11
ヨスガは、しばらく涙も出さずにただ放心状態で地べたに座り込んでいたが、やがて徐に起き上がった。
そのまま玄関を出ると、ベビルが後を付いて行く。
「乗れよ。村へ行くんだろ?」
ベビルの背に乗り駆けて行くと、あっという間に村に到着した。
村長に純潔の天使を手渡すと、文献通りだと驚いた。
そして、急いで病人にキノコの欠片を飲ませ、全ての村人が助かった。
それを見届けて、ヨスガとベビルは森へと歩き出した。
すると、遠くからヨスガの名前を呼ぶ声が聞こえる。
振り返ると、そこにはダンがいた。
「ヨスガ!すごいな!あの伝説のキノコを見つけて来るなんて!おかげでみんな助かった」
ヨスガは力なく微笑んだ。そう言ってもらえるなら、少なくとも頑張った甲斐はある。でも、でも…。
「ミリばあちゃんはどうしてる?さすがにまだ療養中か?」
「…ばあちゃんは…ばあちゃんは…死ん…だ」
そう、言葉に出すと、それが事実なのだと全身が理解してしまう。
今までずっと堪えて来た涙が滝のように溢れ出す。
「うわあああーーーん!ばあ…ちゃ…死んじゃった。もう、もう、戻ってこない」
こんな、よく知らない大人の前で泣きじゃくるなんて恥ずかしいこと、ヨスガは本当はしたくなかった。でも、涙がどうしても止められない。きっと、ダンおじさんだって困るに違いない。早く泣き止まなきゃ。もう大丈夫だって、笑って言わないと。
しかし、ダンは、ヨスガをそっと抱きしめた。
「よく、一人で頑張ったな。俺も悲しいよ。ミリばあちゃんには、子供の頃、よく面倒みてもらったんだ。優しくて、温かい人だったな。君はよく似てる」
ダンの言葉で、ヨスガは長い間泣き叫んだ。
でも、誰もそれを咎めたりしなかった。
その後、村人がミリの葬儀を開いてくれた。
泣き腫らした目で隅の方で呆然と佇むヨスガの隣に、徐にダンが腰掛ける。
「もしヨスガさえ良ければなんだが、うちで一緒に暮らさないか?あの森で君一人では大変だろう?うちには君と同い年のチビもいる。遊び相手には困らんぞ」
ダンはそう言って、親指で後方を差した。
その先には、ダンの奥さんと思われる女性と男の子がいた。困惑の目をヨスガに向けている。
それを見て、ヨスガは首を振った。
私の居場所はここではない。そう感じた。
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