに転がっている俺を見てにらんだ。



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