12

家に帰って来た。玄関のドアを開けようとすると、後ろから聞き覚えのある声がする。


「残念だったわね、おばあさん」


振り返ると、小さな白いキノコが佇んでいた。


「あなた……」


「そう、純潔の天使。“元”だけど。今はただの毒キノコ」


美少女の姿は見えない。でも、なぜかあの子だと分かる。


「でも、あなたはもうカケラも残っていないはずだ。なのにどうして…」


「あなた、私を食べて、ここで野糞したでしょ?」


「なっ!し、失礼な!そこは一応、トイレの一種で!ばあちゃんが、うんこは土に還るからって、それで…」


「そんなのどうでもいいわ。とにかく、その中の胞子がこの土に生かされて、私がまた生まれたの」


「そう…なんだ」


「ところで、おばあさんが亡くなって、あなたはこれからどうするの?」


その質問に、ヨスガは熟考してから答えた。


「……旅に出る。母親を探しに」


「は!?そんなの、俺、聞いてねーぞ!」


「ああ。今初めて言った。ベビルも一緒に来てくれるだろ?」


「…ヨスガぁ!おう!俺たちはずっと一緒だ!」


ベビルが踊り出しそうな勢いでヨスガの足に体を擦り付けるのを尻目に、元純潔の天使は口を開いた。


「ねぇ、私も連れてってよ」


「いいけど…どうやって?」


「普通に、鞄の中にでも入れてよ。別に、負傷してなければ土から抜いたって私は死なないわ。たまに土に根を埋めてくれるとありがたいけど」




こうして、ヨスガとイノシシと毒キノコの奇妙な旅が始まる。

…かもしれない。

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総てのヨスガと殺しの天使 せかしお @25air-7

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