第14話 エンマ
<テイム>を終えた俺たちは、ミリアルをまじえて今後の作戦会議を開いている。
『そうか、リュウと小娘はこれから魔王が造った魔道具を探すのか』
『小娘じゃないのです!ミリアルなのです!正しく名前で呼ぶのです!』
『100年以上生きているワシから見れば、20やそこらの女なんぞ「小娘」だわ!』
『歳は関係ないのです!仲間なら、しっかり名前を呼び合って、お互いをリスペクトし合うのが正しい姿なのです!』
闇魔法の<テレパス>を使って作戦会議を行っているのだが、ミリアルとエンマはさっきからことあるたびに言い争いをしている。
人間と野獣は本来憎み合う関係だが、こんなやり取りを通して少しでも仲良くなってくれればよいかと思う。
ちなみにブルーエイプは、エンマという名で呼ばれているそうなので、俺たちもそう呼ぶことにした。
このマインシュバルトの森でトップに君臨するのがエンマの親父で、エンマは3人兄弟の末っ子らしい。ほかに姉が2人いるというので、完全な末っ子だ。
テイムすると、従魔のステータスを見ることができるようになる。エンマのステータスは次の通りだ。
【名前】エンマ
【種族】ブルーエイプ
【年齢】106
【ギフト】
闇魔法:ランクA(レベル12/20)
氷魔法:ランクA(レベル16/20)
『それはそうと、さっきから近くに潜んでいる魔獣はエンマの仲間か?』
エンマとの戦闘中にここに向かっていた魔獣がいたが、そいつが少し離れたところに隠れているのが<エネミーサーチ>で見て取れる。
『おお、あいつか!後で引き合わせようと思っておったのだわ』
そいつはエンマの子分のような存在で、闇魔法持ちのエンマが戦闘に加担させるために<テレパス>を使って呼び寄せたということだ。
『こいつがデスニャンの「カガリ」なのだわ』
デスニャンは体長が1.5メートルほどの、赤い毛並みをした猫型の魔獣だ。
ブルーエイプ以上に俊敏に動き、雷魔法や爪を使った切り裂き攻撃を得意とする。
別名「赤い雷」。
人の目ではデスニャンの動きをとらえることは難しく、出会ってしまうと一方的にやられてしまうことがほとんどだ。
カガリは俺に対しては大人しくしているが、ミリアルに対しては「シャー」とうなり声を上げて敵意をむき出しにしている。さすがにエンマがたしなめているが、魔獣の人間に対する憎しみの深さをつくづくと感じる。
『俺とこいつは、それぞれのボスの末っ子なのだわ。この森に棲む高位の魔獣のボスの末っ子は、みんなで「若者同盟」という組織を作っておるんだわ』
魔獣の世界も人の世界と同じで、末っ子は一番遅く生まれたこともあって、力も弱く経験も浅いため一族の中では立場が弱いらしい。そこで、末っ子同士が集まって励まし合っているようだ。
「若者同盟」というネーミングには笑ってしまうが、違う種族同士が仲良くしているというのはなかなか面白い。
『どうか、うちも連れて行ってほしいのにゃ。きっと、リュウさんの役に立ってみせるですにゃ』
カガリは、エンマが俺と旅に出てしまうと寂しくなるので、一緒について来たいと言う。俺は、ミリアルに危害を加えないことを条件に許可を与えた。
また、カガリも俺にテイムされたいらしい。兄貴分のエンマと同じが良いらしい。
パーティの戦力が増強されるのは俺らにとっても良いことなので、言う通りにしてやった。
テイムしたカガリのステータスはこんな感じだ。
【名前】カガリ
【種族】デスニャン
【年齢】58
【ギフト】
雷魔法:ランクA(レベル14/20)
爪撃:ランクB(レベル12/20)
さて、これで一挙に旅の仲間が二人(二頭)増えたことになる。
『魔王が造った魔道具とは、いかにも面白そうだわい。これからが楽しみだわい』
エンマは魔王の魔道具と聞いて、がぜんやる気が出てきたようだ。
『それで、その魔道具はどの辺にありそうなのだ?』
『それはまだわからない。俺の力で物探しをするためには、ヒントになるようなものを手にする必要があるんだ。そこで、まずは勇者のところに行って、見つかった魔道具を見せてもらおうと思っているんだ』
『それでは、最初の目的地は勇者がいる街ということになるのです。――確か、勇者パーティはサンタルナという街を拠点にしているはずなのです』
『サンタルナか…。西部のでかい街だったと記憶しているが…』
『その通りなのです。ここから徒歩で西に20日ほどのところにある街で、ボドルガの5倍ほどの大きな街なのです。私も何度か訪れたことがあるのです』
サンタルナは西部の中心となっている街で、ボドルガからは400キロメートルほど離れている。そして、サンタルナからさらに西の方角に100キロメートルほど行くと魔族の支配する領域が始まるとされている。
ボドルガからサンタルナまで行くには、徒歩もしくはラグホースという家畜に牽かせた馬車を使うのが普通だそうだ。
馬車だと2週間くらいで行けるそうだが、エンマたちが一緒だとラグホースがおびえて使い物にならないと思われるので、とりあえず徒歩で向かうことにした。
相談の結果、明日は旅の準備を行い、明後日の朝再びこの場所で魔獣たちと落ち合ってから旅に出発することにしたのである。
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