第8話 ひざまくら

 なんてゆうのか……意外だった。


俺たちが、高校生になり、弓道部に入部した時には、もう瀬原田先輩と若保先輩は付き合っていたから、いつから2人が付き合っていて、どちらからなんて考えたこともなかった。

だけど、男子と話すのはNGとか、俺の菜月に手を出すな!!みたいな強いプレッシャーを感じていたから、若保先輩が瀬原田先輩にベタ惚れなんだと思っていた。


だけど、告白したのも、思いが強かったのも、

瀬原田先輩の方。

束縛されることで、愛されているんだと思いこんで、すべて従ってきた。

一種の洗脳か。

実家に戻って、やっと少しずつ、呪縛がとれてきた感じなのかな。


センパイは、ひとしきり喋り、笑い、飲んで、食べて、突然 湊の肩にもたれかかった。

「寝てる」

湊は、小さな声でそう言うと、そっとセンパイの頭をおろして、膝枕で寝かせた。


ひざまくら!!

マジか!!

エロい!!エロすぎる!!

羨ましい!いや、でも俺はムリ!

下半身が、暴走しちゃいそう!


真島が立ち上がって、羽織っていた長袖のシャツを脱いでセンパイにかけた。

座りながら、

「俺、どっちかってゆうと、この話 若保先輩に共感しちゃうんだけど。

若保先輩って、実際背が高くてイケメンだったじゃん!典型的な塩系のスッとした顔でさ、弓道すげー強くて、頭も良くて、モテる要素いっぱいの人だったじゃん、でも、モテてはいなかった。

なぜなら、瀬原田先輩という彼女が近くにいたから。

こんな美人と戦おうなんて女の子は まぁいないわな。

みんな、諦めて 若保先輩に告る女なんていないワケ。大学もそう。

オレ このままこの女しかいないのかなって思ってたところで、会社の若い子をちょっとつまみ食いしてみたら、びっくりするくらいの いいセックスだった。もっと、いろんな女とセックスしたい!ってそんな気分になっちゃったんじゃね?

人生たった1人の女としかヤレないなんて、つまんね~だろ!!」


「さすがに、やりチン修司様らしい考え方だな」

と、義徳が言った。

「だけどさ、まぁ俺も若保先輩擁護派って方かな。

結婚しててそれをやったら、不倫とかになっちゃうけど、恋人関係って、それ以上でもそれ以下でもないとも思う。結婚前のお試し期間にすぎないだろ」

と、義徳は続けて言った。


「顔の好みも、性格も、食べ物の志向も、セックスもすべてがお互いに理想通りなんて人いるのかな。多かれ少なかれ妥協して折り合いつけて、付き合ったり、結婚したりするんだろ。

若保先輩にとっては、瀬原田先輩じゃないって判断したんだろうし、瀬原田先輩にとっても、若保先輩以外をこれからは見れるってことだから、ほんとに合う人を見つければいいんじゃないのかな」

と、湊が言った。


「難しいよな~。俺も、ほら、奈々子、まさか浮気されるなんて思ってもいなかったけど、あれがたった1回の過ちだって 許してやれるくらいの器の大きさだったら 良かったけど、な……」

と、ひらりんはグビッとビールを飲み干した。

ひらりんは、2年前に4年付き合った彼女と別れていた。

俺は、大学時代3人の彼女と付き合ったけど、どの子も長続きしなかった。

で、彼女いない歴4年になる。

恋愛は難しい。

付き合ってみないと わからないこともある。

時間の経過と共に、ちょっとずつ気持ちがズレて、すれ違ってしまうこともある。

大好きだって思っていても、手に入れた瞬間に、気が変わるってこともあるだろう。

恋愛は難しい。



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