第2話 サーセンした~

 「かんかん!生きてる?」

電話がなったから慌てて出て、誰からの電話なのかも見なかったけど、声でわかった。

高校時代の友達の坂北湊。

「生きてるけどさ~、寝てたんだけど。なに?」

「何じゃねーよ!おまえ、ラインたまには確認しろよ!300くらい未読じゃね?」

「は?そんなわけねーじゃん!!」


そう言いながらも、ラインて いつチェックしたっけか?って思って見てみると、マジで355件未読で、弓道部のグループラインに300ついていた。

「あ、わりー。ここ何日か、仕事ちょー忙しかったから、あとでライン見とくよ」

「ってか、用件は、今夜7時に高校の校門前集合な!」

「ウッス」


今夜7時ね。

ってか、土曜日だし、もう少し寝かせてくれよ。

マジでヘトヘトなんだから。


高校の弓道部の仲間とは、卒業後も年に何回か飲みに行く付き合いだ。

俺らの学年は人数が少なくて、ってか、ドンドン辞めてったから、最後に残ったのは5人だった。

湊は、面倒見が良い しっかり者。

俺らの学年の部長をやってくれてた。

ラインを見てみると、10日前から俺は開いてなかったみたい。


いつもいつも飲み会の幹事をやってくれる

『ひらりん』こと平林治が、夏の飲み会の都合をみんなに聞いて、俺以外の都合で今日に決定していた。

みんな俺にライン電話も何回もかけてくれてるけど、なんだか全然気づかなかった。

最初 どうしたんだ?って心配していたみんなも、最終的にはかなりお怒りムードになっている。

今夜行ったら、とりあえず全力の謝罪からか。


俺らの飲み会は、いつも高校の正門前で待ちあわせるのがお決まりだ。

ひらりん主催のサクラを見る会、ホタルを見る会、モミジを見る会、雪を見る会など、四季折々の情緒を重んじている、な~んてムズカシイことじゃないけど。

高校の裏山の上に、俺たちの弓道場があって、そこから見てた景色が、まぁサクラだったり、ホタルだったりで、その懐かしい景色をチラっと見てから飲みに行こう!って感じになっている。


今日は、ホタルを見る会。

俺らが高校の頃は、すごくホタルが飛んでいたけど、年々減少しているように感じる。

さて、今年はどうだろうか。


 夜の7時に待ちあわせだったけど、俺は6時半に着くようにアパートを出た。

来る人来る人を待ち構えて、とりあえず今回の件を詫びなくてはと思っていた。

6時45分

ひらりんの姿が見えた。

俺は、走り寄って

「平林治さん!!この度は、ご迷惑ご心配をおかけしまして!サーセンしたーーーー!!」

と、大げさにデカい声で言った。

「マジで死んでんかと思って、アパート行くとこだったわ~」

と、ひらりんは笑った。


3分後

湊が来たから同じように、

「サーセンしたーーーー!!」

と言うと、

「うっざ。元気で良かった」

と笑ってくれた。

あとの2人は、大町義徳と真島修司。

真島は東京にいるから、大抵の場合 地元民の俺ら4人が真島の都合に合わせることが多い。


55分

2人の姿が見えた。

「大町義徳さん!!真島修司さん!!

この度は、サーセンしたーーーー!!」

「かんかん、元気だな~!」

と、真島が手を振り

「ラインすげーことになってただろ!あはは!!」

と、義徳が笑って言った。

「じゃ!かんかん!ペナルティーとして階段ダッシュな!!俺らはゆっくり坂道行くからよ~」と、真島が言った。 

「はい!!神田幹太!階段ダッシュ行かせてもらいまーす!!」

「よーい、ドン!」

と、湊が手を叩いた。

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